高橋彦芳『田舎村長人生記』

 『山村で楽しく生きる』を読んだのは11年前らしい。
 苗場山鳥甲山に登ったことはあっても、栄村をほとんど見ていなかった。


 2008年8月に、栄村を訪れる機会を得た。
 天気がよくなく、時間も限られていたので、あまりじっくり観光することもできなかったが、宿泊施設「のよさの里」でのんびりしてきた。

 国の政治がお粗末なのは、地方政治がテキトウなことの延長なのだろう。
 身近な地方政治を見ていると、当然のように、政治を金もうけないし縄張り争いの一種と考えている人々がたいへん多い。
 少なくない有権者がそういう候補者に投票する理由はわからないが、おこぼれ目当てか、群れへの帰属意識を高めるためかもしれない。

 その名に値する地方自治が行える環境は不十分だが、首長のやる気というか、資質によって村はずいぶん活気づくし、住みやすくなる。
 もっとも必要なのは、何のための自治なのかを首長がきちんと理解していることだ。

 日本の村には、村の位置する環境に最も適合した暮らし方がある。
 それは、先人たちが試行錯誤を繰り返す中でつかみ取ってきたものである。

 時代が変われば社会的環境も変わるが、自然環境は変わらない。
 ベースとなる暮らし方を基本に据えて、住民が暮らしやすい環境を整えるのが自治だろう。
 高橋村長のように、そこにブレのない首長も少なくない。

 地方の未来や日本の未来は、このような為政者を生み出すことによってしか、救われない。

(ISBN4-88023-801-5 C0095 \1500E 2003,6 本の泉社 2008,8,23 読了)