燕岳から蝶ヶ岳

【年月日】

2006年8月7〜11日
【同行者】 多数
【タイム】

8/7 中房温泉幕営地で幕営
8/8 中房温泉幕営地(4:15)−合戦小屋(7:54-8:15)−燕山荘(9:20-9:35)
   −燕岳(10:01)−燕山荘(10:40-11:00)−為右衛門吊岩(12:12-12:25)
   −大天井岳幕営地(14:35)
8/9 大天井岳幕営地(5:27)−常念小屋(8:33-8:39)−常念岳
   (10:25-10:55)−蝶槍(15:00)−蝶ヶ岳幕営地(16:20)
8/10 蝶ヶ岳幕営地(5:45)−長塀山(6:57)−徳沢(10:37-11:30)
   −小梨平幕営地(12:57)
8/11 小梨平幕営地(6:10)−上高地バスターミナル(6:20)

【地形図】 槍ヶ岳、穂高岳、上高地 ルート地図

1日目 (中房温泉幕営地まで)

 この日は、中房温泉で幕営のみ。

2日目 (中房温泉から大天井岳)

 16年ぶりの合戦尾根。
 この前来たのが33歳の時だが、今は49歳。
 16年後にまた来るのは、まず無理だろう。

 合戦ノ頭までは我慢の登りだが、パーティのうち一人が早くもリタイア。
 数日前から体調が思わしくなかったらしい。

 ホタルブクロ、ヤマブキショウマ、シャクジョウソウ、オトギリソウ、ヨツバヒヨドリ、ツルリンドウなどが咲いてはいるものの、樹林帯なので見るべきものは少ない。
 とはいえ、ヒメコマツやコメツガの大木がときどき見られて、目を慰めてくれる。
 小鳥の声も少なく、ルリビタキやウグイスが歌っていた程度。

コマクサ咲く燕岳から望む槍ヶ岳
大天井岳幕営地のイワツメクサ

 合戦ノ頭の西瓜は、800円に値下がりしていた。
 花が見られるのはここから。

 ゴゼンタチバナ、モミジカラマツ、ムカゴトラノオ、ウサギギク、ミヤマキンポウゲ、ハクサンフウロ、ネバリノギラン、タテヤマリンドウ、エゾシオガマ、アオノツガザクラ、オオレイジンソウ、ミヤマクワガタ、ニッコウキスゲ、テガタチドリなどを愛でながら多少緩やかになった道を行く。

 台風の影響で雲は多いが、樹間から槍ヶ岳や大天井岳が望まれ、正面には燕山荘の巨大な建物がよく見える。

 燕山荘で少し休み、燕岳を空身でピストン。
 コマクサにはやや遅かったが、チシマギキョウは満開。
 ハクサンシャクナゲ、コケモモ、クルマユリなどもきれいに咲いており、残雪をまとった裏銀座の稜線が美しかった。

 大天井岳に向かって歩き出すと、相変わらずコマクサが多いが、タカネヤハズハハコ、ハクサンチドリ、ウメバチソウなども咲いている。
 このあたりのトウヤクリンドウはまだつぼみだったが、高嶺はすでに初秋の風情だった。

 大下りノ頭から下っていくと、灌木の林に入り、点在する草原にはオタカラコウ、ニッコウキスゲ、テガタチドリ、マルバダケブキ、ミヤマキンバイ、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、ハクサンチドリ、ムラサキタカネアオヤギソウ、コゴメグサ、ツマトリソウなどが咲き乱れていてすばらしい。

 切通岩の鎖場を下ると大天井岳への登り。
 このあたりでガスが濃くなったが、十分に余裕のある時間に大天荘に着けた。
 16年前にもここで幕営したのだが、そのときのことは全く記憶にない。

咲き残りのミヤマキンバイ
燕岳のチシマギキョウ

 テント場付近では、イワツメクサ、タカネツメクサ、ミヤマダイコンソウ、ミヤマキンバイなどがところどころに咲いていた。
 ラジオは台風接近の情報を伝えていたので、念入りにペグを打ち、万が一の荒天の際には大天荘に逃げ込む心づもりをして眠ったが、真夜中になっても雨音はおろか、風の音さえ聞こえなかったのは不思議だった。

3日目 (大天井岳幕営地〜蝶ヶ岳)

 紀伊半島あたりに上陸するかと思われた台風は、一転して東進し始め、多少雲がかかってはいるものの、無事に3日目の朝を迎えることができた。
 5時半前とやや遅い出発。

 東天井岳から横通岳へはおおむね、尾根の西側を巻いていく。
 相変わらずタカネツメクサ、イワツメクサの多い砕石帯を行くと、空は少しずつ晴れてき、槍・穂高が朝もやの中に浮かんできた。
 コゴメグサ、イワベンケイ、チシマギキョウ、コマクサも咲いていた。

大天井岳から見た朝の槍ヶ岳
雲の湧く稜線

 東天井から南へ下る廃道を見て過ぎると残雪があり、ちょっとしたお花畑となる。
 タカネヤハズハハコ、アオノツガザクラ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイなど。
 燕岳あたりでは果穂になっていたチングルマも、ここではちょうど満開だった。

 横通岳を過ぎると、常念乗越への長い下り。
 ハイマツ帯から灌木帯、そしてオオシラビソやコメツガの樹林帯へと沈み込んでいく。

 常念小屋前でひといき入れて、常念岳への登りにかかる。
 標高差は400メートルほどだが、重荷の堪(こた)える登りだ。
 ミヤマママコナの咲く砕石帯からとりつき、岩屑の堆積した上部まではじっと我慢。
 途中、小休止を入れて、祠の置かれた常念岳についたのは、10時半ごろだった。

登山道を歩くライチョウ
トウヤクリンドウ

 ここで大休止をとって、次の鞍部へ大下り。
 2512メートルのピークは上から見ると小さなコブだが、いざ登りにかかると急降下のあとだけに存外につらい。

 このピークを越えた小鞍部からはオオシラビソの樹林帯。
 ほのかにぬかるみの匂いが漂い、モミジカラマツ、ゴゼンタチバナ、ツマトリソウ、マイヅルソウなどがわずかに咲く、こんな雰囲気がやっぱり好みだ。

 樹林のピークを抜けると一転して、無数の花の咲く草原の中の下り。
 タカネグンナイフウロ、オタカラコウ、ハクサンチドリ、ミヤマコウゾリナ、カラマツソウ、ムラサキタカネアオヤギソウ、ミヤマシシウド、イブキトラノオ、ウサギギク、ムカゴトラノオ、ヨツバシオガマ、マルバダケブキ、エゾシオガマ、ヤマハハコ、テガタチドリ、トリカブト、コゴメグサなどが咲き乱れていた。

 鞍部は灌木林だが、雪解けの遅い場所と見えて、サンカヨウ、エンレイソウ、ベニバナイチゴなど、初夏の花が咲き残っていた。

 ここから蝶槍まで、たいした登りではないが、この日の行動は年少者にはかなりきつかった。
 疲れてしまった同行者がいたので、自分のザックを背負った上、その人のザックを肩に掛けて登ったので、足裏が痛くなった。

 蝶槍から蝶ヶ岳ヒュッテまでは平坦だが、けっこう長い。
 幕営地に着いたのは16時を回っていた。

大キレットに沈む夕陽
夕暮れの迫る常念岳

 設営を終え食事がすむと、越えてきた常念岳がほのかに浮かび上がり、夕陽が大キレットに沈んでいった。

4日目 (蝶ヶ岳幕営地〜小梨平幕営地)

 台風は完全に抜けてしまい、快晴の朝を迎えた。
 夏山で晴れた朝を迎えることほど、幸福なことはない。

 食事を終えてゆっくりとご来光を待つ。
 サンライズは、雲海のかなた、日光連山のやや右から。
 槍や穂高が、陰影を伴いながら赤く染まる。

蝶ヶ岳のご来光
早朝の槍ヶ岳

 北岳、富士山、八ヶ岳、浅間山、四阿山、遠く日光、戸隠、妙高などが雲の中から頭を出していた。
 若い同行者たちに、この美しい光景を見せてやれてよかった。

 徳本峠まで縦走を続ける予定だったが、体調やや不良の同行者が出たため、この日のうちに長塀山経由で上高地へ下山と決定。

 テント場のすぐ上の尾根に上がると、槍・穂高はもちろん、御岳や乗鞍岳も意外に近いのだった。

 長塀尾根はたいへん緩やかな下り出し。

 最初は小草原で、ウサギギク、イワカガミ、タカネヤハズハハコ、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、ミツバオウレン、エゾシオガマ、ハクサンフウロ、クルマユリ、ムカゴトラノオ、テガタチドリ、ヨツバシオガマ、ツマトリソウ、ハクサンイチゲ、カラマツソウ、ハクサンイチゲ、アオノツガザクラなどが咲いていた。
 ことにハクサンイチゲの群落は、じつにみごとだった。

 しばし下って妖精の池。
 ここも花が多く、テガタチドリはここが一番だった。

 花が見られるのはこのあたりまでで、この先はルリビタキのさえずる樹林帯の下り。

 長塀山を越えると急傾斜なジグザグ道となり、コメツガなどの樹林帯となる。
 ベニテングタケやウスタケなど、キノコ類が目に入りだし、富士山のきのこの状態が気になる。

 ネズコやヒノキの急降下になると、徳沢のキャンプ場はすぐだった。
 ここまでにぎやかとは言え、登山者にしか会わなかったが、徳沢から先は観光客の世界。
 ときおり、大きなザックを背負ったパーティとすれ違う。

 この日は、小梨平のキャンプ場で幕営。
 付近に咲いていたのは、メタカラコウ、ソバナ、クサボタン、クガイソウ、ゲンノショウコ、キツリフネなど。
 さすがに下界に近づいた感があった。

 こちらのテント場では、巨大なテントを持ち込んで騒ぐキャンパーの嬌声が、遅くまで聞こえていた。

5日目 (小梨平幕営地〜上高地バスターミナル)

 小梨平からバスターミナルまでは、10分少々の歩き。
 登り出しに比べてザックがずいぶん軽くなった。

 バスターミナル付近にあったコインシャワーが見あたらなかったので、しばらく探したら、インフォメーションセンターの中にあるのだった。
 朝が早いので、沢渡行きのバスはずいぶん空いていた。