今年も、集団登山の季節がやってきた。
行き先は、昨年の今と同じ、そして秋にも同じコースを歩いた白泰山。
100人を超える集団でどかどかと歩くだけなので、多少食傷気味である。
何度もこのコースを歩くのは、2008年夏に予定されている高校総合体育大会登山大会(インターハイ)というイベントのシミュレーションを、運営側が求めているからだ。
今回のシミュレーションは、運営側にとって収穫があったのだろうか。
シミュレーションを優先したため、今回の大会運営には、合理的でない部分や不行届が、ずいぶん見られた。
シミュレーションの成否を明らかにするのはもちろん必要だが、シミュレーションを優先したために犠牲になった部分も、きちんと明らかにしてもらいたいものだ。
イヌブナ新緑
| ハウチワカエデ濡れる
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一日目は予報通り、小雨。
カラカラに乾いていた畑には恵みの雨だが、山歩きにはうれしくない。
秩父湖から立派に手入れされたスギ林を登る。
足元には、ムラサキケマン、キランソウ、クマイチゴ、チゴユリ、ホソバテンナンショウ、カキドオシなどが咲くが、ずっとスギ林なので、花はあまり多くない。
ちょっと目を引いたのはキランソウで、地面にへばりついて、青紫の小さな花をたくさん咲かせていた。
一昨年秋の北部地区新人大会の時には、間伐材が散乱していて、上部登山道が見えなくなっていたが、今回はきちんと整備されていた。
急登しばしで大黒山三角点。
やや疲れも見えたが、目的地まで今少しなので、そのまま元気プラザまで行った。
テントサイト横の炊事場でザックを下ろしたが、人影はなし。
主催者も指示を出す人も来ていなかった。
常識的にはテントサイトで幕営するはずだが、運動場にテントを張らせるつもりかも知れないので、とりあえず雨宿りしながら待機。
が、1時間待っても誰もあらわれなかった。
そうこうするうちに、あとのバスで秩父湖に着いたパーティが登ってき、どんどん設営をし始めた。
小雨模様なので、炊事場に近いスペースを確保したかったのだが、正直に待っていたために、一番いい場所に設営することはできなかった。
受付時刻をやや過ぎて、役員の方々が自動車で到着して、受付。
その時点では、他の役員が来ないので、詳細な指示を出すことはできないが、翌日にはインターハイ大会同様にテントを運動場に張ってほしいと言われた。
その時点で運動場には大きな水たまりができており、地面はゆるんで、幕営にはいかにも不快な感じだった。
一度設営したテントを、雨の中撤収して水たまりの中に張り直すなど、イヤなことだ。
テント移動にまともな理由がないのだから、なおさらバカげていた。
この日の夕食のメニューはお好み焼きだった。
お好み焼きを作るのは初めてなので、多少早めに炊事を開始。
夕方には、翌日の行動について指示が出された。
当初の予定では、朝5時に出発して白泰山にいたり、二里観音を回って15時に戻るというものだった。
ところが、このときには、出発時刻は8時とのことだった。
8時に出発しなければならない理由は、役員の方々が宿泊している元気プラザの食堂が7時からなので、それを待たねばならないからということらしかった。
しかし、出発を3時間遅らせれば、下山も3時間遅れざるを得ない。
そうすると、下山予定時刻は18時となる。
これでは、足のそろわないパーティは、ビバーク必至だ。
参加者の安全より、役員の朝飯を優先する主催者の感覚には、正直言って唖然とした。
一方、お好み焼きは上々の出来だった。
従来のセオリーだと、12人パーティであれば、9〜10人前くらい作るのが適量だったが、今回は、12人前作ってもやや足りないくらいだった。
その後、出発時刻はまたも変わって6時半となり、明るいうちに帰幕できそうになってほっとした。
例年同様、この夜のテント場も騒々しくてかなわなかった。
シュラフに入れば、疲れがどっと出てとりあえず眠ってしまうのだが、一眠り後に、騒音のため、目が覚めてしまう。
昨年もそうだったのだが、今回もお説教係をかって出ざるを得なくなった。
翌朝は、小雨降る中、予定通り出発。
栃本広場手前までは、ずっとスギ林。
雨のせいもあって、暗い森の中でテンションが上がらない。
雨の一里観音
| 雪に埋もれるバイケイソウ(大きな写真)
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栃本上部まで来ると雑木林となり、鮮やかな新緑の中にヤマツツジが咲いて、ぱっと明るくなる。
ここで役員の方々と合流して再出発。
ヤブこぎや急な登り下りがなく、広い尾根道である上、雨も小降りになったので、傘をさして歩いた。
十二天の三角点付近で小休止。
小休止するという指示はないのだが、何となくみんながザックを下ろして座り込むので休んでいいのかな、という感じ。
ただ、いつになったら出発するのかがよくわからない。
とにかく、出発するという声がかかるまで、座っているしかない。
あたりにはカタクリの一枚葉が生えていたので、早春には美しいところなのかも知れない。
ハウチワカエデが葉を開き始め、えんじ色の花をぶら下げた株もあった。
一里観音手前で、二手に分岐する。
どちらから行っても大差なく、すぐに合流するのだが、本番と違う方を進んでしまったらしく、方向転換する。
大パーティで動くので、全体を把握するのが難しいのだろう。道に迷ったわけでもないのに、ずいぶん時間を消費してしまった。
一里観音で三度目の小休止。
このあたりからイヌブナが目立ち出す。
イヌブナの淡い新緑が雨に濡れて、とても美しい。
北側にカラマツ林を見るとまもなく、原生林に入る。
このコース中、最もすばらしい森だ。
ツガ・ブナ・ミズナラ・オノオレカンバなどの大木が次々にあらわれる。
雑木林では散り終わっていたミツバツツジやアセビも、ここでは満開で、特にミツバツツジの濃ピンクが鮮やかだった。
原生林に入る前後から昨晩降ったらしい雪が出てきた。
はじめはスズタケの上にうっすらと積もっているだけだったが、登るにつれて積雪は深くなり、まもなく完全な雪道となった。 白泰山手前のダケカンバ帯で次の小休止。
若者たちは早速雪玉を作って投げ始めた。
元気でよろしい。
こちらは、ツガの枝からの落雪を傘でよけるのが精一杯で、じっとしていると身体が冷えて仕方がなかった。
白泰山の分岐から少しの急登なのだが、積雪のためか大渋滞。
暖まりかけた身体が、また冷えてしまった。
やっと芽生えたバイケイソウが雪に埋もれていた。
山頂にいることができたのは一瞬で、すぐに下山だと言われ、さらに少し下ったところで、14分間の大休止だという指示があった。
雨はあがったかに見えたが、ツガの枝に積もった重たい雪がひっきりなしに落ちてくるため、傘のない人は何度も雪爆弾に見舞われた。
帰りは来た道を戻る。
栃本広場の先で、体調の悪くなった人がいて少し心配した。
アマ無線の使用を禁じられたので、無線機はテントにおいてきた。
こういう状況になる可能性もあったので、無線機を携帯すべきだった。
ともかく、やや薄暗くなりかけた5時前には、幕営地に戻ることができてほっとした。
出発前には、帰幕後、テントを移動するように指示されていたが、時間も時間なのでそれはなしということになり、ほっとした。
中央線の中古車両が走る秩父鉄道
| 厚紙の切符
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この日のチャーハンも、10合の米を炊いて作ったが、みんなよく協力したので、たいへんうまくいった。
今回の山行では、炊事・片付け共に生徒の動きがとてもよいので、感心した。
前夜のお説教が効いたのか、この日の夜は、おおむね静かに眠ることができた。
雨は完全にあがるかと思ったが、夜更けまではしとしとと降り続いた。
翌朝は、朝食と撤収をすませたのち、勉強会だと言われた。
とりあえず、帰りのバスが気になったので、全体が終了次第、すみやかに下山することにして、教室に向かった。
何を勉強するのかと思ったら、いきなりテストがあった。
さほど難しくはなかったが、出題ミスが散見された。
テストをするのも悪くないが、出題範囲を明示しておいてくれた方がよかったと思う。
テストのあと、即、下山にかかる。
若干の霧雨が降っていたような気もしたが、傘などが必要な状態ではなかった。
来た道をどんどん下って、秩父湖バス停には、一番に着いた。
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