二日目
朝、起きてみると、天気は曇りだが、雨になりそうには見えなかった。
急傾斜の針葉樹林帯を登っていくと周囲が明るくなり、ダケカンバ林になる。
ガスでないので、カッコ良いオベリスクを見ることができそうだった。
何をやっているのか、ホシガラスがシラビソの梢でギャーギャー鳴いていた。
白ザレの斜面の登りになると、オベリスクが見えてからやや長い。
富士山が見えないかと思って振り返ると、観音岳の左肩、雲海の上に富士山が見えていた。
晴れてはいないが展望はよく、駒ヶ岳・仙丈ヶ岳が立派に見えた。
あとは、白峰三山がそこそこ見えれば言うことなしだった。
ハイマツのかぶさったところを少し登れば赤抜沢の頭で、北岳が目の前だった。
前日から天候を心配していたのだが、この風景を見ることができたので、今回の登山は上々だと言えた。
ここからは主稜線の登降となる。
タカネビランジがすこぶる多く、ピンクの花が満開だ。
ツマトリソウ・イワオウギ・ゴゼンタチバナ・ハクサンシャクナゲなどもよく咲いていた。
最後の急登になる観音岳の登りをこなせば、今回の最高点に立つ。
観音岳からは再び、雲海上の富士山が顔を出した。
薬師岳へはほぼ下りで、正面に富士山を見ながら行く。
下界から雲が湧いてきていたが、天気がここまでもってくれて、じつに助かった。
さて、ここから厳しい下りになる。
薬師岳小屋の関係者の方だろうか、山をよく知っておられる人が登ってきた。
ここの下りですれ違ったのは、この人だけだった。
お粗末な遭難が多くて困ると言っておられた。
ササ原のところで転ばないように言われたが、それがとても大事なアドバイスだとわかるまで、一時間もかからなかった。
ササに覆われたカラマツ林まで来ると、傾斜がゆるんで、一見すると歩きやすそうに見える。
林道を渡るところで小休止。
ここからは再び急坂となる。
下がぬかって滑りやすかったので、ここは慎重に下った。
登山口まで下ってホッとしたところで、いきなり驟雨がやってきた。