土合駅あたりは霧雨もようで少々寒いが、雨具が必要なほどではなかった。
このあたりには林道キャンパーがそこここにいて、ゴミの山があちこちにできている。
マチガ沢を渡る手前で林道が終わり、山道。
樹間から見える湯檜曽川は、広河原の中の浅く貧相な流れだ。
一ノ倉沢をあやしい丸太橋で渡ったところで小休止。
ここから幽ノ沢にかけてはミズナラやブナの原生林。
道ばたに根回り数メートルはあろうかと思われるミズナラの巨木。
この先、ブナの倒木が多い。
幽ノ沢の先で炭焼き窯のあとを見る。
芝倉沢の手前で国鉄の給電所を見た先も、ずっと平坦な道。
土合駅の様子からすると、今日も谷川岳は大混雑と察せられたが、蓬越えの道はとても静かだ。
武能沢出合で二度目の小休止。
ここからは沢を離れ、ブナの壮年林の中の登りとなる。
かなり傾斜はあるのだが、ジグザグ道なので、楽ちんだ。
しだいに雨が激しくなってきたので、雨具を羽織る。
土合への旧国道を分け、送電鉄塔を二本見て過ぎると、尾根上の道となり、白樺避難小屋。
群馬県側は明るいのだが、あたりは小雨。
ここでひと息入れていると、MTBの青年がだまって入ってきた。
避難小屋の前には武能沢の源流が十メートルほどの滝を数段にわたって懸けている。
道はふたたび山腹をからみ、四本の小沢を渡る。
ここに咲いていたのは、ミヤマキンポウゲ、クロバナヒキオコシ、オニシモツケ、モミジカラマツ、コゴメグサ、トリアシショウマ、ヤマブキショウマ、ヨツバヒヨドリ、オオバギボウシ、イワショウブ、タテヤマウツボグサ、オニシオガマ、エゾシオガマ、オオバミゾホオズキ、クガイソウ、ヤマトリカブト、キンコウカ、ニッコウキスゲ、シラネニンジン、ミヤマクルマバナ、オタカラコウなどだった。
このうち、クロバナヒキオコシ、オタカラコウ、オニシオガマあたりはようやく咲き始めたばかりのようだったので、これからでも楽しめるだろう。
「最後の水場」という看板のある四本目の小沢を過ぎると、ササ原の尾根はすぐで、オヤマリンドウやハクサンフウロが足元にちらほら見え出すと、壁と屋根のない蓬峠避難小屋。そのすぐ先が蓬ヒュッテだった。
ここで十時過ぎ。
そんな話をして、ここは下山にかかる。
残雪の残りぐあいがちがうせいか、新潟側は群馬側にくらべて花の数も種類も少ない。
最初の水場を過ぎると早くも樹林帯。
ブナの壮年林で風情は悪くないが、群馬側ほど立ち枯れや倒木がなく、すっきりしすぎる森だ。
新潟側は寒冷前線の背後にはいるので天気はよいと思いきや、予報に反して雨足がずいぶん激しい。
ここからは蓬沢の右岸沿いの道になるのだが、クサコアカソやミヤマイラクサの草ヤブがおおっていて歩きにくい。
ヤブ道をしばしで林道の終点。
「国境の長い尾根を下りてくるとそこは土建屋天国だった」というパロディが頭に浮かんだ。
ほどなく関越トンネルの出口が見えてくる。
ここで十二時過ぎ。
土合に戻ってみると、青空少しがのぞいており、さわやかな秋の風が吹いていた。
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