楢ノ木尾根を駆け抜ける
−天目温泉から湯ノ沢峠・雁ヶ腹摺山−
【年月日】 |
2014年5月24日 |
【同行者】 |
単独 |
【タイム】 |
天目温泉(9:34)−湯ノ沢峠(11:12)−白岩ヶ丸(11:40-11:58)−黒岳(12:21)
−大峠(13:01)−雁ヶ腹摺山(13:46)−大樺ノ頭(14:13-14:42)
−栂尾根ノ頭(15:30)−泣坂ノ頭(15:58)−大峰(16:12)−西沢ノ頭(16:23)
−東沢ノ頭(16:45)−上和田登山口(17:12)−駐車スペース(17:34)
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【地形図】 |
七保、大菩薩峠 笹子 ルート地図
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このコースは、一泊で行くのが普通だと思う。
その場合の泊まり場は、湯ノ沢峠だと一日目が短いので、大峠あたりになるだろう。
しかし一日で駆け抜けること自体は、不可能ではない。
ただ、山行として忙しすぎるのが難点だと思う。
猿橋駅行きの終バスは18時17分だが、それではちょっと遅すぎる。
上和田16時05分のバスに乗れれば公共交通で行けるのだが、ちょっと自信がない。
で、下山口近くに自動車をデポし、始発のバスで猿橋に出て、甲斐大和まで電車で行き、栄和交通のハイキングバスで登山口の天目温泉に至るという手段を使った。
これだと、18時くらいまでに下山できれば大丈夫だ。
ただし、行動予定はギリギリなので、この日のルートミスは許されなかった。
甲斐大和から出る栄和交通のバスは、相変わらず大混雑で、9時10分発バスが出るころにはすでに長蛇の列ができていた。
臨時バスが2台出て、つごう3台で出発したが、それでも乗り切れない人が数人いた。
バスは同時に出なければならないようで、出発が10分ほど遅れたのだが、先を急いでいたので、気になった。
天目温泉で降りたのは、自分だけだった。
ここから登山道入口までの林道歩きは、覚悟してはいたが、飽き飽きした。
それでも出たばかりのコゴミが見つかったので、歩いて損はなかった。
登山者らしきマイカーやタクシーが何台か、追い越していった。
作業道に入ると、足元にシロバナノヘビイチゴがたくさん咲く。
初夏の山らしくなってきた。
沢沿いのここを雪のない時期に登るのは初めてだが、草花が多くて楽しめる。
ニリンソウに似た花はツルシロカネソウ。
ニリンソウはすでに散ってしまったあとだろうか。
ワチガイソウやクリンユキフデはさほど多くない。
チチブシロカネソウがたくさん花を咲かせているのに会えたのは、幸運だった。
イワボタン咲く水場で水を補給し、避難小屋に上がってみるといつかテントを張った駐車場は、たくさんの車で満車状態だった。
思わしい休憩スペースがないので休まず白岩ヶ丸に向かう。
ザレ場のコースは閉鎖されていて、尾根の西側をトラバースしてから急登するコースが、新しく作られていた。
新道は、刈られたスズタケの切り株が残っていて、まだ多少、歩きづらかった。
フデリンドウは、ここの登りでしか見なかった。
振り返ると、南アルプス全山や富士山などの大展望が得られた。
水蒸気の多めな日だったが、これだけ見えるのは幸運だと思った。
ミツバツチグリが点々と咲く白岩ヶ丸まで登って最初の大休止。
見晴らしのよいところで、こごみラーメンを食べた。
ここから少し、伸びやかな草原帯を行く。
このような風景が、大菩薩連嶺のもう一つの顔だ。
天気もよいので、できればここでゆっくりしたいところだ。
バイケイソウの群生したところを過ぎ、ひと登りで黒岳。
大峠の分岐は、ピークよりやや北にある。
ここからは急降下の連続だ。
周囲はシラビソ林で、ぬかるみの甘い匂いも漂っているのだが、ひどく乾燥した感じが気になる。
とはいえ、ミヤマカタバミ・バイカオウレンなど、春の奥山の足元を華やかにしてくれる花々に、ここで会うことができた。
雁ヶ腹摺山が次第に高くなってき、自動車で一杯の大峠には13時に着いた。
大峠からの下りが順調だったので、想定していた時刻より30分ほど早い。
とはいえ、通常なら下山予定時刻になって行程の約半分しか来ていないので、休まずに雁ヶ腹摺山に向かう。
雁ヶ腹摺山へは南東へトラバース気味に登り、最後にまっすぐ山頂へ向かう。
この日の登りでは最もきついところだ。
水場でたっぷりの水を補給し、ゆっくり登っていく。
ミズナラやダケカンバの大木があったり、いろんな形の大石が見られて、面白いところだが、疲れもたまっていて、なかなかきつかった。
急登にかかると、キバナノコマノツメが何株か、目に入った。
たくさんの自動車が大峠にとまっていたのだが、山頂には誰もおらず、静かだった。
午後を大きく回っていたせいもあって、富士山は雲の中に隠れてしまっていた。
そうなると、見るものに乏しいので、ここでも休まず大樺ノ頭方面へ向かう。
雁ヶ腹摺山を越えてしまえば、きびしい登りはなくなり、下り案配の尾根になるので、気も楽になった。
まずは、大樺ノ頭をめざす。
急降下して登り返すのだが、登りきってから三角点まで遠いと感じたのは、疲れのせいかもしれない。
シオジの森への道標の立つ三角点で、この日二度目の大休止。
ここでは、こごみチャーハンをいただいた。
けっこうな急降下でここを下り、少し登ると唐松立で、送電鉄塔が建っている。
すっかり曇ってしまったので展望もないのだが、灌木も伸びていたので、ここはあまり展望はないかも知れない。
周囲に密生していたスズタケは枯れ尽くしており、かつてのひどいヤブが想像されたが、歩くにはラクで助かった。
次の目標である栂尾根ノ頭は山名表示もなく通過。
上部ではまだつぼみだったが、このあたりから、ミツバツツジが満開で、とてもみごとだった。
泣坂ノ頭前後に来ると、それに加えて、シロヤシオがまたみごとに咲いていて、足を止めずにはいられない。
満開のツツジというのは、じつにすごい。
古い地形図に「大峰」とある泣坂ノ頭の登りは大したことないのだが、けっこう堪えた。
しかし、荷も軽くなり、先も見えてきたので、快調に登れた。
大峰のピークからは、右に折れて急降下する。
雑木林を下っていくと西沢ノ頭で、周囲が刈り払われている。
このピークで左の尾根に入ると、灌木の密生したヤブ尾根となるが、登山道ははっきりしていた。
ヒノキの植えられた東沢ノ頭は、上和田下山道と尾越山方面との分岐になっていた。
ここから上和田へは、急な尾根をまっすぐに下っていく。
どこも痛くなりはしなかったが、ロングコースの疲れもあったので、転ばないよう慎重に下る。
下っている途中、上和田集落で鳴る、午後5時の時報が聞こえた。
上和田の下山口は、想定していないところにあった。
ここは田んぼもないし、広大な畑もないのに、とても大きな集落だった。
道なりに車道を歩いていくと、自動車をおいたところとは反対方向の、集落の下手に出てしまった。
車に戻ろうと歩いていくと、上和田小学校のわきを通る。
この小学校は閉鎖されたばかりのようで、校舎の窓に「思い出をありがとう」と大書してあった。
そういうのを見ると、泣きたくなる。
十分明るい時間に自動車のところに戻れた。
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