ササと黒木の尾根
−皇海山から袈裟丸山−

【年月日】

2001年7月20〜21日
【同行者】 Nさんと極楽蜻蛉
【タイム】

7/20 ゲート前(8:30)−釜ノ沢出合(11:00)−ニゴリ沢出合
 (11:40-12:30)−国境平(14:15-14:45)−皇海山(16:30)−
 不動沢コル(5:25)
7/21 不動沢コル(6:25)−鋸山(7:05)−六林班峠(8:15-9:00)
 −法師岳(10:00)−奥袈裟(11:10)−中袈裟(12:15)−後袈裟(12:50)
 −前袈裟(13:35-14:00)−小丸鞍部(14:30)−弓ノ手登山口(16:30)

【地形図】 丸沼、皇海山、男体山、中禅寺湖

八反張で会ったカモシカ

 Nさんに声をかけていただいたおかげで、ひさびさに、重荷を背負った山歩きに出かけることができた。

 大ナギ沢出合のゲートは、あいたままになっていたが、路面がよくないので、前に来たときと同じように、ここの広場に駐車。
 さすがに荷が重いので、足が上がらない。

 しばらくは林道歩きだが、釣り人のものらしき車が、追い越していく。
 路傍には、ネジバナ、ムシトリナデシコ、ビロウドモウズイカ、オトギリソウなどが、点々と咲いていた。

 樹木の生えていない両岸の光景は、何回見ても異様で、痛ましい。
 とくに、中倉山側の斜面は、山の髑髏を見るようだ。
 アマツバメだけは、相変わらず元気に、岩場周辺を飛び回っていた。

 下流では細かった流れだが、大堰堤の乗っ越しからは、しっかりしてくる。
 前回より、水量がずっと多い。
 Nさんは、ここから地下足袋に履き替え。
 わたしは、おおむね、登山靴を履いたまま、飛び石伝いに渡渉したが、何度か水流にはまってしまった。

 ニゴリ沢出合で、大休止。
 食事も、水汲みも、皇海沢でおこなった。

 ニゴリ沢は、どうしていつも濁っているのだろう。
 沢の中の石を見たところ、泥がこびりついており、前日あたりに、大増水したようだった。
 どこかで大きな崩壊でも、起きているのだろうか。

 シカの多い足尾の奥沢だが、ヤシャプシやオオバアサガラなど、渓のパイオニアの幼樹は、ほとんど食害にあっていなかった。

 ニゴリ沢に入ると、傾斜はやや急になるが、ひと登りで、モミジ尾根の取りつき。
 ここは、ひどく急なので、気合いを入れて登る。
 オサバグサが咲いているかと思ったが、やっとつぼみが出たばかりだった。

 尾根の上に出ると、左に皇海山がそびえ立ち、右に釜五峰が遠望できるところに来る。
 皇海山の北東面、皇海沢の源頭は、樹林もまばらに切れ落ちた斜面で、とても迫力がある。
 釜五峰の岩場は、カモシカ平のササ原とのコントラストが、とても美しかった。
 国境平手前で、アカハラが鳴いていた。

 国境平の水場は、思ったより遠く、往復20分ほど、みなくてはならないだろう。
 Nさんは、ここで泊まりたいとおっしゃったが、わたしが、翌日の縦走のことを考えると、皇海山を越えておきたいといったら、じゃあそうしましょうということになった。

 小ピークを越えて、皇海山に取りつくと、急登の連続。
 コメツガの幼樹が多い中、ひたすら登っていくと、メボソムシクイやルリビタキの声が聞こえた。

 山頂直下の尾根に来ると、シャクナゲの密叢の切り開き。
 ここは、風が当たるところなのか、コメツガも矮樹なので、山頂から西側の展望が開けるが、蒸し暑い日の夕方とあって、ガスが巻きはじめ、遠望は得られなかった。

 足元にゴゼンタチバナの花やコバイケイソウが多くなると、ふたたび樹林帯となり、ひと登りで待望の皇海山についた。
 到着が4時半と、いい時間だったので、山頂には誰もいなかった。
 以前に来たときよりも、人工物が増えたような感じがした。

 ひといき入れたあとは、ゆるゆると、不動沢のコルに下るだけだった。
 いかにも夕立が来そうな空模様だったが、雨に遭わずに幕営することができたのは、ラッキーだった。

 夜中は、シカがすぐそばまで来て、さかんに吠え立てていたし、トラツグミもずっと鳴いていたので、なかなかにぎやかだった。
 トラツグミは、夜でも目が見えるんだろうか。

 ホトトギスが鳴き始めると、薄明るくなり、やがて、シジュウカラやウグイスも、目を覚ました。
 テントの外に出ると、深いガスがたちこめていたが、いかにも好天の兆しと思われた。
 食事をしていたら、鋸山のガスが晴れてき、思ったとおりとなった。

 コキンレイカやホツツジの咲く岩場を越えて、鋸山に立つと、よく晴れてはいたが、日光連山は、朝靄の中だった。
 そして、これから向かう袈裟丸連峰は、ずいぶん遠く感じられた。

 女山を越え、六林班峠への道は、一般コースだが、腰までのササの中を歩く。
 朝露が、靴やズボンをずぶぬれにしてしまった。

 六林班峠から法師岳にかけては、ササが深い上、踏みあとが消えているところも多く、うまく歩かないと、体力をロスしてしまう。
 目印は、随所につけられているが、必ずしもルートどおりにつけられているとは限らないので、目印より踏みあとに意識を集中した方がよい。

 向かって右よりにつけられている法師岳の登りあたりから、コメツガよりシラビソが多くなる。
 ツツドリ、メボソムシクイ、シジュウカラ、クロジ、ホトトギスなどを聞きながら登ると、あまり目立たない法師岳。
 このあたり、腰を下ろすと、たくさんのアブやブヨが集まってくるので、たいへんウザったい。

 奥袈裟、中袈裟は、いずれも樹林の中のピーク。
 アブが歓迎してくれるので、長居をしたくもないが、そろそろ疲れも出てきたので、いったん下ろした腰は、なかなか上がらない。

 後袈裟に登りつくと、一帯が、めちゃめちゃに伐採されていたので、驚いた。
 以前は、やはり樹林の中の静かなピークだったのに、シャクナゲやツツジ類の切り株と伐倒された幹や枝が散乱していた。
 山頂を破壊して、見晴らしをよくしたら登山者が喜ぶと思っているのか、それとも、そんなことをほんとうに登山者が望んでいるのか。
 お上のやることは、まことに理解しがたい。

 樹林がないせいか、ここにはアブはいなかったが、木陰がないので、暑くてしかたがなかった。
 腰を下ろしていると、乱舞していた赤トンボが、腕や頭にとまる。
 最高いくつとまるかなと思いながら、じっとしていたら、6つとまった。

 急降下して八反張に来ると、カモシカとにらめっこになった。
 ここは尾根が狭いので、身の軽い先方に道を譲ってもらうしかない。
 そばまで行くと、鼻をひくひくさせて不満そうだったが、餅ヶ瀬川源頭のガケをしなやかに駆け下りていった。

 前袈裟まで来ると、登山者もいて、ずいぶん里に近くなった気がする。
 食料はまだたくさんあるが、十分下山できる時間なので、この日のうちに下山することにした。

 小丸の避難小屋周辺は、ササの中に、ダケカンバの若木が生えた、気分の良いところ。
 いつか泊まってみたいところだ。
 水場は、豊富に出ていた。

 小丸の登りが、本日最後の急登。
 ここからは、ゆるく登降していく。

 二子山への分岐あたりから急降下になるが、ここからの下りはきつかった。
 自動車をデポしておいた弓の手登山口に着くと、充実感たっぷりだった。