四手井綱英『言い残したい森の話』

 学者の文章はむずかしいに決まっていると思っていましたが、そうではないと確信を持ちました。


 むずかしいのは、論理構成のどこかに無理があるからだと思います。
 ごまかしのない文章は、わかりやすいものですね。
 無理やごまかしのない文章を読むのは、とても快感を伴うものです。

 四手井先生は、日本人の大人に絶望しておられるそうです。
 理由は、無責任で、不誠実だから。
 うぅ。その通りです。

 子どもはどうか。
 四手井さんは、お孫さんを相手に、自然教育をはじめました。
 自然保護教育ではなく、自然教育。
 自然保護という考え方や行動は、自然をよく知る結果生まれるものだから。

 子どもはまっすぐに自然を理解し、合理的に考える力を持つようになるそうです。
 学校が、もっとゆったり、じっくりと自然教育をするようになれば、日本も変わっていくでしょうに。

 当ホームページにおいでのみなさん。
 もしお子さんがおいででしたら、やれるところから「自然教育」をしてあげたらいかがでしょう。

 展望がなく、硬直した林野行政や、それに迎合した農・林学研究者は、きびしく批判されています。
 科学的な裏づけがあることが建前なはずの林野行政や森林学が、権力関係によって動いているのでは、意味をなしません。

 四手井さんがこのように、肝の据わったことが言える背景には、森に関わるあらゆることについての豊富な雑学的知識があると思います。
 いわゆる専門バカでないことは、だいじですね。

 まずは出かけることです。
 そして、よく見て、調べることです。
 そうすれば、知ることができるのだと思います。

(ISBN4-409-24044-7 C0045 \1957E 1996,7 人文書院刊 1997,9,2読了)