晩夏から初秋の針葉樹林を歩けば普通に見られるきのこだが、この日は幼菌が多かったこともあり、形状の可愛らしさに目を奪われた。
いつか、見たままを撮影してみたいと思いながら、ろくな写真が撮れずにいるきのこが3種類ある。
ヒメベニテングタケ、アカチシオタケ、それからハナガサタケの幼菌である。
この中ではハナガサタケがもっとも易しそうな気がするが、どんなものだろうか。
ところで、ハナガサタケは毒きのこなのか、それとも食べられるきのこなのか。
わたしの持っている図鑑類でハナガサタケを有毒としているのは、『新版北海道きのこ図鑑』(亜璃西社))である。
食菌としているのは『きのこ図鑑』(保育社)、『九州で見られるきのこ なば』(環境調査研究所)、『雪国のきのこ』(熊谷印刷)、『宮城県のきのこ』(宝文堂)、『北海道のキノコ』(北海道新聞社)、『秋田きのこ図鑑』(無明舎出版)である。
このうち、『雪国のきのこ』は、明らかに全く別のきのこをハナガサタケと同定している。
このサイトでは、従来からハナガサタケを食菌扱いしてきた。
それは、『新版北海道きのこ図鑑』の記述を見落としていたせいで、わたしはハナガサタケは食菌だと思いこんでいた。
昨日は、富士山にたくさん出ていたハナガサタケの一部を持ち帰り、味見をしてみた。
料理はこちら。
ちっとも自慢ではないが、わたしは、食菌だとされているヌメリイグチ、チチアワタケ、ウスムラサキホウキタケなどを食べるとたいてい中毒してしまう(ひどい下痢になる)ほど、きのこに弱い胃腸の持ち主である。
あくまでも結果論に過ぎないが、ハナガサタケを食べても、何の異常も起きなかった。
ことによると近縁種に毒きのこがあるのかもしれないが、針葉樹の倒木に発生する一般的なハナガサタケであれば、食しても問題ないようである。
特に美味というわけでもないので、本サイト読者に、あえて試食を勧めるつもりなどさらさらない。
まして、倒木を覆う苔の中から出たハナガサタケにとって、人間に自分が有毒かどうかなど、どうでもいいことだ。