大鳥池から朝日連峰主脈縦走

【年月日】

1998年7月26〜28日
【同行者】 2人
【タイム】

7/26 泡滝(2:30)−大鳥池(5:30)
7/27 大鳥池(4:30)−以東岳(7:13)−狐穴小屋(9:25)
   竜門小屋(12:10)−西朝日岳(1:40)−大朝日小屋(3:30)
7/28 大朝日小屋(4:50)−平岩山(6:15)−御影森山(7:55)
   上倉山(9:45)−朝日川(11:30)−朝日鉱泉(12:15)

【地形図】 大鳥池、相模山、羽前葉山、朝日岳

以東岳から望む大朝日岳
大朝日岳が近づいてきた

 関東ではまだ梅雨も明けていないというのに、庄内地方は、フェーン現象のせいか、猛烈な暑さだった。

 泡滝ダムでバスを降りれば、渓流沿いの快適な登山道が待っているはずだったが、美しい東大鳥川の岸辺にも、熱風が蔓延していた。

 日曜日とあって、日帰りハイカーが続々と戻ってくる。
 冷水沢の吊り橋を渡り、トチの大木を見るあたりから、ようやく日射しから逃れることができた。
 寡雪のためか、去年にくらべて、水量がずいぶん少ない。

 七滝沢を渡り、急登にかかるところの水場は、冷たくて、手が切れるようだ。
 このあたりでは花は少ないが、イワギボウシ、オタカラコウ、ジャコウソウ、キバナアキギリ、トリアシショウマ、タマガワホトトギスなどが咲いていた。
 きのこは端境期のようで、赤いカワリハツが2つ、とれただけだった。

 一年ぶりの大鳥池は、相変わらず、以東岳の映る青い水を湛えていた。
 お盆のころとちがって、宿泊客のほとんどは登山者なので、ちょいと毛針でも振ってきたい気にさせられるが、時間的には忙しすぎた。

 翌日は、長丁場なので、早立ち。

 お花畑は以東岳以遠にたっぷりあるので、登りは直登コース。
 ウグイス、メボソムシクイ、クロジ、ルリビタキ、コマドリなどを聞きながら、がまんの登りだ。
 ここで、オニノヤガラの花を見た。これは初めて。

 ブヨの多い時期にあたったらしく、顔のまわりでブンブン飛ぶので、とてもうるさい。
 歩いていくと、地面に止まっていたブヨが、「やっ。これはこれは!」という感じで腰を上げ、顔のまわりに集まってくる。

「やっ。これはこれは。ブンブン」
「やっ。これはこれは。ブンブン」
「ちょっと失礼!」と言いながら、耳の中にもぐり込んでくるのもいるので、かなわない。

 ティッシュを丸めて、耳栓をし、さらに登ると、森林限界を超えて、美しい傾斜湿原。
 エゾリンドウ、イワイチョウ、チングルマ、キンコウカ、ヨツバシオガマ、ウラジロヨウラク、ニッコウキスゲなどが咲き乱れていた。

 頂上もまずまずよく晴れており、鳥海山、月山、摩耶連峰、飯豊、蔵王などが望まれた。
 これから向かう大朝日岳は、気が遠くなるほど遠い。

 以東岳から先は、盛夏の花のオンパレード。

ハクサンイチゲ
ハクサンイチゲの群落

 ハクサンイチゲ、マツムシソウ、トウゲブキ、ハクサンフウロ、ハクサンシャジン、コバギボウシ、クルマユリ、ニッコウキスゲ、ミヤマコウゾリナ、イワオトギリ、タカネアオヤギソウなど。
 この時期にウメバチソウとは、ずいぶん早い。

 とても気に入ったのは、ミヤマリンドウ。
 草原の縁やガンコウランのしとねのなかで、透き通ったサファイアのような花が、惜しげもなく咲いていた。

 狐穴小屋から竜門小屋にかけては、猫の額ほどの残雪もちらほら。
 ムカゴトラノオやミヤマダイモンジソウ、ミヤマクルマバナ、タカネナデシコ、イブキジャコウソウなどは、ここまでの尾根では気がつかなかった。
 楽しみにしていたヒナウスユキソウは、名残の花と化していた。

 おりしも、東側からガスが上がって来、一時、展望がなくなったが、ガスの中に浮かぶイブキトラノオの大群落は、まるで夢のようだった。

 赤トンボの乱舞する西朝日岳への長い登りは、かなりこたえたが、大朝日小屋がずいぶん近くなったので、ほっとする。

 金玉水に着いたのは、3時過ぎ。
 まだ陽が高かったので、大朝日の小屋ではのんびりできたが、ガスが流れていたこともあって、頂上に登ってくる元気は残っていなかった。

 三日目の朝も晴れ。
 ご来光をおかずにご飯を食べ、早々に出発。

 ヤマトリカブト咲く大朝日岳の展望は絶品だったが、同宿者の皆さんがごった返していたので、長居はせずに平岩山へ向かった。

 このルートにも花殻と化したヒナウスユキソウが多い。
 そよ風に揺れるヒメシャジンを見ると、夏の終わりを感じてしまう。

 とても魅力的な祝瓶山を見ながら、花の尾根を平岩山に着くと、大朝日の山容がすばらしい。

 右の野川も左の朝日俣沢も、尾根筋はブナの原生林。
 見下ろしているだけで、うれしくなってくる。

 灌木がちの道を登降していくと、御影森山。
 急傾斜の中ツル尾根を隔てて、小朝日が高い。

 お花畑とはお別れだが、ここからは別のお楽しみがある。
 灌木帯のクロマメノキは、季節がおかしいせいで、ちょうど食べ頃。
 これを摘んでは口に入れながら行くと、ブナ原生林。

 ドクベニタケ、ツエタケ、ヒメベニテングタケ、カバイロツルタケ、カワリハツ、ヒラタケ、チチタケなどが出ていたので、きのこ狩りをしながら急降下。

 朝日川に降りて、星白アブを追っ払いながら、河原できのこだし入りソウメンをたらふく食べ、自動車をデポしておいた朝日鉱泉近くに戻った。

[資料] 朝日鉱泉から泡滝ダムへの公共交通

朝日鉱泉(8:35)〜左沢(9:55)
 朝日町観光協会の会員バス(1700円 0237-67-2111 役場)

左沢(10:03)〜羽前高松(10:09)
 旧国鉄左沢線(160円)

羽前高松・ウエルマート前(10:40)〜新落合(11:47)
 山形交通バス(1700円 023-632-7272)

新落合(13:11)〜大鳥(13:55)
 庄内交通(1160円 0235-22-2600

大鳥(14:00)〜泡滝(14:35)
 あさひ交通(1200円 0235-53-2012)