藤井豊一『松茸ハント』

 わたしのマツタケ体験は、もう30数年前のことになります。

 当時通っていた京都・東山の学校では、秋にマツタケ狩りの行事がありました。
 子どもたちが山に入って、マツタケを採って来、それをみんなで食べるというものだったと思います。

 おぼろげな記憶ですが、アカマツ混じりの雑木林が多く、伐採あとには、ツツジのような灌木が茂ったところもあったと思います。
 そのような灌木帯では、ご老人がひなたぼっこをしておられ、朗々と、尺八を吹いておられました。
 そばに寄っていくとよく、太閤さんがとてもえらい人だったという話を、してくれました。

 マツタケ狩り行事の日、熱心に探しまわったのですが、マツタケはなかなか、見つかりませんでした。
 見つからないマツタケ狩りでしたが、それはそれで、楽しいものでした。

 半日歩いて、わたしは、20センチくらいに開いたマツタケをひとつ、見つけました。
 学校に帰って、先生に見せたら、「ほんとうは、もう少し小さいのがうまいのだ」と、言われました。
 その日の収穫は、わたしのも入れてたった二つでしたから、わたしは、「そんなこと言ったって、先生はなにもしないくせに・・・」と思いました。

 おとなになり、本格的にきのこ探しを始めてからは、秋に、きれいなアカマツ林を歩く機会が、ほとんどありませんでした。
 ですから、マツタケとも、ずっと無縁のままです。

 この本は、マツタケ採りのベテランが、採取から料理に至るマツタケに関するノウハウを、記したものです。
 著者は、播州にお住まいとのことなので、関東地方とは、かなりちがった樹相の山を歩いておられるようです。
 それにしても、著者の採るマツタケの量の多さには、驚いてしまいます。

 わたしの近所には少ないのですが、これはと思うアカマツ林が、何ヶ所か、あります。
 ひょっとしたら、マツタケが出ているかもしれません。
 出てなくても、落ち葉掃きをしばらく続けたら、出るようになるかもしれません。

 少し、希望がわいてきました。

(ISBN4-8067-2373-8 C0045 \2000E 1998,9 築地書館刊 2000,4,19 読了)