ヤブと花の尾根
− 雪のとけた堂津岳 −

【年月日】

2019年6月2日
【同行者】 単独
【タイム】

観光センター(5:18)−堂津岳(10:21-10:56)−観光センター(14:51)

【地形図】 雨中 高妻山 ルート地図 (マウスホイールで拡大・縮小)

 観光センターの駐車場に着いたのは5時過ぎだった。
 思っていた時間に歩きだすことができてよかった。

 水蒸気が多く、快晴というわけではなかったが、とりあえず晴れていて、雨が降りそうなようすはなかった。
 2週間前には輝くような新緑だったが、山の緑は深みを増しており、蒸し暑くなりそうだった。

 登山口への近道に入ると、ラショウモンカズラが咲いていた。

ラショウモンカズラ(大きな写真)
ニリンソウ(大きな写真)

 先日と同じところから山に入る。
 雪はすっかり消えて、夏道通りに歩くことができる状態だった。

 ブナ林を抜けて斜面に取りつく。ここにも雪なし。

 ニリンソウの群落が素晴らしい。
 スミレサイシンも控えめに咲いていた。

 ニリンソウ地帯をすぎると、ツバメオモトとサンカヨウの群落が大開花していた。
 これほどのツバメオモト・サンカヨウを見たのは初めてだ。

ツバメオモト(大きな写真)
サンカヨウ(大きな写真)

 ひと登りで尾根の上。
 雪がないので、先日に比べてずいぶん早かった。

 尾根上の雪庇は完全に消えて、展望のないヤブ尾根ではあるが夏道ははっきりしていた。
 ネマガリタケが出ているらしく、タケノコ採りの人々がヤブに入っていた。

 ほぼずっと平坦な道なので、歩程は進んだ。
 道わきはやはりサンカヨウとツバメオモトだった。

 タケノコもちらほら見つかったが、道ばたに出ているのはだいたい硬そうだった。
 コシアブラは、開いているのが多かったが、ちょうどいいのもあった。

 基本的にはブナ林だが、株立ちになったシナの大木が2本。
 奥西山の手前には、サワグルミに似た葉の株立ちの大木があった。
 これはなんの樹だったのだろう。

コシアブラ(大きな写真)
キクザキイチゲ(大きな写真)

 雪が消えたばかりのところでは、ユキザサも出ていた。
 ユキザサの芽生えは、バイケイソウに似ているし、ホウチャクソウにもやや似ている。
 尾根の上には、ホウチャクソウも咲いていた。

 前回キクザキイチゲが咲いていたところの花はだめになっていたが、尾根上の雪解けあとではキクザキイチゲが咲き始めたところだった。
 雪ん子のようなサンカヨウの芽生えも多かった。

 奥西山で休んでもよかったのだが、大休止には時間が早かったので、さらに進んだ。

シナ巨木(大きな写真)
コイワカガミ(大きな写真)

 窪地状の、地形がやや複雑なところで、ルートミス。
 イージーなところなのに、雪のため道を見失い、思わず回れ右してしまった。
 さらに回れ右したことに気がつかず、来た道をしばらく戻ってから、ミスに気がついた。
 ここで、20分くらいタイムロスしたと思う。

 足元にイワカガミを見るようになると、行者にんにくを見るようになる。
 そろそろ疲れを感じ始めたころ、シラネアオイの群落に出会う。
 散った花もあったが、ほぼ満開の状態で、とても美しかった。

シラネアオイ(大きな写真)
シラネアオイ(大きな写真)

 ヤブ越しに堂津岳が見えてくるが、ずいぶん高く感じる。
 山頂付近はガスに包まれており、やや残念だが、花を見ることができただけでも十分だと思った。

 傾斜が出てきてしばらくで、岩稜帯になる。
 スッキリしているのはよいが、風があたって寒く、高い山を歩いているような感じだった。

 岩稜帯の先はネマガリタケと灌木の密ヤブとなるが、急な登りのところは問題ない。
 ムラサキヤシオが咲き、周囲の斜面にはまだ雪がべっとりとついていた。

 頂稜に至ると、踏みあとはそこそこはっきりしているものの、ヤブはかなりひどかった。
 とはいえ、雪庇の残骸が残ったところはその上を歩くことができるので、ずいぶん助かった。

ギフチョウ(大きな写真)
雪庇バイパス(大きな写真)

 山頂付近の雪の上を歩いていたら、話し声が聞こえたので声をかけてみると、そこに三角点があるとのことだった。
 もう少し北のピークのほうが高いように見えたが、疲れてもいたし、三角点付近は雪がなかったので、大休止にした。

 結局、歩き始めから5時間以上も休まずに来てしまった。

ムラサキヤシオ(大きな写真)
ヤマシャクヤク咲く(大きな写真)

 ごった煮ラーメンを食べてコーヒーを飲み、改めて周囲を眺めてみる。
 雲は多いが、まずまず絶景である。

 戸隠と雨飾山までの妙高連山はずいぶん近い。
 この山はそういう位置にあるのだろう。

雪倉岳・朝日岳(大きな写真)
鹿島槍・五龍・唐松(大きな写真)

 ありがたかったのは、後立山連峰が雲の上に出ていたことだ。
 朝日岳から鹿島槍までが、無傷でよく見えていた。

白馬岳(大きな写真)
ごった煮(大きな写真)

 帰りは来た道を戻ったが、それでも約4時間かかった。

土倉文殊堂(大きな写真)
鬼無里白髯神社(大きな写真)

 今回は、土倉文殊堂と鬼無里の白髯神社に寄り道した。

 木曽義仲の守護仏という伝承のある文殊菩薩を見ることはできなかったが、お堂は寛政年間の建物と記してあり、小さいながら美しかった。
 白髭神社は室町時代の建築と記され、これまた重厚な社殿だった。

 いずれも、ここで民の暮らしが営々と築かれていたことを物語る、立派な寺社だった。