金哲彦『からだが変わる体幹ウォーキング』

 正しい歩き方の指南書。
 歩き方といっても、山歩きの歩き方ではなく、平地での歩き方について解説している。

 平地での歩き方は、歩きや走りの基本である。
 歩く行為は、人間が生きる基本的行為だから、しっかりした歩き方を修得することは、人生の基本を学ぶことでもある。

 著者のいう体幹ウォーキングとは、要するに身体全体をバランスよく使って歩くということのようだ。
 登山などしているとよくわかるのだが、身体の一部に負荷がかかると、疲労が激しく、怪我につながりやすい。

 本書には、歩く際の着地衝撃は、体重+α程度であるが、走る際のそれはその3〜4倍になると書いてある。
 重荷を背負って斜面を下る際の着地衝撃も、おそらくはその程度だろうと考えられる。

 着地衝撃は、腰・膝の関節や足の筋肉などによって吸収されることで、人間の身体は壊れずにすんでいる。
 厳密に言えば、関節をとりまく各種の筋肉が、着地衝撃から関節を守る役割を果たしている。

 足や腰の筋肉が弱いまま走ったり、斜面を下ったりするのは、サスペンションのない自動車を走らせているようなもので、部品の取り付け部分である関節が、すぐに壊れてしまうだろう。

 歩行・走行する上で必要な筋肉全体に負荷を分散することによって、より安全かつ疲れを少なくすることができるというのは、理にかなっていると思う。

 バランスのよい歩き方の基本、すなわち体幹を使った歩きとは、「丹田をプレさせない」「肩甲骨をうまく使う」「骨盤の自然な回旋」ということのようだ。(著者の表現は少し違っている)

 お説のとおりに身体を動かすことはなかなか難しいのだが、日常生活の歩きとトレーニングの走りに、体幹を意識してみようと思った。

(ISBN978-4-582-85466-4 C0275 P720E 2009,6 平凡社新書 2009,7,29 読了)