最近は、ひまを見つけては、道路ぎわにたまっている落ち葉(柴)を熊手でかき集め、畑にうない込む作業ばかりやっている。
土壌を柔らかくして、来春からの農作業に備えるためだ。
来年春のきのこの植菌のための、原木の伐採作業も、もう少し残っている。
冬が来る前の時期は、いろいろと気ぜわしい。
今日は、約3ヶ月ぶりの山登り。
大日向の釣り堀近くに自動車をとめ、足ごしらえをして、東谷林道へ。
大血川は、大日向で、東谷と西谷に分かれる。
どちらも、知った渓だが、わたしは、東大演習林のある東谷が好きだ。
盛りを過ぎた紅葉だが、カエデ類の宝庫ともいえる奥秩父の自然林は、まだまだ十分に魅せてくれる。
ここの目玉は、ケヤキの人工造林地。
葉を落とした、背高のケヤキがとてもみごとだ。
落葉が豊富なだけに、とても豊かな林相と思える。
ちょうどよいウォーミングアップで、クイナ沢橋先の登山口。
手製の道標に導かれて、山道に入るあたりは、自然林だが、二次林。
アセビの下生えに、イヌブナ、ヤマザクラ、カエデ類。
モミはけっこう太いが、原生のものほどではない。
落ち葉を踏みながら、ぐんぐん高度を上げ、東谷の渓音がひびいてくると、この夏、何度か入渓したこの渓の渓谷美が思い出される。
スギ・ヒノキの植林地が、数ヶ所。
どこも、幹近くに、シカによる食害対策の荷造りテープが巻いてあった。
これはこれで有効なのだろうが、木が太り、テープが切れたところは、地面にテープの切れ端が散乱していて、とても汚い印象を受けた。
ここを改善するのが、この方法の課題であるだろう。
最後の植林地を抜けたあたりで、若いブナの群生地。
下生えは、スズタケだ。
何となく、将来が明るいように思える、気持ちのよいところだった。
熊倉山分岐から小黒への登りは、かつてはひどいヤブだったのだが、ずいぶん歩きやすくなっていた。
以前は、小黒直下から酉谷山との鞍部にトラバースするヤブ道があったはずだが、それは見あたらず、小黒へ直登する明瞭な道が見つかった。
急なところを登っていくと、コメツガとモミの重厚な樹林。
とてもいい雰囲気だ。
モミぽっくりとツガぼっくりが落ちていたので、友人のみやげにいくつか拾っていった。
小黒ピークは、展望はないが、黒木とシャクナゲの生えた落ち着いたピークで、樹林の伐られた酉谷山よりはるかに気持ちがよかった。
ここからいったん下って、登り返すと、お久しぶりの酉谷山だった。
酉谷山は、秩父名黒ドッケ、もしくは大黒(おおぐろ)。
双耳峰をなす小黒は、山渓の分県ガイドには、「おぐろ」とルビがふってあるが、これは「こぐろ」と読まねば意味をなさない。
いつの間に作られたものか、山頂には、ゴミの山ができていて、三角点標柱と背比べをしていた。
こまったものだ。
切り開かれた山頂からは、石尾根の向こうに、大岳山や御前山が意外に近く見えていた。
酉谷小屋にも寄ってみたいが、今日はまだ先が長いので、そうそうに西に向かった。
一昨年は、ツツジ咲く新緑の季節に歩いた水源林道だが、今日は完全な冬枯れの道だ。
ブナの立ち枯れにブナハリタケが出たあとがあったが、すでに食べられなくなっていたので、助かった。
この日のコースできのこ狩りなど始めてしまったら、どんなに急いだって、日が暮れてしまう。
尾根の右手(北側)には、両神山、三峰山、和名倉山などが、樹林越しに望まれる。
水源林道は、いつ来ても、歩きやすくて、気持ちがいい。
タワ尾根を乗っ越すと、天祖山の採石場が醜い姿をあらわした。
おりしも、発破の時間となり、サイレンが鳴り終わると、爆破音が山にひびいた。
近所の山でも毎日、これをやっているが、いかにしても無惨で、むなしい。
天祖山の分岐を過ぎても、歩きやすい道が続いた。
少しずつ高度を上げていくと、足元には、黒茶っぽく葉色を変えたイワウチワの群落。
周囲には、いくぶん葉を丸めたシャクナゲもある。
植物たちは、来るべき冬に備えて、しっかり身構えているようだ。
1818ピークの手前は、モミとヒノキの暗い樹林帯。
ここのヒノキは天然物だろう。
木の根の露出した急登を過ぎると、一転して落葉した若いダケカンパ林で、いっきに明るい。
このあたりは、林相の変転著しく、歩いていてちっとも飽きない。
芋ノ木ドッケへの登りは、木の墓場のような枯れ木帯。
これは、伊勢湾台風の被害のあとだという説明が、白岩山に立っていたが、20〜30年生のコメツガやシラビソが新しく倒伏しており、幼樹がほとんど生えてこないまま、ダケカンバ林に遷移しつつある。
この光景の原因を台風にだけ、求めるのは、まちがっていると思う。
芋ノ木ドッケに登り着くと、東京側は枯れ木帯だが、秩父側は、コメツガやシラビソの重厚な樹林帯。
ここまでずいぶん早足で来たので、ひといき入れた。
三峰方面に降りていくと、巻き道が出合うところに、「芋ノ木ドッケ」という立派な標柱が立ててあって、とまどってしまう。
ここからは、雲取山登山道となるので、人通りが激しく、山のそこここから、人の話し声が聞こえた。
少し下って、白岩小屋。
ここは、和名倉山や大洞川のすばらしいビューポイントだ。
市ノ沢、惣小屋谷、井戸沢の食い込みが、大迫力で望まれた。
和名倉山の左には、遠く、三宝・甲武信・木賊の三山が見えた。
急なところをさらに下って、おキヨ平。
霧藻ヶ峰に登り返す元気が残っていないので、ここから下山することにしたが、百人以上はいると思われる団体さんと遭遇してしまった。
各自が熊よけの鈴をぶら下げ、大声で話しながら歩いているので、にぎやかなことこの上ない。
「ちりん、ちりん。じゃらじゃら。がやがや」
「ちりん、ちりん。じゃらじゃら。がやがや」
札所めぐりの巡礼ツアーだって、これほどにぎやかではあるまい。
太陽寺の境内にも、団体さんが休憩していたので、大日向まで、一気に下った。
意外に早く下山できたので、さっそく熊手と箕を出して、畑にすき込むための、落ち葉かき。
ミズナラや各種カエデ類など。
ずいぶん、奢った肥やしになった。
畑に寄って野良仕事をしているうちに、日が暮れた。