青山宏『ある山村の革命』

 静岡県龍山村(現在浜松市と合併)森林組合が、林業とともに村を立て直していった記録。
 本が書かれたのが1970年代末なのですが、2006年現在も活発な事業展開をしているようです。

 立て直しが始まったのは1961年。
 奥秩父では原生林が伐られまくっていた時期。
 そして秩父の里山では雑木林がスギ・ヒノキ林へと変貌していた最中でした。

 このころの秩父の林業に危機感は存在したのか。
 奥秩父原生林では、将来のことを考えるより、目の前の木を伐り出すことで精一杯だったのではないかと思われます。
 伐ることがとりあえずカネになることであり、伐ることで暮らしを立てる人々がいましたから。

 爆発的な外材の輸入はまだ始まったばかりでしたから、里山では、スギ・ヒノキを植えていれば30〜40年後にはたいした収入が保障されると思われており、将来の破綻を予測できた官僚はいたでしょうが、将来への責任を感じる官僚はいなかったのでしょう。

 「山村に堰堤を」という章があって、砂防堰堤の建設で雇用を作り出しでもしたのかと思いきや、そうではなく、森林組合が主体となって育林を中心とするいくつかの事業を展開し、若者の流出を防ごうとする取り組みでした。

 森林経営を中心とする雇用を作るというのは、絶望的に困難なことです。
 職場環境から待遇・福利厚生関係に至るあらゆる面で、一般の企業に劣らないだけの手当てができなければ、就職者を迎えるのは困難だろうからです。

 ここを乗り切れたのは、トップのやる気と構想力、さらには労働の現場への理解の深さといったものがあったからでしょう。

 政府はさらなるグローバル化を進めつつあります。
 現場は苦しいでしょうが、がんばってほしいものです。

(0061-790255-4024 \900 1979,3 清文社刊 2006,8,18 読了)