滋賀の食事文化研究会編『ふなずしの謎』

 先日、滋賀県内をドライブしていたら、地名がずいぶんおかしいので、道に迷ったかと思いました。

 信楽を走っているはずなのに、「甲賀市」、その先は「東近江市」。「湖南市」というところもありました。
 しょっちゅう来るところではないので、これでは現在地がわかりません。
 最近(2005年)よく出かける山梨県でも、「北杜市」、「甲州市」、「笛吹市」など、顔の見えない地名が多い。

 市町村合併の背景はいろいろあるのでしょうが、「地方の時代」などということばがしばしば政治家の口から聞かれたのはつい最近だったのに、地名というローカリティの最たるものがかんたんに捨てられてしまう現状には、あきれてしまいます。

 秩父市では昨年、巨大スーパーが新規に2店舗開業し、在来の商店はもちろん、地元資本の中小スーパーは店を閉じ始めています。
 明らかに飽和状態に達したコンビニも、駐車場拡大などの競争が続いています。

 巨大スーパーの営業努力が並大抵のことでないのは想像できます。
 しかしコストダウン=効率を追求することと、食のローカリティを追求することが両立するとは思えません。

 そもそも食のローカリティなどなんで必要なのかといわれるかもしれませんが、食べることがすなわち腹をクチクすることではないと考えています。

 たとえば、この本などを読んでみると、鮒ずしを食することによって湖国の暮らしや文化、ひいては人間にふれることができるという気がしてきます。

 湖国は、古代より錚々たる支配者を輩出してきた国です。
 支配力の背景には強大な生産力がなければならないのですから、湖国は日本有数の豊かな穀倉地帯でもありました。
 その中心をなす琵琶湖は、複雑な生態系を持ち、多くの固有種が生息する世界でも有数の古い湖です。

 鮒ずしは、この地の自然や歴史・人間を語ってあまりある食べものだと思いました。

(ISBN4-88325-107-1 C0062 \971E 1995,9 刊 サンライズ出版 2006,1,4 読了)