吾野からの車道は相変わらず静かだ。沢に沿った道は底冷えがする。
西武鉄道が奉納した高山不動の灯篭の建つ分岐を八徳(やっとく)方面へ右にとる。
八徳は普通の集落耕地と違い、沢から離れた広い斜面に人家が点在する。
天気は快晴、南側斜面なだけにそれまでの寒さがうそのように暖かく、梅の花も満開で、桃源郷のようなところ。
沢をつめていかないので、峠道がどこにあるのかよくわからない。
畑にいた人に聞いたが、ずっと車道を行くのだと教えられた。
結局最後まで車道を行き、グリーンラインに出た。
傘杉峠はそこから少し西に行ったところだったが、吾野側の峠道は完全に消えていた。
峠で一息いれ、黒山にむかって下る。
北面になるため、雪がずいぶん多い。
途中で水を補給していると、鉄砲をかついだ二人づれとすれ違った。
そこからは、足元に点々と血が落ちており、気持ちが悪かった。
黒山三滝には30分足らずで着いた。
黒山のバス停から顔振峠への車道を少し行った平九郎自刃の地というところから左に入っていく林道を登ってみたが、すぐに消えてしまった。
荒れた沢をしばらくつめ、最後はヤブこぎで稜線に出る。
地形図をざっと見ると尾根をまっすぐ北上すればよさそうだったので、かすかな踏みあとを北へ歩く。
すると最後は尾根が尽き、前方に集落や採石地の見えるところにきてしまった。
そこで改めて地図を見ると、正しいルートは反対側の尾根だということがわかった。
戻るのは大変だが、しかたなく引き返し、一本杉峠から桂木に通じるルートまで戻った。
この場所は稜線に出たときに単純に北上せず、いったん南に登って東側の尾根に移らなければならなかったのである。
そこからも踏みあと程度の道だが、しだいに明瞭な道になってきた。
また、ときどき私立越生高校山岳部の立てた道標もあり、快調に歩いていける。
2時半ちょうどに尾根上の三角点を過ぎ、東にカーブする尾根を行くと、前方に桂木山がよく見える伐採地にきた。
そこからひと下りで桂木峠。
さらに少し登って下ると桂木の集落。
桂木から桂木観音にいく道もよくわからず、ヤブこぎで、ようやく大高取山への広い山道に出た。
1年ぶりの大高取山へはすぐで、道は山頂から稜線伝いに越生梅林に向かって続いている。
右手に見えるゴルフ場造成地では、一木一草も残さずに表土をはぎとっているところだった。
間組が立てた「発破作業中立入禁止」という立て札の「発」の字がマジックで消されておりその横に「環境」と書いてあり、「破」の字の下に「壊」と書き加えてあった。
市街地に出る直前の小ピークとの鞍部から左にゆっくり下っていくと、梅林近くの車道に出た。
ここの梅はまだちらほら咲いている程度だった。