仙丈・甲斐駒
−北沢峠をベースに−

【年月日】

2013年8月1〜4日
【同行者】 全部で7名
【タイム】

8/1 北沢峠(11:25)−長衛小屋(11:40) 幕営
8/2 長衛小屋(4:25)−仙水峠(5:30-5:40)−駒津峰(6:50-7:00)−駒ヶ岳(8:16-8:45)
   −摩利支天(9:20-9:30−駒津峰(10:43-10:55)−休憩(11:35-11:45)
   −仙水峠(11:58-12:05)−長衛小屋(13:08) 幕営
8/3 長衛小屋(4:25)−尾根上(5:42-5:52)−大滝ノ頭(6:28-6:38)
   −馬の背ヒュッテ(6:45)−丹渓新道分岐(6:52)−仙丈小屋(7:20-7:30)
   −仙丈ヶ岳(7:50-8:12)−樹林帯(9:18-9:28)−馬ノ背分岐(9:32)−長衛小屋(10:32) 幕営
8/4 長衛小屋(6:48)−北沢峠バス停(6:55)

【地形図】 甲斐駒ヶ岳 仙丈ヶ岳 

 暑そうな日だったが、エアコンの効いた電車に乗って行ったので、ゆっくり読書ができた。

 甲府からタクシーに乗って行ったので、10時ころには広河原に着くことができた。
 次の北沢峠行きバスは12時30分発の予定だったが、インフォメーションセンターのあたりでウロウロしていると、係員の人が、11時過ぎに臨時便を出すと言ってくれた。

 臨時のバスに乗れたおかげで、11時半には北沢峠に着くことができた。
 駒仙小屋は再び、長衛小屋と改称していたが、盛夏の土曜日とあって、テント場はやはり大混雑だった。
 受付後、トイレや水場からは遠いが、ドロノキの木陰のまずまずの場所に設営することができた。

 この日は、のんびりと休むことができたがほどなく、ここには小さなハネカクシが大発生していて、食べ物や飲み物の中にところかまわず飛び込んでくるだけでなく、皮膚にとりついては噛みついてくるということがわかった。

長衛小屋(大きな写真)
仙水峠で振り返る(大きな写真)

 ハネカクシには、このテント場にいるあいだじゅう、悩まされることになった。
 自分はいつものようにツェルトを張ったが、もちろんツェルトの中はハネカクシだらけになった。

 大賑わいのテント場だけあって、煩いことこの上なかったが、疲れがどっと出てきたので、よく眠ることができた。
 この夜は、夜半までかなり暖かく、朝の寒さはさほどでもなかった。

 翌朝は、ほぼ予定通りに行動を開始した。

 沢を渡り返しながら樹林帯を行くと、こじんまりとした仙水小屋の前を通って、黒っぽい岩塊帯に出る。
 大きな石の上で、ホシガラスが仁王立ちしていた。

早川尾根(大きな写真)
鳳凰三山遠望(大きな写真)

 石の上を歩いていくので、やや慎重に登って行くと、仙水峠に着いた。
 東の方には地蔵岳が望まれるが、何かの間違いではないかと思うほど、ぱっとしない。
 ここから摩利支天も見えるのだが、朝は見ずに過ぎてしまった。

駒津峰から北岳(大きな写真)
駒津峰から槍・穂高(大きな写真)

 駒津峰へは、一本調子の登りである。
 最初はシラビソの樹林帯。
 やがてダケカンバが多くなり、ハイマツが混じってくると、森林限界を超える。

鳳凰三山(大きな写真)
仙丈ヶ岳(大きな写真)

 駒津峰は展望のよいピークだ。
 南・西・東側は遮るものがない。
 御嶽山が噴煙をあげているのも見えていた。

イワツメクサ(大きな写真)
北岳・塩見岳(大きな写真)

 ひと息入れて、目の前の駒ヶ岳に向かう。
 露岩の尾根をしばらく行くと、巻き道の分岐。
 ここは直登コースに入る。

 かこう岩の斜面をグイグイ登っていくので、疲れはするが爽快な登りだ。
 イワツメクサ・タカネツメクサ・タカネヒゴタイ・トウヤクリンドウなどを見ながら登って行くと、ぽっかりと駒ヶ岳の山頂に出た。

駒ヶ岳山頂の祠(大きな写真)
トウヤクリンドウ1(大きな写真)

 北アルプスは南端から北端まで、中央アルプスは全山、南アルプスは鳳凰三山から赤石岳あたりかと思われるところまで見えていた。
 都道府県でいえば、岐阜・長野・富山・静岡・山梨・埼玉・群馬・神奈川あたりが視野に入っていると思われ、じつに豪華な展望だった。

 山頂には、各種石造物が乱雑に倒されていた。
 これはいただけない。
 もっときちんと建てておくべきではないか。
 とりあえず、石造りのしっかりした祠に納められた不動様か何かの像に拝礼して、休んだ。

 帰りは、摩利支天に寄るコースをとった。
 白ザレの道をジグザグに下って行くと摩利支天の分岐だが、このジグザグ道は、摩利支天から望むとずいぶんな急斜面で、滑落したらオシマイというところだ。

 摩利支天へは鞍部から少し登るのだが、そこにはライチョウの親子が何かをついばんでいた。
 雛はもう、成鳥と同じ羽色で、母親から離れてもさほど慌てるようすもなかった。

 摩利支天のピークには、摩利支天のレリーフや各種石造物が並べられていた。
 数年前に思慮の足りない同行者が罰当たりなことをしたのを思い出したので、ここは賽銭をあげて念入りに拝礼した。

トウヤクリンドウ2(大きな写真)
摩利支天像(大きな写真)

 登りはよいペースだったので、下りに時間がかかっても、まずまずの時間にテント場を戻ることができた。

 ハネカクシどもは、暑い昼間は石の下に隠れているのだが、人の気配を感じると、「どれどれ」という感じで這い出してきて、そこらを飛び回ったり、腕に噛みついたりする。
 腰を下ろした途端に、数十匹のハネカクシに襲われるのだから、たまったものではない。

 翌朝は、4人で行動を開始した。

 峠を越え、伊那側に少し下って戸台からの登山道に入った。
 この道は、23年前の5月に戸台から登ってきた道だ。
 その時は、仙丈ヶ岳に登ろうとしていたのだが、夜中にテントが吹き倒されそうなほどの突風に見まわれ、疲労困憊して下山するはめになったのだった。

 ジグザグにしばらく下ると、大平山荘の前に出る。
 薮沢コースへは、ここから入っていく。

ミヤマシャジン(大きな写真)
ミヤマキンポウゲ(大きな写真)

 最初は樹林帯のトラバースが長い。
 傾斜がきつくなると、ちょっとした尾根の上に出る。
 小1時間歩いたので、ここで小休止。

薮沢の残雪(大きな写真)
クルマユリ(大きな写真)

 尾根を越えると、薮沢沿いのコースになり、谷が開けて、夏の花咲く道となる。
 谷には雪渓もいくらか残っていて、じっとしていると寒いくらいの涼しさだった。

 ミヤマキンポウゲ・タカネグンナイフウロ・クルマユリ・カラマツソウ・エゾシオガマ・ウサギギク・ヨツバシオガマ・ハクサンフウロ・センジュガンピ・クロクモソウ・シナノオトギリ・ミソガワソウなどを愛でながら大滝ノ頭分岐まで行って、また小休止。

ウサギギク(大きな写真)
薮沢カール(大きな写真)

 その先、馬ノ背ヒュッテ周辺は、鹿よけ用の柵が張り巡らされていて、人間は柵の中を歩いていくようになっていた。
 この柵は、つい最近になって設置されたものらしく、柵の中と外の植生はほとんど同じで、柵の中にも、マルバダケブキが大開花していた。

 馬ノ背の尾根に上がると、ハイマツ越しに仙丈小屋と山頂が見える。
 最高点まであと1時間程度と思われるが、相変わらず天気は快晴で、そよ風が涼しい。

チシマギキョウ(大きな写真)
仙丈ヶ岳から鋸岳(大きな写真)

 カールの底の仙丈小屋でまた休んだが、山頂まではすぐだった。
 チシマギキョウやミヤマキンバイなどを見ながらちょっとした火口のようなカールの縁を登って行くとすぐに仙丈ヶ岳の最高点に着いた。
 薮沢コースで登山者はほとんど見なかったが、小屋で泊まったらしき人々が山頂で憩っていた。

 ここもまた展望のよいピークで、前の日に登った駒ヶ岳や鋸岳が圧巻だった。
 駒ヶ岳より多少近いので、北岳や塩見岳方面も手にとるようだった。

仙丈ヶ岳から駒ヶ岳(大きな写真)
仙丈ヶ岳から富士山(大きな写真)

 帰りは、小仙丈尾根を下った。
 小仙丈ヶ岳へもいくらか登るが、ハイマツの中を緩やかに下っていくので、展望がよく、こちらも気持ちのよい尾根だった。

仙丈ヶ岳から鋸岳(大きな写真)
小仙丈カール(大きな写真)

 かなりいいペースで下り、馬ノ背分岐を過ぎた樹林帯で一度休んだだけで、あとは一気にテント場まで戻った。
 途中、アオチドリやコイチヨウランが咲いているのを見たが、アオチドリを見たのは初めてかもしれない。

アオチドリ(大きな写真)
コイチヨウラン(大きな写真)

 テント場に戻ったのはまだ10時半だったので、食事をしたあと、読書や昼寝に時間を使った。
 ツェルトで横になっていると、まわりにはハネカクシがウジャウジャ這っているのだが、こちらが動かずにいると、奴らも落ち着けるのか、噛みついたりしないでおとなしくしているのだった。

 この日は、ツェルトを撤収してテントに入れてもらった。
 午後になって、中学生くらいの大集団が近くにやってきたので騒がしかったが、夕方5時くらいには眠ってしまった。

 夕方、遠くで雷の音が聞こえたが、ほとんど降らずにすんだ。
 夜半になってから本降りの雨となったが、この夜はテント泊まりだったので、全く濡れずによく眠れた。

 下界は相変わらず、猛暑が続いているらしかった。
 涼しい北沢峠は名残惜しかったが、翌朝一番のバスで下山した。