松本清『よみがえれ 池塘よ 草原よ』

 この本を読んで、1992年に巻機山に行ったときの記録を読み返してみました。

 なるほど

 七合目を過ぎると泥炭層が流失して荒れた箇所がときどきあらわれてくる。
 泥炭層の下は赤みがかったカコウ岩層のようだった。

 八合目からはそうした荒廃箇所がさらに多くなる。
 泥炭でないところを選んで歩く。


と、書いてあります。

 筆者らによってコモ掛けによる土壌保護が行われていた時期ですが、当時はもちろん何も知らずに歩いていました。
 わたしが登ったときも終日雨でしたので、えぐれた登山道には激しく水が流れており、ほとんど沢登りに等しい状態でした。

 巻機山を含め、2000メートル級の中級山岳で稜線に傾斜草原・湿原を持つ山が、関東以北には少なからず存在します。
 本書には、それが豪雪によって形成された景観的特徴だと書いてあります。

 そのような草原は、東北の夏山のもっとも大きな魅力の一つだと思っています。
 ニッコウキスゲ咲く草原におおわれた頂稜の山腹には多く、峻険な渓が食い込んでいますが、草原も嶮谷も豪雪の作り出した景観なのでした。

 ボランティアによって景観の回復を行う活動が大きな成果をあげているという報告には、勇気づけられます。
 荒川水系・豆焼沢で有志団体・瀬音の森が行った渓畔林再生実験にかかわったことがありますが、一連の作業終了後は、目立った活動ができていないので、実験の結果をまとめるとともに植栽の必要な他の渓でも同様の活動を続けたいという気持ちが出てきました。

 加藤久晴『傷だらけの百名山』(正・続)『新・傷だらけの百名山』のように、無惨な山を嘆き破壊者を糾弾するだけでは山は元に戻りません。

 自分が奥秩父でやるべきことがまだまだ残っているという思いにさせられました。

(ISBN4-6535-17151-5 C0095 \1440E 2000,3 山と渓谷社刊 2006,4,7 読了)