石川拓治『国会議員村長』

 中越大地震で壊滅的な被害を被った山古志村で、避難と復興の陣頭指揮に当たった当時の村長(現在自民党衆議院議員)だった長島忠美氏の主として震災当時を取材したルポ。

 代議士としてどのような仕事をしているかは、まったく承知していないが、壊滅状態にあった山古志村の村長としての氏の働きには、ブレがなく、その決断や指示の一つ一つが的確だった。

 氏のバックボーンは、山古志村民の暮らしが永遠に続くようにするには何を決断すべきか、何をするべきかという点にあるようだ。

 ダムや原発を誘致しようとする首長が、あちこちに存在する。
 彼らの多くは、村の振興のためといい、村に雇用を作り出すためという。しかしそれが村の永続につながるという論理的脈絡は、まったく存在しない(実際のところダムや原発は巨大な利権しか生まないのだが)。

 長島氏の凄いところは、「生まれた時からいつも見ている景色を美しいと感じたり、親の代から続いてきたかわりばえのしない村の暮らしに価値を見出す」などという言葉が、さらりと出てくる点である。

 山古志をも選挙区にしていた田中角栄は、村の都会化を前提としていた。
 しかしそれは、結局のところ、村が都市に拝跪することなのだ。

 長島氏にとって、自民党に居場所を求めることで、バックボーンの実現につながるのだろうか。
 二世・三世による特権集団と化している現在の自民党より、かつての日本列島の姿を守ることを目的とするグループがあればきっと、そちらのほうが氏の理念の実現に近づくのではないかと思う。

(ISBN978-4-09-387749-7 C0095 \1400E 2007,11 小学館 2012,5,18 読了)