踏みあと薄いロングコース
− 乾徳山から黒金山 −

【年月日】

2010年9月26日
【同行者】 単独
【タイム】

徳和(7:17)−銀晶水(8:17)−錦晶水(8:57)−高原ヒュッテ(9:08)
−月見岩(9:30)−乾徳山(10:16)−水のタル(10:29)
−笠盛山(11:01-11:07)−黒金山(11:43)−牛首のタル(12:03)
−黒金山登山道入口(13:34)−西沢渓谷入口バス停(14:48)

【地形図】 金峰山 雁坂峠 川浦 ルート地図

 黒金山は、ずいぶん以前から山行リストに入っていた。
 ルートとしては、西沢渓谷からのピストンでは芸がなさ過ぎるので、乾徳山経由で黒金山にいたり、大ダオから徳和に降りるか、西沢渓谷に降りるかが考えられるが、できれば周回ルートでなく、縦走ルートで歩きたいと考えた。
 西沢渓谷から徳和へはバス路線があるので、早立ちすれば、それは十分可能だと思われた。

 ところが、いきなり出遅れて、徳和に着いたときには、7時を回っていた。
 自動車を、登山道入口よりずっと手前にとめたので、最初から長い車道歩きとなった。
 ここに来るのは20年ぶりなので、登山口のようすなど、すっかり忘れてしまっていた。
 ただでさえ出発が遅れているのに、林道歩きでルートをミスしたので、登山道入口に着いたのは、8時前だった。

 最初はスギの植林地。
 林道を渡るとカラマツの植林地となる。
 周囲を見回しても、きのこはまったくなし。

 銀晶水を過ぎると小尾根に乗り、傾斜が出てくる。
 周囲はアカマツ混じりの雑木林になる。
 下地もよいのだが、相変わらず地上はさびしい限りだ。

 どんどん登っていくと、錦晶水の水場。
 この日は、ここをあてにして、カラのペットボトルを持ってきた。
 天気はよいが、かなり涼しいので、ここで1リットルを補給。

ウメバチソウ
ヤマラッキョウはまだつぼみ

 その先は傾斜がゆるんで、シラカンバの疎林となり、国師ヶ原に着いた。
 20年前には営業小屋だった高原ヒュッテに立ち寄ってみたが、はずれて立てかけた状態のドアのガラスは割れ、内部も荒れた感じで、歳月を感じさせた。

 国師ヶ原に戻り、正面ルートから乾徳山をめざす。
 カンバ林を登っていくと、ススキの穂の揺れるカヤトの斜面に出る。
 かつてここは、お花畑だったような気がするが、花はほとんど咲いておらず、わずかにウメバチソウやアザミが咲いていたのみで、ヤマラッキョウはまだつぼみだった。
 おそらくみんな、シカが食ってしまったのだろう。

 久々に富士山が見えたが、下半分は雲の中だった。
 月見岩で大平からの道を合わせ、扇平から黒木の迷路のような道を登っていく。

ヤマトリカブト
イワインチン華麗(大きな写真)

 頂稜に出ると露岩が多くなり、数ヶ所の鎖場を越える。
 それぞれの露岩は展望がよく、富士山や南アルプスが見えているのだが、ここは休まず山頂をめざした。

 山頂にはおおぜいのハイカーが休んでおり、腰を下ろす場所もなかったが、展望は絶佳だった。
 富士山はもちろんだが、雲が多いながらも、南アルプスも甲斐駒ヶ岳から仙丈ヶ岳、白根三山が望まれ、大菩薩の全山、奥秩父もほぼ全山が見えていた。
 前回この山に来たときにはガスだったので、この展望を目にしたのは初めてだった。

乾徳山から富士山(大きな写真)
乾徳山から黒金山

 あまりににぎわっていたので、ここも休まずに写真だけ撮って通過。
 ハシゴを2つ下ってしばらくで、水のタル。
 直進すると、踏みあとが一気に薄くなる。

乾徳山から甲武信三山
乾徳山から金峰山

 最初は露岩もあるが、下っていくとシラビソやコメツガの樹林帯で、雰囲気がよい。
 基本的には尾根をはずさなければいいのだが、木につけられた2種類のプレートがよい目印になるので、迷うところはない。
 ここからはドクツルタケやオオムラサキフウセンタケなど、針葉樹林らしいきのこも見られたが、先を急いでいたせいもあって、いいきのこは見なかった。

 ずっと休まず歩いてきたので、笠盛山で小休止。
 笠盛山は、展望皆無の、地味なピークだ。

 平坦なところをしばらく行き、傾斜が出てくると黒金山が近づいたということだ。
 露岩に立てば、乾徳山がえらく鋭角的なピークをそばだたせているのが見える。
 富士山方面は、すっかり雲に覆われてしまった。

黒金山手前から乾徳山
オオウスムラサキフウセンタケ

 古い道標がたくさん立ったところが大ダオとの分岐。
 大ダオに進めば、国師ヶ岳への魅力的な破線路もある。
 黒金山の山頂は、そのすぐ上だった。

 雲がずいぶん広がってきてはいたが、北側はまだ晴れていて、奥秩父の大展望が広がる。
 なかでも目の前に広がる、甲武信ヶ岳から国師ヶ岳への稜線は圧巻だった。

 お昼前までに黒金山に着けなければ大ダオ周回コースと考えていたのだが、徳和行きのバスに十分間に合うと思われる時間だったので、西沢渓谷方面に下山開始。
 黒木の急降下の途中に、ヌメリササタケやクリフウセンタケ類似きのこ、ハナイグチなどが散見されたので、いくらか拾っていく。

ヌメリササタケ
ハナイグチ

 下りきった牛首のタルからは、青笹林道への道標が立っていて好展望のはずだが、南の空は高曇ってしまったため、乾徳山がようやく見える程度だった。
 ここからピークを3つ越えれば西沢渓谷への下降点となる。
 この尾根にも、展望のよい露岩が何ヶ所かあって、黒金山や甲武信方面がまだ、見えていた。
 途中に、山梨県が立てた「ミズナラ原生林」の看板があったが、周辺には1本のミズナラも生えておらず、奇異に感じた。

 芹沢集落へ下る長い尾根の分岐には柵がしてあり、道は廃道らしかった。
 ここから西沢渓谷へは、急下降となり、登りでは使いたくない感じ。
 ただ、ほぼずっと、シャクナゲのトンネル状態の道なので、5月の連休ごろにはピンクの花が美しいだろう。

シャクナゲのトンネル
西沢軌道あと

 途中には、ネズコ・コメツガ・オノオレカンバなども生えていて、真ノ沢林道を下っているような錯覚を覚えたりもする。
 渓音が近づくと、思ったより早く、軌道あとの黒金山登山道入口に着いた。

 ここから、渓沿いを下る道と中腹の軌道あとを下る道に分かれる。
 ここは、渓へ下った。

チシオタケ
ダイモンジソウ(大きな写真)

 木の階段を下りきるとすぐに五段滝で、すばらしい美瀑である。
 岩ではダイモンジソウが満開で、とても風情がよい。
 奥秩父の核心部に遊歩道が作られているようなところを、どんどん下る。

五段滝
三重滝(大きな写真)

 観光客も多いが、この遊歩道は意外と登り下りもあり、飛び石などでは、足元も注意が必要だ。
 1時間ほどで国道に出られるかと思っていたのだが、見ごたえのある滝が次々に現れるので、ずいぶん時間がかかった。
 それでも、バスが来る少し前にバス停に着くことができたので、オーライだった。