お盆の白根三山

【年月日】

2008年8月13〜16日
【同行者】 多数
【タイム】

8/13 広河原(11:30)−大樺沢二俣(13:42)−白根御池(14:20)
8/14 白根御池(4:45)−尾根の上(6:30)−肩の小屋(7:17)
   −北岳(8:07-8:34)−北岳山荘(9:30)−中白根(10:28)
   −間ノ岳11:47)−農鳥小屋(13:20)
8/15 農鳥小屋(4:45)−西農鳥岳(5:34)−
   農鳥岳(6:27-7:26)−大門沢下降点(7:58)−大門沢小屋(10:25)
8/16 大門沢小屋(4:32)−広河内橋(7:17)−奈良田(7:41)

【地形図】 夜叉神峠、奈良田、鳳凰山、間ノ岳、仙丈ヶ岳
【トラックログ】 ルート地図

 若者たちと例年出かける今年の山歩きは白峰三山になった。
 北岳に行くのは、17年ぶりだった。

1日目

二俣付近に咲くミヤマハナシノブ(大きな写真)
御池小屋に咲くミソガワソウ

 久しぶりに訪れた広河原登山口の風景は、ほとんど記憶に残っていなかった。
 不安定な天候との予報だったが、やや雲はあるものの、真夏らしく蒸し暑い日だった。

 キャンプ場で水を補給して登高開始。
 この日は御池までだが、蒸し暑い日なので、コースは二俣経由とした。

 ツガ・ブナ・ダケカンバ・シオジ・カツラなどの中を緩やかに登っていく。
 カツラの大木が何本か、目を引いた。
 樹林帯の中なので、地味な花が多く、キツリフネ・ジャコウソウ・ソバナ・クサボタン・ヤマハハコ・シモツケソウ・オニシモツケ・タマガワホトトギス・レイジンソウ・ハンゴンソウ・センジュガンピ・アカバナなどを見る。
 レンゲショウマも数輪咲いていた。

 ひといき入れてさらに登っていくと、樹林帯が切れ、草原があらわれる。
 上部にはガスがかかっていたが、はるかに高く北岳も望まれた。
 クロクモソウ・アカバナ・ミソガワソウ・ハクサンフウロ・タカネグンナイフウロ・クガイソウ・アキノキリンソウ・ズダヤクシュ・ヤマトリカブト・シナノオトギリ・ヤナギラン・ミヤマハナシノブ・ミヤマクワガタ・ミヤマキンバイ・イブキトラノオ・ムカゴトラノオ・タカネナデシコ・イワオウギなどが至るところに咲く。

 約2時間で二俣着。
 ここまで来ると、登りから解放されるのでほっとする。

 御池へはやや戻り気味に平坦なトラバース道を行く。
 明るいダケカンバ林では、トモエシオガマ・マルバダケブキ・センジュガンピなどが咲き乱れ、樹林帯お花畑を作っていた。
 シラビソ林になると花は見えなくなり、代わってイタチタケ・オオキヌハダトマヤタケ・コガネニカワタケなどのきのこが見られた。

 御池のほとりのテント場は大にぎわいだった。
 いくら人気の北岳とはいえ、これはちょっと驚きだった。

2日目

御池上部でご来光
小太郎尾根合流点からの駒ヶ岳

 翌朝はヘッドランプをつけて行動開始。
 地形図を見ると、ぞっとするほどの急登なので、じっとがまんの登りだが、道の周囲はお花畑なので、案じたほど苦痛でない。

 ヤナギラン・ミヤマコゴメグサ・シナノオトギリ・クガイソウ・ハクサンフウロ・イワオウギ・ヤマハハコ・シモツケソウ・オニシモツケ・イブキトラノオ・センジュガンピなどが咲く。
 このあたりはヤナギランが特に多かった。

 お花畑を抜けていったん樹林帯に入ったあたりでご来光。
 ここで昨日から調子の悪かったメンバーがリタイア。
 この3年間、山行を共にしてきた人で、なおかつ今回が一緒に出かける最後の山行だったので、やむを得ないとはいえ、とても残念だった。

 ハイマツが出てきて森林限界を超えるとすぐに二俣からの直登ルートを合わせ、小太郎尾根に登り着く。
ミヤマコウゾリナ・ウサギギク・ウメバチソウ・オヤマリンドウ・タカネヒゴタイなどがちらほら咲いていた。

 仙丈ヶ岳はガスの中だったが、背後に鳳凰三山がそびえ、駒ヶ岳の頂稜が雲海の上につきだしていた。
 富士山もシルエットでよく見えていたが、肝心の北岳上部には強い西風が吹いており、速い速度でガスが流れていた。

 ここからはいかにも高山らしい雰囲気の急登となる。
 タカネツメクサ・イワツメクサを見るのは1年ぶり。
 タカネヒゴタイ・トウヤクリンドウ・チシマギキョウは至るところに咲いていた。

肩の小屋からの富士山
トウヤクリンドウが多かった(大きな写真)

 肩の小屋でひといき入れ、両俣小屋からの道を合わせるとイワキギョウやシコタンソウが多くなって、久しぶりの北岳山頂。
 前回来たときには雨だったので、ガスが巻いてはいるものの、今回の方が天気はよい。

 休んでいると、肩の小屋から登ってきた人が、前日、登山道から滑落した人を収容するためにヘリコプターが来るので気をつけるようにと言ってきた。
 まもなくヘリが飛んできたが、ガスが濃く、遺体の収容はできなかったようだった。

 作業の邪魔になってはいけないと思い、しばらく待機していたが、ヘリが山に近づけないようだったので、行動を再開。
 事故現場は、山頂から少し下った、鎖の張ってあるところの近くらしかった。

 八本歯からの道を合わせると、キンロバイ・ハクサンイチゲ・イワベンケイ・タカネヤハズハハコ・ヨツバシオガマ・ヤマガラシなど、なごりの花を見る。
 予定では北岳山荘で幕営するはずだったが、到着したのがまだ9時半だったので、農鳥小屋まで進むことにして、中白峰へと登り返す。
 時間が早いとはいえ、さすがに、中白峰は登りごたえがあった。

チシマギキョウは多い(大きな写真)
イワキキョウもちらほら

 中白峰から間ノ岳へは意外に遠いが、小ピークのほとんどを巻いていくので、さほど大変ではない。
 しかし山頂に近づくと尾根が広がるので、ガスが濃いと困るかも知れない。

 好展望を期待した間ノ岳の山頂は、残念ながらガスに包まれ、なにも見えなかった。
 この日の行動はかなりハードだったが、間ノ岳まで来ればあとは下るだけだ。
 農鳥小屋に着いたのは13時半と、ちょうどよい到着時刻だった。

 農鳥小屋は、周囲にいろいろなものがごちゃごちゃと置いてあって、昔の山小屋らしい雰囲気のところだった。

 設営後、水を汲みに行った。
 往復30分とのことだったが、たしかにかなり下らなければならない。
 しかし、水場への道はよく整備されており、道ばたには各種の花々が咲いているので、写真を撮りながら往復するのはちっとも苦ではなく、むしろ先を急がないぷん、ゆっくりと花を愛でることができた。

 ここではウサギギク・トモエシオガマ・エゾシオガマ・ミヤマコウゾリナ・クルマユリ・アキノキリンソウ・ネバリノギラン・ハクサンフウロ・タカネグンナイフウロ・ウメバチソウ・チシマギキョウ・ヤマトリカブトなどを見た。
 ここのトリカブトがキタダケトリカブトかどうかは、同定できなかった。

3日目

タカネピランジ(大きな写真)
朝の塩見岳(大きな写真)

 3000メートルの稜線での幕営だけに寒さが予想されたが、夜じゅう強風が吹きまくっていたわりに寒さは感じなかった。
 御池の朝は満天の星空だったのに、この日は星など一つも見えず、ちょっと残念な朝となった。

 雨は降っていなかったが、ガスと強風の中、水滴のつく眼鏡を拭いながらの登高となった。
 西農鳥まではひと登り。農鳥岳へは石のごろごろした中を縫うように歩く。

 このあたりでガスが次第に晴れて、塩見岳や荒川岳が見え始めた。
 そうなると、一気に元気が回復するのは当然である。  さほどよい状態ではなかったが、タカネビランジがたった一株、咲いていたのはうれしかった。

 農鳥岳に着いたのはまだ6時半。
 すっかり晴れて周囲の絶景が開けた上、下山するには惜しい時間だったので、ここで思わず大休止。

農鳥岳から望む北岳と間ノ岳(大きな写真)
悪沢岳・赤石岳・荒川中岳(大きな写真)

 昨日来、目にしてなかった間ノ岳は、厖大な山容だ。
 鋭角的な北岳の周囲では、再びヘリコプターが飛び回っていた。

 塩見岳のドームとそこに至るたおやかな尾根道は、魅力的だ。
 南にはひときわ高い三つのピーク。
 左から悪沢岳・赤石岳・荒川中岳だ。
 あれらの山を歩いたのも、8年前のことになってしまった。

 中央アルプスにかかった雲はとれていないので、一つ一つのピークは見分けがたいが、大きくガレているのは南駒ヶ岳だから、空木岳あたりまでは見えていたようだ。
 富士山・奥秩父・鳳凰三山はシルエット。
 何度か通った天子山地や櫛形山ははるか足元だ。
 丹沢や道志は遠くて判別できない。
 奥秩父は意外にはっきりしていて、金峰山や甲武信三山は指呼できる。
 八ヶ岳には雲がかかっていたが、赤岳上部だけが雲の上に顔を出していた。

 花の写真を撮っていたら、西側からちぎれたガスがやってきて、太陽を背にして立つと、ブロッケンができた。

農鳥岳で見たブロッケン
ミネズオウ(大きな写真)

 1時間ほども休んだのち、大門沢下降点へ。
 ここの下りには、ヨツバシオガマ・ミネズオウ・アオノツガザクラ・イワカガミ・チングルマなど、夏の早い時期の花が咲き残っていた。
 天気予報は、下界が猛暑日になると言っていたので、下るのは惜しいが、ごろごろしているのも何なので、下降点からの急下降をゆるゆると下る。

 ここの下りも農鳥小屋の水場道同様、ゴゼンタチバナ・タカネヤハズハハコ・ツマトリソウ・ハクサンイチゲ・ウサギギク・ヨツバシオガマなどが咲く、ちょっとしたお花畑になっている。
 タカネコウリンカを見たのは初めてだった。
 クモマベニヒカゲが何頭も飛んでいたが、小さなカメラではなかなか近づけなかった。

タカネコウリンカ(大きな写真)
クモマベニヒカゲ(大きな写真)

 最初はダケカンバ、ついでシラビソの樹林帯に沈み込んでいくと、見るものが少なくなるが、何かの倒木にタモギタケが群生しているのは珍しかった。

 沢音が聞こえてき、大門沢が見えてくると、傾斜は急だが、ちょっとした河原に出る。
 陽が射しているので明るく、シモツケソウ・タカネグンナイフウロ・クガイソウ・オトギリソウ・カワラナデシコ・イブキトラノオ・センジュガンピ・ミソガワソウ・ホタルブクロ・ヤマトリカブトなどが咲いており、大樺沢と似た風情になってきた。

 大門沢小屋に着いたのはまだ10時半だったが、奈良田までまだ3時間の下りを残していたので、予定通りここで幕営することに決めた。
 大門沢小屋のテント場は沢沿いの高台にあって、陽が出ているとちょっと暑いが、見晴らしのよい好ロケーションにあった。
 この日は日陰で昼寝をして、ゆっくり身体を休めた。

 夕方近くなると中高年登山者のテントが次々に設営され、テント場はほぼ満員になったので、さすがお盆だと感心した。

4日目

チチタケ群生
シナノナデシコ(大きな写真)

 さすがに標高1700メートルまで下ってくると、夜はやや寝苦しかったが、明け方は涼しくて気持ちよかった。
 奈良田発のバスに乗り遅れるといけないので、この日は、4時半過ぎに出発。

 怪しい橋で広河内を何度か渡り返しながら、どんどん下る。
 5時過ぎに明るくなってくると、周囲はツガ林で、奥秩父にちょっと似た雰囲気。
 キツツキのドラミングが響きわたり、アカハラのさえずりが心地よい。

 渓畔には、シオジやカツラが目立つようになり、ますますよい雰囲気の森となる。
 小尾根を乗っこす標高1616メートル地点で小休止。
 斜面はブナ、尾根の上はミズナラの大木が育っている。
 ここの下りで、大きなシナの木を見た。

 平坦なところを過ぎると大古森沢手前の急降下。
 ここでチチタケの大群生を見たが、パーティ行動のため採取はできなかった。

 奈良田第一発電所の取水口を過ぎると巨大な三段堰堤を見る。
 どうしてこのような工事が必要なのか、理解に苦しむところだ。

 林道に出てから小1時間ほど車道を歩いて、奈良田に着いたのは7時40分。
 ふだんは9時に開く奈良田の湯は、夏休みの間8時半から営業というありがたい表示。
 下界はひどく暑かったが、4日間の汗を流して、着衣をすっかり着替えると、じつにいい気分だった。