山登りは船に乗って
−黒檜岳から社山−

【年月日】

1999年8月31日
【同行者】 単独
【タイム】

狸窪(7:30)−大尻(8:10-8:50)-(遊覧船)-
千手ヶ浜(9:30)−黒檜岳(11:30)−社山(1:20)
−阿世潟峠(1:55)−半月峠(2:30)−狸窪(3:00)

【地形図】 中禅寺湖

社山から奥白根

 狸窪手前の広いところに自動車を止め、めざす社山とは逆方向に歩き出す。
 木漏れ日の林道は、涼しくて、たいへん気持ちがよかった。

 遊覧船乗り場で、カウンターにいた人に「切符を売って下さい」というと、「切符はまだ売らない」とのご返事。
 腹ごしらえをしたら、眠くなったので、待合室の椅子でひとり、舟をこぐ。

 夏休みが終わるせいか、快晴の行楽日和なのに、遊覧船の乗客はひとりだけだった。
 船の窓から見ると、社山の尾根はそんなに高くないように見えた。

 千手ヶ浜で下船し、黒檜岳方面へ。
 千手堂あとを過ぎ、目印がたくさんつけてあるところが登山口だ。

 キャンパーの声が聞こえる千手ヶ浜から森にはいると、静寂境。
 この静けさが、日光の山のほんとの魅力だ。

 シャクナゲの中のいきなりの急登。
 ここは昨年、Nさんと下ってきた道だ。

 オツネンタケモドキ、シロイボカサタケ、キイボカサタケ、カワリハツ、ヒメベニテングタケ、クサハツ、ヤマイグチ。各種イグチなどをそこここに見る。
 キイボカサタケとシロイボカサタケはすこぶる多く、至るところに出ていた。
 昨年初めて見たオオウスムラサキフウセンタケも、今回はあちこちで見ることができた。

 ジェット戦闘機が、今日も、奥鬼怒の方向に向かって飛んでいた。
 小鳥の声がほとんど聞こえないのは、もう夏が終わったせいか。

 黒檜岳の最高点には行かず、社山への分岐を左に折れる。
 このあたり、赤テープや目印が、うるさいくらいつけられている。
 目印があまりに多いと、地図と首っ引きでかすかな踏みあとをかぎ出すというヤブ山の基本が、おろそかになってしまいがちだ。

 シラベの疎林から90度左折すると、足尾から奥日光にかけてよく見られる、ササとダケカンバの原。
 いつものように、鹿の声がこだましていた。
 目の下に備前楯山と足尾の町が望まれ、遠景には庚申山から鋸山への尾根が見えた。

 ここからはおおむね、ササ原の登降なので、展望はよかったが、尾根が屈曲するので、めざす社山はなかなか近くならなかった。

 ここのササ原をよく観察すると、あちこちに、かつて生えていた樹木の枯株がある。
 伐られたようすはないから、自然に枯死し、朽ちたものである。

 かつては、このあたりも、黒檜岳のような樹林に覆われていたのだろう。
 煙害によってコメツガやシラベが枯れたあとにササが蔓延し、そこにダケカンバが芽生えて、現在の風景ができたものと考えられた。
 ここが元の針葉樹林帯になるまでに、あと何世紀かかるだろう。

 社山の展望は今ひとつだったが、ここまで来てようやく皇海山が見えた。
 社山で一息入れ、急な下りで阿世潟峠。
 半月峠まで行くには、ピークをもうひとつ越えねばならない。

 最後の登りを終えて少し下ると、3年ぶりの半月峠
 足尾側の崩壊が、一段と進んだ感じがした。

 あとは、整備された登山道をゆっくり下るだけだった。