丹沢湖は遠いと思っていたが、それほどでもなかった。
駐車スペースには、大砲のようなカメラを三脚にのせて、山肌の梢を見上げる一群の人々が、くつろいでいた。
丹沢湖畔のヤマザクラは、ちょうど見ごろだった。
いくらか西へ歩けば、滝壺橋の登山口で、こちらのほうが広い駐車スペースがあった。
雑木林と植林の小尾根なのだが、下草が少なく、山が痩せた感じがする。
フデリンドウが、小さな花を点々と咲かせていた。
植林地を登っていくと、ミツマタが点々と咲いていた。
下部のミツマタは、いささか白く色あせていたが、上部ではどうなっているか、楽しみだった。
どちらかと言えば、若木が多かったので、最近になって植栽されたのかとも思われた。
けっこうな急登だが、ジグザクに登っていくので、さほど苦しくはない。
かなり上部まで行くと、ケヤキの大木が何本か、目を引いた。
ミツバ岳の肩あたりから、ミツマタ純林と言っていいほどの群落となる。
盛りをやや過ぎた感じではあったが、まずまず満開の、すばらしい開花具合だった。
ミツバ岳に展望はないが、ここで大休止。
ハイカーがちらほらいて、ミツマタを鑑賞していた。
どういうわけか、ここはヤマガラが多く、何羽ものヤマガラがさえずりを競っていた。
権現山へは、緩やかな尾根を行く。
ブナやカエデ類の雑木林だが、芽吹きは始まったばかりだ。
権現山からは、南東尾根へ。
道不詳との看板もあるが、道標完備の立派な道が下っている。
ミツバ岳ほどではないが、ミツマタの群落がちらほら出てきて、まだ楽しめた。
こちらではヤブツバキが盛りで、落花が登山道を彩っていた。
急降下とスローな下りを繰り返しながら高度を下げ、植林地が多くなる。
もう十分収穫できる太さになった杉が間伐されて、切りそろえて、残った木の足元に積んである。
これがこのまま朽ちてしまうのでは、あまりにもったいないではないか。
この下りで、杉の奇木を見た。
一本は、いったん下に垂れ下がった枝が、再び上を向いて伸びていた。
もう一本は、伸びた幹が弧状になって着地し、そこで再び根を出して、幹を伸ばしており、取り木しようとしたあと、切り離すのを忘れたような姿だった。
湖畔道路に降り立って、駐車スペースまで、すぐだった。
自動車の横で身仕舞いしていたら、朝と全く同じ姿で、大砲のまわりにいた中の一人が、「飛んだ!!」と叫んだ瞬間、全員が素早く大砲にとりついた。
山肌を見上げたが、なにが飛んだのか、わからなかった。
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