スコット=リッター他『イラク戦争−ブッシュ政権が隠したい事実』

 2002年末以降、世界を軍事的緊張に落としいれているブッシュのイラク戦争の正当性に、根本から疑問を突きつけているインタビュー。


 話者リッター氏は、イラクで大量破壊兵器の査察を指揮した幹部査察官です。

 ここで、自らが担当したイラクにおける核兵器、生物・化学兵器査察の状況が詳細に記されています。
 これを読むと、サダム=フセイン政権が、かつて非人道的な大量破壊兵器の開発をおこなってきたこと、そして湾岸戦争以後の国連査察の中で、その事実と兵器や関連施設を隠蔽しようとしてきたのは確かだと思われます。

 問題はその先です。
 これら国連スタッフの手によって、イラクの嘘が暴かれ、これらの兵器と関連施設がほぼ破壊され、継続的な監視によって、それらの再建が全く不可能であるにもかかわらず、また、多くの国が武力行使に反対しており、国連もしかりであるなかで、ブッシュがイラクに侵攻しようとしているのが、今の現状だといえるでしょう。

 ブッシュが何故、戦争にこだわっているのかについては、あまり明快ではありません。
 ニュース等では、オイル・コネクションの問題などが指摘されていますが、わたしには、それに関する、十分な判断材料がありません。

 いずれにしても、話者は、現時点におけるイラク侵攻に大義がないこととともに、それ(イラク戦争)が、中東地域のさらなる混迷を作り出す原因になるであろうことを指摘しています。
 今後、アメリカ・イギリスが提案した新たな国連決議なるものが採択されるか否かは、全く不透明ですが、両国は、その結果に束縛されないと公言しているわけですから、この戦争が始まれば、国際連合の役割の終焉を示すものともなるわけです。

 膨大な血の代償を伴いつつ築き上げられてきた、平和への努力の結晶を投げ捨てることは、許されません。

 わが日本政府は、アメリカの武力行使容認のための新国連決議の採択に向けて多数派工作を展開中。
 開戦となれば、直ちにアメリカを支持し、戦争への直接的な支援を行って、平和のための努力を踏みにじろうという構え。
 正義と秩序を基調とする国際秩序の破壊に荷担するのは、憲法違反です。

 これ以上、無意味な血を流させてはいけません。(アメリカによる戦争犯罪の実態についてはこちらのリンクなど参照のこと)
 また、日本が戦争加担者になるのを、容認するわけにもいきません。

(ISBN4-7726-0308-5 C0031 \1200E 2003,1 合同出版刊 2003,2,27 読了)