水曜日の時点では降水確率100パーセントだったのだが、前日あたりから曇り予報に変わった。
半信半疑だったが、それがホントならありがたい。
もっとも、二日目は午後から雨の予報だったので、降られることは覚悟してでかけた。
寒冷前線が通過したはずなのだが、登山口は非常に蒸し暑かった。これも、腑に落ちなかった。
徳ちゃん新道入口から尾根にとりつく。エゾハルゼミの声がものすごい。
尾根上ではヤマツツジが満開だった。
すぐにカラマツ林の中の急登が始まる。
とりあえず、最初の小ピークで小休止にした。
次のピッチは近丸新道との合流点まで。
合流点ピーク直下は、ひどい急登だった。
その先も急登だが、ときおり平坦なところもあって、助かる。
いつしかアズマシャクナゲのヤブを伐開した道になり、シャクナゲの花も見られるようになった。
開花の早いものは花殻だったが、おおむね見ごろで、非常に美しかった。
高度を上げていくとセミの声も聞こえなくなり、ヒガラ・ルリビタキ・メボソムシクイなどのさえずりが聞こえるようになった。
標高2200メートルを越えたあたりの平坦地で三度目の小休止。
ここまでくれば、甲武信小屋も近い。
シャクナゲ帯から針葉樹林帯になり、バイカオウレンの花を見ると、急登少しで木賊山の頂稜となり、傾斜が緩む。
展望のない木賊山はスルーして、甲武信小屋に直行した。
ここに来るのは4年ぶりだ。前回はひどく混んでいて困ったのだが、今回は比較的閑散としていて、助かった。
それでも、あとから登山者が次々に到着して、ほとんどの幕営スペースはふさがった。
炊事をすませ、まったりしていると、雲が切れて青空が見え始めた。
ことによると、天気予報は大外れかと期待できるかとも思った。
ところが、夜半にトイレに出てみると霧雨が降っており、それほど調子よくコトは運ばないものだと思った。
霧雨が本降りにならないことを願うばかりだった。
さて、甲武信ヶ岳へは急登少しである。
ここへ来たのは6度目だが、天気がよかったことはあまりない。
今回も、何も見えなかった。
三宝山まではすぐだった。
三宝山からの下りは針葉樹林帯で、とても長いが、さほど急でないので、歩程がはかどる。
もっとも、かつて十文字峠から縦走して来たとき、三宝山への登りはとても辛かった記憶がある。
武信白岩山から大山にかけては岩稜帯となる。
天気がよければ展望もよく、爽快な尾根なのだが、岩も濡れていたので緊張しながら登降する。
大山が近づくと、再びシャクナゲの花が多くなって楽しい。
木賊山の登りより、こちらのほうが花の数もずっと多くて、ちょうど咲き始めの花もあって、美しいことこの上なかった。
十文字峠へはひと下りだった。
小屋の周りのシャクナゲといったらすごい花数で、奥秩父のシャクナゲの名所を一つあげよと言われたらここしかない。
鹿の食害対策だろうが、シャクナゲをすべて網で囲ってあるので、写真には撮らなかった。
岩稜帯から観音道に入ると、とてもホッとするのだが、まだこの日のコースの四分の一ほどしか来ていない。
先はまた長い。
道ばたに四里観音を見てしばらくで、四里観音避難小屋。
なんとなつかしい。
この前ここに来たのは、まだ新築されたばかりの 1990年12月26日だった。
冬休みに入ったその日、電車とバスを乗り継いで、長野県川上村から登り始めた。
雪は降っておらず、積雪もたいしたことがなくて、確かワカンを持ってきたが結局使わなかった。
十文字小屋を過ぎ、ここ四里観音避難小屋で、一人泊まったのだった。
当時34歳になったばかりだった。
それが今、こんなオジイサンになってしまうなんて、誰が想像できようか・・・。
ここの水場は足元が凍結していて、とても怖かったことを覚えているが、今回改めて訪れてみて、冬にこの水場に来るのは怖いだろうと思った。
以前にはなかったトイレができていたので、さっそく使わせてもらった。
このあたりから、雨脚が強くなった。
予報では午後から雨ということだったので、ほぼ的中したといえる。
この先の山は、南側を巻いていくのだが、巻き道とはいえ、小さな登り下りが連続して、見た目より長いし、さほど楽ではない。
三里観音では、雨の中、休憩する他なかった。
三里観音から二里観音までは、かなり長い。
赤沢山の北を巻き、1818メートル峰の南を巻いて、さらに尾根を行く。
二里観音直下は、標高差たかだか50メートルほどだが、疲れた足にはこたえる急登だった。
二里観音の小屋で小休止。
この道には、避難小屋が二軒もあって、じつに感謝に堪えない。
雨は強くなることはなかったものの降り続き、同行者の会話も少なくなって、かなりテンション下がっていることが窺えた。
この先で、小屋にカメラを忘れてしまうというミスをした。
それに気づいたのは比較的すぐだったので、みんなには先行してもらって、走って取りに戻った。
一里観音までは、緩やかな下りが続き、とても歩きやすい。
ブナの倒木にヒラタケがたっぷり出ていたので、当然ながら、いただいていった。
一里観音からはゆるい登りを交えた尾根道となる。
いつものようにバスの時間が気になり始めるのだが、同行者たちが疲労困憊しているのはわかっていたので、とりあえずゆっくり下るつもりで尾根を行った。
地形図を熟読すると、近道として使えそうな破線路があったので、予定ルートを変更してそちらを下ってみた。
踏みあとはちゃんとついていて、栃本広場下へ思ったより早く着いた。
ここからバス停までは、もうすぐなのである。
天気には恵まれなかったが、今回もいい登山だった。
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