続・修験の道
- 弥山・釈迦ヶ岳 -

【年月日】

2010年8月6〜8日
【同行者】 単独
【タイム】

8/6 トンネル西口 (6:31)−奥駈出合 (7:30)−聖宝宿跡 (8:22)
   −弥山 (9:17-9:32)−八経ヶ岳 (9:59)−舟ノ峠 (11:47)
   −楊子ヶ宿 (12:21)
8/7 楊子ヶ宿 (6:30)−鳥の水 (7:45)−孔雀ノ覗 (8:00-8:05)
   −蔵王権現銅像 (8:30)−釈迦ヶ岳 (9:13-9:30)−深仙宿 (10:04-10:18)
   −太古ノ辻 (11:02)−二つ岩 (11:34)−巨木帯 (12:15)−小仲坊 (13:23)
8/8 小仲坊 (6:00)−林道ゲート (6:30)

【地形図】 弥山、釈迦ヶ岳 ルート地図

1日目

枯れ木帯の弥山から八経ヶ岳
カエデの道

 早起きをして、脇目もふらずに走ってきたおかげで、6時半には、行者還トンネルから登りだすことができた。
 ブナとヒメシャラの森だ。
 高度を上げていくと、ツガが交じるようになり、約1時間で奥駈出合へ登りつく。
 ここは1年ぶりだが、いかにも大峰らしい雰囲気だ。

 しばらく歩いて、石休の宿跡という小ピーク。
 背後の大普賢岳の頂稜は、この日もガスっていたが、稲村ヶ岳はよく見えていた。
 このあたりから弥山が望まれるが、たいへん高い。
 さらに平坦なところをだらだら歩くと、道わきに錫杖のようなものが刺してあり、理源大師の行者の銅像のある聖宝ノ宿跡。

 弥山への登りはまずまずきつく、約1時間かかってようやく、弥山小屋の前に出る。
 周囲に人影はなく、小屋もひっそりとしていた。

 弥山の山頂部は、シラビソの枯れ木帯になっており、八経ヶ岳が見えるのだが、ガスが押し寄せてきているようだった。
 神社にお参りして、少し休んで、八経ヶ岳へ下る。

 このあたりがオオヤマレンゲ群生地とあるのだが、鹿の食害防止のため、一帯はすべて網で覆われており、登山道へも網の戸を開けて入るようになっていた。
 網の効果はたいしたもので、網の中はさまざまな草木が繁茂しているのに対し、網の外にはカエデ類とイネ科の草本しか生えていないのだった。

 網から出ると八経ヶ岳のピーク。
 残念ながらガスのため、展望は得られなかった。

苔むす森(大きな写真)
苔むすトウヒの森

 明星ヶ岳のピークは巻いて過ぎ、苔むした樹林帯を長く下る。
 このあたりは、シラビソでなく、トウヒの森だ。

 小ピークのほとんどは、西側を巻いていくので、歩程がはかどり、二重山稜のようになったところが舟ノ峠。
 ここは単なる鞍部で、里へ降りる道はない。

 右前方に、猫の頭のような形をした七面山が近づいてくる。
 ジャンクションピークにあたる1693メートル峰手前に、七面山と彫られた石柱を見ると、ピークには登らずに東側を巻く。
 再び尾根に出るともう、楊子ヶ宿の手前で、七面山南面の岩壁がすごい。

 避難小屋には早く着いたので、頑張る気になれば次の小屋まで行けそうだったが、翌日たっぷり時間があることでもあり、たっぷりと水の出ている水場がたいへん気に入ったので、ここで泊まることにした。

楊子ヶ宿手前から七面山
ヒカゲノカズラ群生

 二階建ての楊子ヶ宿避難小屋は新しく、よく清掃されていた。
 小屋の前の焚き火跡と、小屋すみのゴミの入った袋を除けば、言うことなしだった。
 水場周辺では早くも、ヤマトリカブトの花が咲いていた。

 早くに食事をすませて早く寝たが、この日は誰も来なかったので、気楽な一晩を過ごすことができた。
 標高が高くないので、薄いシュラフでも大丈夫だったが、さすがに明け方にはダウンセーターを着るほどの涼しさだった。
 屋根のあたりでパタパタという音が一晩中、していたのは、なんだったのだろう。

ヤマトリカブト咲く
楊子ヶ宿避難小屋

 いつもはとても早く目がさめるのだが、どういうわけか、翌日は、6時頃まで眠ってしまった。
 外はガスだったので、あまり急がず、ゆっくり支度をして、小屋を出たのは6時半。

2日目

 まずは、ガスに煙る、仏生ヶ岳への登りだ。
 夜半に雨が降ったらしく、樹の枝や下草は、露をたっぷり含んでおり、衣類が濡れた。

 少し登って、仏生ヶ岳の西を巻く。
 このあたりのトウヒの森も、やけにすっきりしているのだが、太根を鹿にかじられている木がたくさんあった。
 樹皮ガードを徹底的にかぶせないと、まずいことになると思われる。

霧に煙る森1
霧に煙る森2(大きな写真)

 孔雀岳手前で鳥の水という水場。
 ここは山頂直下の尾根の上なのだが、これでも、渇水期には枯れるのだろうかと思われるほど、豊富な水が出ていた。

 孔雀岳を巻いて過ぎ、再び尾根の上に出たところが、孔雀の覗というところ。
 ここは、東側が崖のため、大台方面の展望がよさそうなのだが、この日はガスのため、何も見えず。

シダの下生え
岩場にはコキンレイカ

 このあたりから、下生えは丈の低いササとなり、晴れていれば、東側は気分のよい展望が広がりそうな感じ。
 しかしこの日は、ササについた水滴がズボンの裾を濡らし、それが靴の中までしみて、あまりありがたくなかった。

 ゆるく下って行くと、地形図に橡(とち)ノ鼻と記載された地点。
 地名からしてちょっとした難所であろうと想像していたら、まずは蔵王権現の銅像。
 サイトによっては不動像と書いてあるが、これは明らかに蔵王権現である。

シモツケソウも咲く
蔵王権現銅像

 その先はキレット状の岩場だが、鎖が下がっているし、岩場そのものは基本的に巻くので、通過は容易。
 この岩場には、コキンレイカやシモツケソウなど、ちょっとした花も咲いていて、いいところだった。

 このあたりはガレ場・岩場なので展望はよく、斜面には、八ヶ岳の「大同心」「小同心」のような岩塔が突き出していて、とても立派だ。

屹立する岩場
釈迦如来像台座

 再び大きな岩場を巻くと、釈迦ヶ岳の登り。
 急登しばしで釈迦如来像の立つ山頂に着いた。
 釈迦如来像は、たいへん大きなもので、これを前鬼から一人で担ぎ上げるなど、ちょっと想像できない。

 台座には、建立に関わった人々の名前・その趣旨や、いろんな仏や天などのレリーフが施されており、たくさんの象がそれを支える形になっていた。

 しばし休んで、どんどん下ると、潅頂堂の建つ、深仙避難小屋。
 灌頂堂の中をのぞかせてもらったら、中央に役の行者、左右に各種行者像が並んでいた。
 深仙の水場である香精水を見に行くと、途中に「神変大菩薩髭塚」と彫られた大きな石塔があった。

潅頂堂
神変大菩薩髭塚

 岩の割れ目からしみ出す水場は、思ったよりよく出ていて、500ミリペット1本汲むのに、1分くらいあればよさそうだった。
 岩場には、ホトトギスが咲いており、名前のわからないキイチゴが実っていた。

 深仙の小屋は、楊子ヶ宿よりずっと狭いので、おおぜい泊まることはできない。
 ここをあてにするなら、テントかツェルトが必要だろう。

イチゴ
ホトトギス

 大日岳へはすぐなのだが、行場である山頂への道はとても急で、たいへんそうだったのでパス。
 素直に巻いて、太古ノ辻へ出た。

 太古ノ辻には、かつて石塔か何かだったのではないかと思われる背比べ石のわきに、「ここより南奥駈」と書かれた道標が立っていた。
 都合4日、このコースを歩いたのだが、それでもまだ、全体の4割くらいしか歩けていない。
 大峰山脈のスケールの大きさがよくわかった。

ササの下生え
太古ノ辻

 この日は、ここから前鬼に下る。
 下り始めてすぐに、木製の階段道。
 どうもこの階段はあまり風情がない上、濡れていると滑りそうでいやなところだ。

 階段が一息ついたところは、前鬼川源頭のガレ場で、登りの際には、最後の水場となる。
 大きな木を見ているうちに、ついうっかりして、ケモノ道に入ってしまったが、すぐに戻ることができた。

クヌギタケ
チチタケ

 山腹のトラバースしばしで、二つ岩という岩塔に至る。
 ここも行場らしい。

 原生林ではなさそうだが、広葉樹の森には、クヌギタケやチチタケなどが、いくらか出ていた。

岩に生える大木群
ツガ巨木1(大きな写真)

 ミズナラの大木を見ながら行くと、切り立った岩場にたくさんの木が生えたところから、枯れ沢状の下りとなる。
 トチの大木が目立つようになると、まずはツガの巨木林である。
 ここは、登山道から少し外れたところに、何本ものツガ巨木が群生していて、すごいところだ。

ツガ巨木2(大きな写真)
トチ巨木1(大きな写真)

 さらに少し下った枯れ沢に、今度は巨トチが数本。
 根回り2メートルを越すのではないかと思われる巨木が2本あった。
 ネットで前鬼の様子を調べても、巨木があるという情報は目にしていなかったので、この巨木帯は、意外な発見だった。

トチ巨木2(大きな写真)
前鬼近くの杉並木

 その先まもなくで、杉並木となり、かつて前鬼に暮らしていた人々の屋敷跡に来る。
 しっかりした石垣は残っているが、屋敷があったと思しき平坦地には、すでに大きなスギが生えていた。

屋敷跡に生えた大杉
小仲坊行者堂

 前鬼集落の一番下の屋敷が、この日の宿の小仲坊(五鬼助義之氏宅)だった。

 連れと待ち合わせしていたため、受付する前に石段で腰を下ろし,足を調べたら、ヤマビルが2匹、むこうずねに食いついていて,1匹はすでに吸血を始めているのだった。
 たぶん、巨木帯であまり身動きせずに写真を撮っていたため、その時にとりつかれたのだろう。

 この日は食事つきで泊めていただいたため,同宿の皆さんとこもごも交流したり、五鬼助さんのお話を聞いたりすることができて、よかった。

3日目

 前鬼から林道ゲートまでは,30分の歩きだった。

小仲坊
不動七重滝