栗原彬編『証言 水俣病』

 こういう本を読むと、近代経済社会とはなんだったのかと、考え込んでしまいます。

 より多き富のために、自然を認識し、自然の法則を利用する。
 近代社会の出発点は、そういうところにあったと思います。

 それが、どこからか、ずれてきたのでしょうか。
 それとも、より多き富を望むこと自体が、反人間的だったのでしょうか。

 より多き富のために、自然を改変し、生き物の命を踏みにじり、人間をおとしめる。
 より多くの富を作り出すために、そんなことまでが許されるなら、それは、鬼畜の世だというしかありません。
 そんな世は滅びるでしょうし、滅びてしまわなくてはなりません。

 人間らしく生きられる世の中に戻ることは、まだ、可能でしょうか。
 新聞で、政治家や官僚のみなさんの考えを聞いていると、もう絶対にだめだと思えます。
 マスメディアもずいぶん、無責任なことを書きたてています。

 子どもたちを大切に、しっかり育てていくこと、まちがいなくだいじなことだと思います。
 彼らには、21世紀をグローバルに構想しつつ、足もとの大地に、しっかり根を張って生きていける人になってほしいと思います。

 そしてわたしは、どうするか。
 一教師として、人間の尊さや自然の恵みのありがたさを教えるのは、当然のこと。
 それに加えて、21世紀の日本人にふさわしい暮らしや生き方を、模索していきたいと思います。

(ISBN4-00-430658-2 C0236 \660E 2000,2刊 岩波新書 2001,2,7 読了)