梅雨明けの白峰三山

【年月日】

2019年7月28〜8月1日
【同行者】 全部で9人
【タイム】

7/29 広河原(10:29)−小休止(12:08-12:18)−大樺沢二俣(13:19-13:30)
   −白根御池(13:59)
7/30 白根御池(4:30)−小休止(5:37-5:47)−小太郎尾根(6:51-7:01)
   −肩ノ小屋(7:38-7:48)−北岳(8:14-8:35)−北岳山荘(9:40-9:55)
   −中白根(11:08-11:18)−間ノ岳(12:41-12:55)−小休止(13:34-13:40)−農鳥小屋(14:08)
7/31 農鳥小屋(5:00)−西農鳥岳(5:57-6:06)−農鳥岳(6:53-7:04)
   −大門沢下降点(7:43-7:53)−小休止(8:54-9:04)
   −小休止(9:45-9:54)−大門沢小屋(10:41)
8/01 大門沢小屋(4:29)−小休止(5:26-5:39)−小休止(7:12-7:22)−奈良田(8:42)

【地形図】 夜叉神峠、奈良田、鳳凰山、間ノ岳、仙丈ヶ岳 ルート地図(マウスホイールで拡大・縮小)

 このコースを歩いたのは4度目だった。

 今回は甲府から広河原まで、タクシーを使った。
 これで出発時刻を約1時間早くできたし、体力をかなり温存することができた。

1日目

タモギタケ(大きな写真)
ミヤマハナシノブ(大きな写真)

 昨年あたりは、広河原に来るとずいぶん涼しく感じたが、今回は標高1500メートルのここでも、暑く感じた。

 まずは大樺沢に沿う登山道を行く。
 カツラの樹林帯だが、やはり暑い。
 倒木にタモギタケが出ていた。

 大樺沢の水量は今まで見た中では最も多かったと思う。
 梅雨が開けたばかりだった上、あとでわかったのだが、今年は残雪が多く、雪代水が入って濁流になっていたのだった。

タカネグンナイフウロ(大きな写真)
白根御池の月(大きな写真)

 ここの登りはいつも暑くて苦しいのだが、今回はまた、ひどく暑く、頭に巻いたタオルがすぐずぶ濡れになった。
 1時間半ほど歩いて小休止。
 このあたりの草花はあまり多くなかった。

 二俣に近づき草原になると、ミヤマハナシノブやタカネグンナイフウロ・ミソガワソウ・ミヤマキンバイなど、このあたりらしい花が咲いて、雰囲気がよい。

 御池小屋に着いたのは14時ごろだったので、テント場はまだ閑散としており、小屋前の好スペースに張ることができた。
 ここはトイレ・水場・炊事スペースが近くて、最高だった。

 設営後しばしで遠雷が聞こえ始め、炊事を始めると一時はかなり強い雨になったが、屋根のある炊事スペースを使うことができたので、とても助かった。
 いつ寝たかは忘れたが、夜中にトイレに行ったときには満天の星空で、翌日の行動が楽しみになった。

2日目

 2日目はまず、草すべりの急登にとりつく。
 地形図では、標高差600メートルを一気に登るようになっているが、実際にはジグザグに登るので、さほど急なわけではない。
 とはいえ、いつもながら苦しい登りではあった。

 天気がよかったので、小太郎尾根では大展望が待っていてくれた。
 同行者にとっては、ここでの感動が最も大きかったのではなかろうか。
 富士山はもとより、早川尾根から鳳凰三山、奥秩父、浅間山、駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、中央アルプスが一望できた。

ヨツバシオガマ咲く(大きな写真)
シナノキンバイ咲く(大きな写真)

 ここまで来れば、北岳まで標高差350メートルを2ピッチで登ればよい。
 苦しくなくはないが、日本の代表的な山並や、至るところに乱れ咲く高山植物を眺めながら歩くのだから、文句はない。

 数えてみると、北岳に来たのはこれで7度目だ。
 相変わらず山頂は大賑わいだった。
 富士山の上部に雲が湧いて、まるで噴火したように見えた。
 富士山はいつ噴火してもおかしくない山なので、臨時ニュースがやってないか、真面目に考えてしまった。

 間ノ岳が目の高さに見えるのだが、ここから北岳山荘まで下らねばならない。
 ミヤマオダマキやシコタンソウなど、3000メートルの稜線でしか見ない花々や、ミヤマシオガマ、タカネシオガマなどそれよりやや標高の低いところでも見られる花々が咲く中、慎重に下って、北岳山荘。
 荷揚げのヘリが何度も飛んでくる。

 北岳山荘から間ノ岳へは絶望的に長い。
 なによりまず、中白根を越えなければならない。
 これがけっこう堪えるのである。
 イワヒバリが岩のてっぺんで、機嫌よくさえずっていた。

トコトコ北岳(大きな写真)
岩のてっぺんのイワヒバリ(大きな写真)

 すでに疲れが十分溜まっているので、ここはゆっくり行ってもらった。
 中白根から間ノ岳へは長いが見た目ほど大変ではない。
 間ノ岳の登りにかかるあたりで、すれ違った人から「ライチョウがいます」という情報をいただいてあったが、間ノ岳の山頂直下でライチョウの親子連れに遭遇した。
 貴重な生き物を見ることができてよかった。

 3年前に来たときに、農鳥小屋まで1ピッチで行ったら、自分も含めみんなひどく疲れたので、今回は途中に小休止を入れて2ピッチで行った。
 体感的には、おかげで前回来たときほど疲れずに農鳥小屋に着くことができた。

雪渓のそばでライチョウ(大きな写真)
南の巨峰たち(大きな写真)

 いつもドラム缶に腰掛けていたおじさんは見当たらず、女性の方が受付してくれた。
 14時過ぎになってしまったが、早く到着したほうだったので、今回もまたいい場所にテントを張ることができた。
 ここのトイレは相変わらずだったが、昔はみんなこうだったとはいえ、そろそろなんとかしたほうがよいと思う。
 ちなみに小屋の管理人室では、二匹の犬が、とてもエラそうに畳の上でふんぞり返っていた。

 水くみは辛かったが、この日の食事はほぼ自分が作ったので、みんなはいくらか、ラクができたのではなかろうか。
 夕方には雲が出てきたが、幸い、雨が降ることはなかった。

ハクサンイチゲ(大きな写真)
農鳥小屋の月(大きな写真)

3日目

 三日目の朝も快晴だった。
 この日は時間に余裕があるので起床を30分遅らせて、3時半にし、ご来光を見ようと思ったが、下界は曇っているのか、水平線に雲があって、あまりスッキリしたご来光ではなかった。

 西農鳥岳への登りは見た目ほど大変ではない。
 尾根近くなると、前方に塩見岳がそびえ、振り返れば間ノ岳の巨体がすごい。

チシマギキョウ咲く(大きな写真)
シナノキンバイ(大きな写真)

 農鳥岳へは、岩ゴロのトラバースとなる。
 急な登り下りもなく、西風が寒いくらいだった。

 登り着いた農鳥岳は今回最後の3000メートル峰で、珍しく賑わっていた。
 北岳・間ノ岳と、越えてきた高峰が目の前に見え、中景に早川尾根、遠景に八ヶ岳が見える。
 このメンバーと三年間の夏に歩いてきた山々が、期せずして、ひと目で見えていた。

 農鳥岳から下降点までは、ゆるい下りなので快調に歩けるが、稜線の涼しさはこのピッチが最後となる。
 下降点で小休止したときにはまだ、寒いほどの風が吹いていたが、ここからの暑さを考えるといくらか、うんざりする。

西農鳥岳(大きな写真)
イタヤカエデ(大きな写真)

 標高差1100メートルのこの下りは厳しい。

 大門沢小屋では、小屋裏の樹林帯でテントを張った。
 小屋前の高台のテント場は見晴らしはいいが、昼間は暑くて逃げ場がない。
 時間があるので、テントの中でウトウトしたが、まことに気持ちよかった。

 夕食時に韓国人パーティの人からレトルトキムチをいただいた。
 カレーも美味かったが、いただいたキムチも美味かった。
 日本でこういうのは売ってないが、こういうのもありだなと思った。

 この日は大門沢の沢音が子守唄だった。

4日目

 最終日の朝の点火が10分ほど遅れたので、少し心配したが、出発予定時刻には十分間に合った。
 みんな設営・撤収に慣れてきたのだろう。

ヒラタケ(大きな写真)
カツラ(大きな写真)

 暗いうちは自分が先頭で、かなりゆっくり目に行った。
 登山道が沢から離れるあたりから見ごたえのある広葉樹林となる。
 道ばたにはさっそく、ヒラタケが群生していた。

 小尾根にはウダイカンバやツガ、斜面にはブナ・ミズナラ・イタヤカエデ、沢状のところにはカツラの大木が生えていて、幽玄な雰囲気のところだ。
 大コモリ沢への急降下は、危なそうに見えるのだが、難なく通過したものの、大コモリ沢の渡渉にやや手こずった。
 靴をまったく濡らさずに渡るのは無理なので、こういうところでは、靴の中が濡れない程度の沈み石を見つけて渡れば、問題なく渡れることが多い。

 次の沢を渡ってしまえば、長い吊り橋を渡って、巨大堰堤の工事現場が近づく。
 ここは自分が知っている限りでも10年以上、土砂をかき混ぜては、堰堤を作っている。
 お金が有り余っているのならけっこうだが、将来の国民に借金を背負わせて巨大な無駄遣いをしてるのだから、暗澹たる思いがする。

 林道歩きはかなり退屈だが、やむを得ない。
 無事に奈良田バス停着。

 すでに到着した登山者でバスが満員になる状況だったのだが、係の人の判断で臨時のバスを出してもらえることになり、とてもありがたかった。
 しかも、予定の発車時刻より20分早く出るという、願ってもない話だった。
 温泉であまりゆっくり汗を流す余裕はなかったが、とりあえす衣類を着替えて少し待つだけでバスが来た。

 このバスが出たおかげで、下部温泉駅で乗れないはずだった電車に乗ることができ、帰秩時刻も予定より早くなった。