須田治『地性の人々』

 農業や山仕事に、主として信州で携わっている人々を取材したルポ。

 とりあげられている方々は、地元に根ざして暮らしておられる方も、脱サラとか新規就農された方も含まれる。

 本書が刊行された90年代と現在を比べると、グローバル化が一段と進行し、人・モノ・情報の一極集中も深刻化した。

 周囲の状況を見るかぎり、山村の荒廃も、急展開しつつある。

 一方で、グローバル化に対するラディカルな疑問を持つ人々も、多くなっているような気がする。
 スローであることをよしとすることは、「変わり者の価値観」ではなくなってきている。

 本書のサブタイトルに、「森に訊き、土に学ぶ」とあるが、それはこの列島において、ごく普通の生活者が、日々なしてきたことにほかならない。
 それをしない暮らしがあっていけないわけではないが、それはやはり例外的なあり方というのが自然である。

 特別な能力や努力が必要なわけではない。
 身体を少々動かさねばならないだけの話である。

(ISBN4-906529-10-0 C0095 \1524E 1997,6 川辺書林 2012,1,31 読了)