吉岡昭彦『インドとイギリス』

 近代初めに、アジアとヨーロッパがどのような関係だったのかが、わかりやすく書かれています。
 イギリスによるインド搾取の経済構造がいかなるものだったのかが、史実に即して書かれています。


 イギリス−インド貿易が開始されたのは産業革命開始前だったため、当初はインド産キャラコ・モスリンの流入阻止のためにイギリスが保護関税を設定していた事実。

 その後、自由貿易主義に転じたイギリスが、保護政策を不健全なものと主張して、インド綿産業を壊滅に追いやった事実。

 そのあたりは、わたしが思っていたとおりでした。

 現在、中東で起きている一連の動きに関連して、感じたこと。

 イギリスでは、歴代政治家から一般庶民までが、賢明な民主国家イギリスが愚鈍なインドを統治(その実態は徹底的な国家的搾取であった)することはインドにとって幸福なのだと信じているらしい。

 その背景には、イギリス(白人)優越主義・キリスト教優越主義とご都合主義がありそうです。
 イラクを手始めに西アジアを「民主化」しようとしているアメリカの、基本的な発想も同じでしょう。

 福沢の『脱亜論』に示された、日本の朝鮮・中国支配の論理も、小イギリスそのものだったのでした。

(ISBN:4004130360 \280 1975,7 岩波新書 2004,8,17読了)