杖突峠から少し高遠側に下ったところから、林道が入っている。
この林道には、あちこちに石灯籠が設置されていて、怪しい絵と人生の教訓の記された看板も至るところに立っており、どうも怪しい雰囲気だ。
長谷部開発という会社が一帯を開発したらしい。
林道が分岐するT字路に自動車をおいて登山道に入る。
周囲はよく手の入ったカラマツ林だが、ところどころにモンゴル人が使うパオがある。
カラマツとパオは、あまりマッチしていない。
車道を渡り、ザゼンソウがちらほら咲く湿地帯を行くと、巨大な守屋山登山道の看板。
周囲にはトイレや避難小屋まで揃っており、雰囲気としてはいいところだが、茅葺きのあずまやとは凝りすぎだろう。
尾根にとりつき、ゆるやかに登っていく。
最初は霜柱がとけてぬかっているが、すぐにいい道になる。
まわりには、カラマツだけでなく、アカマツやミズナラ、ウリハダカエデやウダイカンバ・シラカンバなども見られた。
シジュウカラ、ヤマガラのさえずりやキツツキのドラミングが響いていた。
ほんのひと登りで東峰。
霞がかかってはいるものの、風もほとんどなく、日本アルプスのほとんどが望めるほどの大展望だ。
南アルプス側は逆光だが、甲斐駒・北岳・仙丈ヶ岳がとても立派だ。
南ア南部もすべて見えているが、やや遠すぎて個々の山は判別しがたい。
中央アルプスは全山、間近く見えている。
カメラの望遠レンズを通して、宝剣岳や千畳敷カールもはっきりわかる。
その右に御嶽山、さらに右を見ると乗鞍岳。
北アルプスも全山揃っている。
穂高連峰から白馬三山までが判別できる。
北側には霧ヶ峰・美ヶ原。
浅間・黒斑ものぞいている。
八ヶ岳もやや逆光気味ながら、全山が見えていた。
仙丈ヶ岳を望む
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梢でさえずるホオジロ
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にぎやかなパーティが先着していたので、休まず三角点峰をめざす。
この尾根もほぼカラマツ林なのだが、小鳥がとても多く、いま少し焦点距離の長いレンズが欲しくなる。
小さな避難小屋を見ると西峰の山頂だった。
こちらの展望も先ほどと同じ。
できればゆっくりしたかったが、さきほどのにぎやかなパーティが登ってきてまたもうるさくなったので、すぐに引き返した。
150ミリのレンズでシジュウカラやホオジロ、アカゲラなどをねらってみたが、やはりいま一つだった。
スズタケのヤブがガサガサしたので、カモシカかと思って近寄ってみると、ヤマドリがあわてて飛び立った。
ひととき静かになった東峰で少し休んで、ゆるゆると下山。
あとから大パーティが続々と登ってきていたので、この日の山頂はたいへんな騒ぎだっただろう。
アカゲラがいた
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アカエ沢源頭付近のカラマツ林
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ところで、東峰には守屋神社の奥宮がおかれており、祭神は「物部守屋大連大神」とあった。
物部守屋とは、6世紀末に厩戸皇子(聖徳太子)や蘇我氏との権力闘争に敗れた大豪族の首領である。
『日本書紀』は勝者によって潤色を施されたフィクションだが、行間には事実の一端もほの見える。
敗者をむち打ち、おとしめるのが勝者の語る歴史だから、物部守屋も拝仏を行った分からず屋ということになっている。
その物部守屋がどうして、高遠で神様になっているのだろうか。
それが不思議で古屋敷集落にある守屋神社の里宮にお参りに行ったが、由緒などは書かれていなかった。
帰宅前に、守屋山に関する展示がある八ヶ岳総合博物館にも行ってみたが、守屋神社については結局、わからずじまいだった。
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