天気は朝からかすみのかかった小春日和。藤岡あたりから見た浅間山もかすみのなかに浮かんでいた。
北からの風が吹いていないので、初冬というより、晩秋の風情だ。
碓氷バイパスを渡って、小柏集落の下を通る車道を行く。
人家のわきに双体道祖神。ずいぶん風化が進んでいて、表情までは読みとれない。
人家はなくなっても、あいかわらず完全舗装の車道。
高速道路と林道工事によって、二万五千図にある登山道は、痕跡すらなし。
左に松井田町森林組合の立て札のある林道が分岐するが、ここは直進。
こんな調子でめざす山に登れるのかどうか、不安がよぎる。
案の定、車道はこれまた地形図に記載のない送電鉄塔のところでプッツン。
山急山より、はるか東の尾根上である。
やむなく、鉄塔の下から、かすかな踏みあとを拾いつつ、尾根を急登する。
右はスギの植林、左は二次林だ。
岩場がしだいに近くなるが、どれが三角点峰だかよくわからない。
岩と岩の間に土の詰まったところを見つけて、岩と立木にすがりながら這い登ったところは、三角点峰から南東に派生する支尾根の上だった。
ここまでの急登で疲れてしまったので、屏風のような岩が風よけになっているところで大休止。
地形図で見ると、西からなら何とか登れそうな感じなので、岩場の基部を巻いていく、うすい踏みあとを行った。
岩壁南をトラバース。
二ヶ所ほどガレを渡り、急登すると、赤い荷造りひもやテープのついた山急山南西尾根の登山道に出た。
尾根の上は、急傾斜だが明瞭な踏みあとがあり、岩場も少ない。
立木にすがれば危険なく登っていけるところだ。
頂稜直下に短い岩場があるが、問題なし。
しばらく行くと三角点だが、展望は今一つなので、さらに先の小ピークまで足をのばす。
思った通りのすばらしい展望のピークだった。
太陽がちょうど南にきていたので、南側が逆光だったのは残念だったが、裏妙義、谷急山、高岩、稲村山、矢ヶ崎山、一の字山、留夫山などが間近にそびえていた。
浅間山はため息の出るほど雄大だし、黒斑山から蛇骨岳にかけての稜線もよく見える。
帰りは、尾根を急降下するルート。
道形はやや不明だが、目印が多いので、迷うことはない。
しばらく下ったところに、「山神」と書かれた石碑。
「嘉永七丑年二月十七日 小柏村 佐藤武五良」と彫られていた。
どんどん下ると、真新しいヒノキの植林地。
このあたりに来ると、ほとんど踏みあとはないようなものだ。
うしろを振り返ると、さっき登った山急山が立派な岩壁を見せていた。
砂利を敷いた林道をどんどん下ると、森林組合の立て札のあるところで、もとの車道に出た。