梅雨の奥秩父
− 金峰・瑞牆再訪 −

【年月日】

2011年6月11日〜12日
【同行者】 全部で19名
【タイム】

一日目 瑞牆山荘(9:23)−富士見平(10:07-10:23)−瑞牆山(11:40-12:00)
    −富士見平(13:12-13:34)−大日小屋(14:20)
二日目 大日小屋(3:55)−小川山分岐(4:24)−砂払ノ頭(5:09)−金峰山(6:16-6:45)
    −標高2155メートル休憩地点(7:33-7:45)−砂洗川(8:08)−
    標高1735メートル休憩地点(8:34-8:45)−金峰山荘(9:10)

【地形図】 瑞牆山 金峰山 居倉 ルート地図

 金峰・瑞牆に登るのは、なんと22年ぶりだった。

 1989年の5月には、電車でアプローチして、瑞牆山荘前から瑞牆山・金峰山に登り、金峰山小屋に泊まって、来た道を戻った。
 登山道が凍結していて歩きにくかったが、ほぼずっと晴れていたので、気持ちのよい春山歩きができた。

 同じ年の10月には、自動車で三国峠を越え、廻目平に車をとめて、今回下ってきた道を登った。
 登った日は曇っていたので、きのこを探しながらのんびり行き、このときも金峰山小屋に泊まったが、翌朝は、すばらしい好天だった。

 山小屋というものに泊まった経験はあまりないのだが、金峰山小屋には2回も泊まったことがあり、これは自分の最高記録である。

 今回は、梅雨の中休み状態(北高型)がしばらく続いていたのに、山行予定の土日だけ、梅雨前線が北上するという、やや憂鬱な予報が出ていた。
 金曜日の夜半から降り始めた雨は、土曜日の朝には本降りとなり、悪い予報がズバリ当たっていた。
 もっとも、午後にはあがる予報だったので、山行中に土砂降りということはないとという希望的観測は持っていた。

 山行にあたっては、いろんな心配ごとがあるもので、さしあたっては、8時40分発の山梨峡北交通のバスに乗れるかが、問題だった。
 これに乗れないと、瑞牆山には登れないのだが、安全運転で行ってもらわなければならない。
 結果的には、発車予定の小1時間前には増富鉱泉の駐車場に着くことができた。

 駐車場に着いたときには、強い雨が相変わらず降っていたので、瑞牆山は断念して、大日小屋へ直行することに一度は決めた。
 山梨峡北交通のバスに乗り換えてしばらく行くと、やや小降りとなって、樹間から瑞牆山が見え隠れしはじめた。
 瑞牆山荘前でバスを降りると、ほぼ小雨状態だった。
 雨モードの支度をして歩き始めると、雨は少しずつ霧雨化し、瑞牆山に登ることもできそうになってきた。

ミズナラ大木の道
アズマシャクナゲ満開(大きな写真)

 富士見平からの登りは、おおむねミズナラ林である。
 「山梨の森林百選」にもなっているようだが、大きなミズナラもあって、風情のよいところだ。
 できれば、薄曇りのような日に、ここをのんびり歩いてみたい。

 沢筋ではクリンソウがピンクの花をつけていたが、重荷を背負って同行者についていくのがやっとだったので、写真を撮っている余裕はなかった。
 快調に登って、富士見平でザックを下ろした。

 ここで同行者に瑞牆山に行ってみたいか尋ねたら、どちらかといえば行きたいという返事だったので、予定通り瑞牆山に行くことにした。
 メインザックをデポし、雨よけにツェルトをかけて、サブザックを背負い、小屋の左手から天鳥川へ下る。

 ヒメイチゲやミヤマカタバミがうなだれる道を緩やかに下っていくと、天鳥川に降り立つ。
 以前はもう少し開けていた印象があるが、ことによると増水して渡れないかもしれないと危惧していたほどでなく、なんなく渡渉できた。

 ぽつぽつ咲いているキバナノコマノツメを横目で見ながら、チョロチョロ水の小沢に沿ってしばらく登る。
 最初からロープのかかったところや、木製階段やハシゴが出てくるが、危険なところは全くなし。
 アズマシャクナゲがちょうど満開で、みごとだった。

 コマドリ・ルリビタキ・コルリ・オオルリ・メボソムシクイなどがさえずっていた。

 展望もなく、次第に傾斜がきつくなるが、それほど長い登りではないので、しばらく我慢だ。
 前方に大ヤスリ岩が見えてくると、あれが山頂かと思いたくなるが、山頂はもう少し先だ。

 中腹からは、南側の山がよく見え、ことによると頂上では展望が得られるかという希望が出てきた。
 山頂手前で、大きな声で騒ぎながら登っていくお年寄りの団体がいた。
 最初は、何事が起きたかと思うほど大きな声で、何か怒鳴っていたのだが、近づいてみると、気合をかけているようでもあり、「バンザイ」と言っているようでもあった。

 自分たちだけで山に登っているわけではないから、うるさくて迷惑だし、でかい声を出しながら登るのは、そもそも体力のムダである。
 じつにコマッタ人々である。

 ロープのかかったところから少し急登したところが、瑞牆山の山頂だった。
 山頂だけはガスが晴れず、期待した大展望は得られず、残念だった。
 さほど広くないところに、老若男女が憩っていて、瑞牆山の人気のほどが伺えた。

 しばし休憩して、下りにかかる。
 山頂はガスっていたが、中腹まで下ってくると、また展望が開けた。
 この日は、山頂だけがガスっていたようだ。

 富士見平に戻って大日小屋の幕営手続きを済ませた。
 メインザックを背負いなおして、先へ進む。
 飯森山の巻き道までは急登だが、その先は傾斜が緩む。
 大日小屋への道は地形図にあるのとはかなりずれており、小屋の位置は全く違っている。
 こんなミスが長年放置されているとは、驚きだ。

 鷹見岩を右に見るとまもなく、大日小屋に着いた。

キバナノコマノツメ
テント場から大日岩

 大日小屋は無人で、小屋の周囲でキバナノコマノツメが咲いていたが、ゴミがかなり散乱していた。
 テント場と水場はきれいに使われていたが、放任したままでは、さらに荒れてしまうのではなかろうか。

 すでに何張かのテントが設営してあったが、5張のテントを張るスペースは十分だった。

 夜の間、いくらか小雨が降って、フライシートを叩く音が聞こえたが、強い降りにはならなかった。
 宵の口にはヨタカがキュウリを刻むような声で鳴き、夜半にはジュウイチがけたたましく鳴きながら飛び回っていた。

 朝は、2時半に起きた。

 出発準備ができたので、3時55分に出発。
 いきなり大日岩基部への急登にかかる。
 自分としては苦しかったが、パーティとしては快調に進み、小川山の分岐を通過して、針葉樹林帯の登りになる。
 コマドリ・ヒガラ・ルリビタキ・エゾムシクイ・ホトトギスなどの声が響いていた。

夜明け前の雲海(大きな写真)
山頂への道

 北側の空がオレンジ色に染まっていくと、雲海に山が浮かんでいるのが見え、まずまずの好天だということがわかった。
 広いところがあったら止まるように、先頭の人にお願いしたのだが、なかなか止まってくれず、結局、砂払ノ頭まで行って小休止となった。

 ここは小さな岩峰で、展望が開けて、富士山や南アルプスが一望でき、晴れてはいないものの、遠望のきく天候に感謝した。

 この先、森林限界を出る。ハイマツの斜面を歩くのは、山岳部としては北岳以来だ。
 冷たい風が吹いていたので、じっとしていると寒かったかもしれないが、ハードな行動にはちょうどよかった。
 前方の五丈岩がだんだん近づいてき、岩塊の上を歩くようになると、金峰山まで、さほどかからなかった。

 金峰山は、じつに展望のよい山だ。  国師ヶ岳・甲武信ヶ岳・両神山など、秩父の山もよく見えるし、浅間山など信州の山も意外に近い。
 富士山と南アルプス・八ヶ岳は全山見えており、北アルプスもいくらか望むことができた。

 6時過ぎに山頂に着くことができたので、とりあえずここで30分の大休止をとった。
 風は冷たいが、あまり早々に下ってしまってはもったいない。

瑞牆山を望む
ミネズオウ咲く

 山頂周辺ではミネズオウ・コメバツガザクラが咲き、キバナシャクナゲやハクサンシャクナゲも咲いていた。
 同行者たちが五丈岩に登りたがったが、危険なので、制止した。

キバナシャクナゲも満開(大きな写真)
雲海と富士山(大きな写真)

雲海と白峰三山(大きな写真)
雲海と仙丈・甲斐駒(大きな写真)

 名残惜しいが、下山にかかる。
 かなりの急降下で、金峰山小屋の屋根が、足元に見える。
 振り返ると、あとから来た大学生たちが、怖い怖いと言いながら、岩のてっぺんに登っているのが見えた。

 小屋のところから樹林帯に入る。
 この下りにも、シャクナゲの花があるにはあるが、瑞牆山ほど多くはなかった。

 植生はいつしか、ネズコとゴヨウマツの樹林帯となる。
 ネズコとゴヨウマツが多い場所は通常、険しい尾根の上なのだが、ここは普通の斜面なので、ちょっと珍しかった。

小さく両神山(大きな写真)
満開のミツバツツジ

 広いところで小休止をとると、まもなく小沢沿いの道になり、思ったよりずいぶん早く、砂洗川の橋を渡った。
 ここから金峰山荘まで、約1時間の林道歩きだが、さすがにちょっと飽きた。
 道沿いでは、ミツバツツジがちょうど満開で、足元ではシロバナノヘビイチゴが可愛らしい花を咲かせていた。

 ペースがよかったので、予定より40分も早く、金峰山荘に着くことができた。