藤原彰編著『沖縄戦−国土が戦場になったとき』

 必要あって再読。
 ことによると積ん読書だったかも。

 手元にあるのが1987年沖縄国体開催時の一刷で、この年に沖縄戦についてきちんと学ばなければならない気になったのは確かだ。

 この前後は、戦後史の重要な転換点となった時期だった。
 沖縄は戦前・戦中・戦後の100年にわたって、日本によって蹂躙せられてきた。

 戦前期には、琉球処分により一方的に日本の版図に組み込まれ、内国植民地として一方的な収奪を受けた。
 大東亜戦争期には、日本の不沈空母として戦略的に位置づけられ、沖縄戦は、本土決戦のための捨て石作戦だった。
 戦闘に巻き込まれたり、集団自決を強要されたり、日本兵による虐殺によって、10万人近くが犠牲となったこの戦いの最高指揮官は、昭和天皇裕仁だった。
 戦後、自分の保身と引き替えに沖縄をアメリカ売り渡したのも、裕仁だった。

 沖縄にとって、裕仁天皇は戦犯中筆頭にあげられるべき人物にほかならない。
 国体の開催には、天皇訪沖によって裕仁自身の犯罪のミソギとするとともに、「日の丸」「君が代」に象徴される戦争犯罪・大東亜戦争への憎しみと反戦意識を払拭しようとする意図がうかがえた。

 結局裕仁は、病気を得て訪沖することなく死んだ。
 女子高校生による「日の丸」引きずりおろし事件(1986)や国体会場における「日の丸」焼き捨て事件(1987)は、沖縄戦の記憶が風化していないことを国民に想起させたが、日本人はここでも、沖縄を見捨てた。
 それは「日の丸」「君が代」に象徴されるものの息の根を止めなかった報いだ。

 今年も沖縄を語らなければならない。

(ISBN4-250-87033-2 C0021 \1300E 1987,6 青木書店 2007,2,6 読了)