1日目
暑い夏だったが、広河原でバスを降りると、多少は涼しいかなと思えた。
バス停近くで身支度を整え、つり橋を渡って登山道に入る。
重荷を背負っているので、汗が吹き出して、夏山同然の雰囲気だ。
カツラ大木帯を過ぎて、沢沿いのコースを淡々と登っていく。
そこそこ傾斜もあるのだが、やはりいくらか涼しいせいか、タオルを絞るほどの汗をかくわけではなかった。
クサボタン・キツリフネ・ソバナ・ミソガワソウ・ヤマハハコ・アカバナなどがいたるところに咲いていた。
右岸に渡り、1時間ほど歩いたところで小休止。
再び左岸に渡ると、草原が現われ、ミソガワソウ・ハクサンフウロ・タカネグンナイフウロ・ミヤマハナシノブ・イブキトラノオ・タカネナデシコなどが美しい。
2時間ほどで、花の群れ咲く二俣。
さらに白根御池までは、30分ほどだった。
2年前にここに来たのはちょうどお盆の時期だったから、ひどく混雑していたが、今回はそれほどでもなかった。
とはいえ、小屋前のベンチでは、おおぜいの登山者がたむろしており、北岳はにぎやかな山だということがよくわかった。
テントは、2年前と同じ場所に設営した。
二日目
ミヤマハナシノブ咲き残り(大きな写真)
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八本歯コルから間ノ岳
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夜中に用足しに起きたら、周囲は月明かりでたいへん明るく、外を歩くのに、ヘッドランプは不要だった。
たしか2時半ごろだが、二つのテントで明かりが灯っており、登攀具をガチャガチャといじくる音が聞こえた。
翌朝も、てきぱきと出発準備ができた。
普通に食事・撤収をすませたが、4時50分ごろには、ちゃんと出発できる状態になった。
予定通り、5時前にヘッドランプをつけて出発。
二俣まで来ると、明るくなり、背後の観音岳あたりの空がピンク色に染まり、やがて北岳バットレスが赤茶色に輝き始めて、青い空と白い月とのコントラストがなんとも言えず、みごとだった。
ミソガワソウやミヤマハナシノブのほかに、ミヤマキンポウゲ・カラマツソウ・ヨツバシオガマなども多くなってくる。
ザックが軽いので、快調に歩くことができ、約1時間で奥の二俣で、最初の小休止。
大樺沢二俣にあるエコトイレが、ずいぶん下に見えていた。
すぐ近くのように見える八本歯コルはなかなか低くならないが、積雪と雪崩によって下を向いたダケカンバ樹林帯のハシゴを登るようになると、さほど苦労しないでコルに立つことができた。
コルにはタカネビランジが咲き、2年ぶりに間じかに見る間ノ岳や農鳥岳をはじめ、駒ヶ岳や八ヶ岳などが望まれた。
予定よりずいぶん早くコルに着いたが、ここから先がまだ長いので、あまりゆっくりせず山頂への急登にかかる。
石のごろごろしたところを、ハシゴの助けを借りてどんどん登る。
山小屋から山頂を経由するとちょうどこのあたりにかかるのか、下山してくるパーティが多く、すれ違うのに時間が多少かかった。
トラバース道の分岐を過ぎると、北岳らしい草花が多くなってくる。
ここでは、タカネナデシコ・キタダケトリカブト・トウヤクリンドウ・チシマキギョウ・キンロバイなどを見た。
サンプクリンドウではないかと思われるリンドウも見たが、写真に撮らなかったので、自信がない。
北岳山荘からの道を合わせると、人通りがいちだんと多くなり、まるで盛期の尾瀬のような感じだった。
小広い山頂も、思わしい石にはみな、人が腰かけているようほどの賑(にぎ)わいだったが、3度目にして初めての、快晴の北岳は、なんといってもすばらしかった。
富士山・南・中央・北アルプス・八ヶ岳のほぼ全山が望まれ、秩父山塊や浅間山などもよく見えていた。
高山だけでなく、近隣の低山までよく見えるのが、この山の展望のすごいところだと思った。
しばし眺めを楽しんだのち、山頂北端で記念写真を撮り、草すべり方面に下る。
両俣への道を分け、肩ノ小屋をめざして下る。
肩ノ小屋の回りにおかれたドラム缶で、たくさんのイワヒバリが水浴びをしていた。
シコタンソウ咲く
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トウヤクリンドウ咲く
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小太郎の分岐で次の小休止。
雄大な風景を見ることができるのはここまでだ。
二俣に行く分岐あたりまでは、トリカブト・ウメバチソウなどがたくさん咲いていて、気持ちのよいところ。
樹林帯に入ると、マルバダケブキが多くなって、単調な下りとなる。
傾斜は急なものの、ジグザグに下っていくので、さほど足に堪(こた)えるというわけではない。
思ったよりあっけなく、1時間足らずで、御池のテント場に着いた。
稜線に比べて、ここまで下ると、さすがに暑かった。
予定より1時間半ほど早く御池に到着できた。
すいとんをどうするかという問題が残ったが、まずは広河原まで下らないと、始まらない。
しばし下山準備をして、早々に御池を出発した。
チシマギキョウ
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イワキキョウ
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下山道は、近道である、御池への直登コースを選んだ。
しばらくトラバース道を行くと、道標に「急登ここまで」と落書きしてあるところから、いきなり下りになる。
地形図で見てもひどい下りだが、草すべりと違って、尾根の上を忠実に下っていくから、下りそのものがとてもきつく、しかも歩程がなかなか、はかどらない。
イワヒバリの水浴び
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オオキノボリイグチ
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ここの下りではきのこもかなり出ていたが、おいしそうなのはなかったし、きのこ写真を撮っている場合ではなかったので、トラバース道でオオキノボリイグチを撮ったくらいだった。
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