将監峠から和名倉山

【年月日】

2012年8月31日
【同行者】 全部で14名
【タイム】

8/31 三ノ瀬(7:56)−小休止(8:29-8:39)−小休止(9:40-9:50)
  −将監小屋(10:13-10:25)−将監峠(10:32)−山の神土(10:54)
  −小休止(11:27-11:40)−東仙波手前(12:17-12:27)
  −幕営地(13:54-14:57)−和名倉山(15:19)−幕営地(15:37)
9/1  幕営地(5:05)−索道跡(6:00-6:10)−造林小屋あと水場(7:30-7:40)
  −反射板あと(8:40-8:50)−小休止(9:45-9:50)−二瀬バス停(10:43)

【地形図】 中津峡、三峰、雁坂峠、雲取山 ルート地図

 三ノ瀬の将監峠登山口から、林道に入る。
 標高1300メートル近いだけあって、さすがに涼しい。
 沢沿いの林道歩きなので、いきなり大汗をかくこともない。

ミズナラの道
将監小屋

 ゆっくり歩いて、1445標高点近くで小休止。
 この時期に、もっとも警戒すべきは熱中症なので、早めに休みをとった。

 ここからは牛王院平に向かうのでなく、将監小屋方面へ林道を直進する。
 これも暑さ対策だった。
 沢を離れて、山腹をトラバースするので、陽の射すところもあるが、おおむね木陰を行く道は、快適だ。
 このあたりでは、スズタケがまだ健在で、道の両側はかつてよく見たような密ヤブだった。
 道沿いには、なかなか立派なミズナラなども見られた。

 途中の小沢でもう一度休んで、しばらく行くと、将監峠へ直行する道を分ける。
 その先しばらくで、将監小屋に着いた。

 小屋の周囲に張りめぐらされている白いネットをかきわけて、水場前でザックを下ろし、水を補給する。
 ここのテント場は広々とした台地上にあって、気持ちよさそうだ。

大洞川水源の林相
展望の稜線(大きな写真)

 ここからようやく、本格的な登山道となり、将監峠へ登っていく。
 将監峠は、草原状のT字路で、のどかな場所だ。

 山の神土へは、緩やかに登降していく。
 山梨県側はおおむねカラマツの植林で、秩父側はシラビソ林だ。
 鹿に食われたシラビソの樹肌が痛々しい。
 大洞川の水源は、険悪な上流部の印象とは異なり、穏やかなスズタケのヤブになっていた。

ハナイカリ(大きな写真)
八百平にて(大きな写真)

 山の神土で右折して、和名倉山への道に入る。
 標高1872メートルのここまで、たいした登りもなく到達できるこのルートはさすがによくできていると思う。
 登山道は最近刈ったばかりのようで、たいへん歩きやすくなっていた。
 しばらく行ったところが一杯水の水場だが、全く流れていなかった。

 ここから先の尾根道は、主に南東側が開けており、好展望なのだが、ガスが巻いていたため、ほとんど何も見えなかったのは残念だった。
 目の下は大洞川の源流でスズタケの原が広がっていて、鹿の楽園になっていた。
 マツムシソウなどが咲いていてもおかしくない感じなのだが、足元には、数株のハナイカリしか見えなかった。

 西仙波から東仙波にかけての稜線も開けているのだが、竜喰山あたりまでしか見えなかった。
 東仙波手前の岩峰で小休止。
 ここからは、飛竜・雲取あたりがよく見えたはずだ。

 進路を北に変えても、樹林とダケカンバの疎林が続き、ときおり展望が開ける。
 樹林帯は黒木とシャクナゲのヤブで、いかにも奥秩父らしい雰囲気がした。
 吹上ノ頭前後からは雁坂小屋や甲武信方面も見えたはずだが、眼下に槙ノ沢や八百谷の樹海が望まれるだけだった。

 ゆるく下って行くと、尾根が広くなり、先日訪れた八百平に着いた。
 ここまで来れば、幕営予定地までひと息だ。

苔光る(大きな写真)
ダケカンバ(大きな写真)

 川又の分岐を過ぎ、少し登ると予定していた小平坦地に着いた。
 カラマツと黒木に囲まれ、ゴマナの咲く一角だ。
 雲行きがよくなかったので、急いで設営したのち、水場に行って米とぎと水補給をすませて、空身で和名倉山に向かう。
 同行者たちはピークらしくない山頂に拍子抜けしたと思う。

 食事中に少しパラついたが、本格的な雨にはならず、穏やかに寝につくことができた。
 夜半までいくらか風が吹いており、雨になる風かどうか思案したが、月明かりはたいへん明るかった。
 このあたりに居着いている鹿が一晩中、テントの周りをうろついており、木の皮をバリバリと食っている音が聞こえて、かなり気になった。

苔の森の黎明(大きな写真)
クサハツ

 風は明け方にはやんだが、テントから出てみるとガスが立ち込めており、この日も展望は期待できなかった。
 天気がよければ千代蔵の休場へ道草して夜明けの風景が楽しめるかと思ったのだが、さっぱりダメなので、下山ルートに直行した。

 二瀬分岐あたりの踏み跡の薄い部分を上手にクリアして、苔むしたピークを西から巻き、北のタルへと下る。
 苔に覆われた世界が、夢のように美しい。
 苔の世界を歩いていた時に、東方の樹林からオレンジ色の太陽が顔を出した。

 標高約2000メートルのピーク(笹ッパ)の巻き道に入ると苔の道が終わる。
 再び尾根に出たところが索道あとの広場で、小休止。
 ここから二瀬尾根の本格的な下りが始まる。

 しばし下って行くと、スズタケの枯れたヤブに突入する。
 枯れているので歩きやすいとはいえ、ぼんやりしているとルートを見失う。
 とくに標高1610メートル付近で尾根が広くなって傾斜が緩むあたりは要注意だ。

 だらだら下って、標高1550メートルからいきなり急降下となる。
 ここでスピードが一気にダウンしたが、たまたま登山道沿いにマタタビがずっしり実ったツルを見つけたので、マタタビ摘みをしながら下った。

 ここで一人の登山者と遭遇した。
 二日間を通して、登山者らしき人とすれ違ったのは、この人だけだった。
 造林小屋あとの水場でひと息入れたが、この下りで時間をかなり食ってしまった。

 軌道のあとは平坦な道だが、倒木がうるさいので、荷物が大きいと歩きにくい。
 予定の時間より1時間早く出発したのだが、反射板あとの広場に着いた時には、予定よりやや遅れてしまっていた。
 ここまでそれほどゆっくり来たわけではなかったので、予定していた行動時間の想定が甘かったのではないかと思う。

熊ハギ
大洞吊り橋

 ともかく、ここからまだ、標高差にして約800メートル下らなければならない。
 気持ちを入れて、急降下にかかった。

 スピードは上がらず、予定していたパスに乗るのはきびしいと感じたので、一旦小休止し、「マイペースで行くのがよいけれど予定のバスには乗れないかもしれない」とパーティに伝えると、その後、心なしかペースが上がったような気がした。

 立派なスギ林の下降になると吊り橋は近い。
 大洞吊り橋は一度に5人しか渡ってはいけないことになっていて、渡るのに少々時間を食ってしまったが、どうにかバスに間に合いそうな時間に車道に出ることができた。

 そこでちょうど小雨が降り始めたのだが、バス停まであと少しだったので、そのまま早足で歩いていった。

 バス停につくと雨はあがって、陽射しが出てきたが、秩父に戻ってしばらくすると、土砂降りの雨になった。
 それを考えると、この日この時間に下山できて、よかったと思った。