ヒメシャガの道
−菱ヶ岳から五頭山−

【年月日】

2015年5月24日
【同行者】 単独
【タイム】

菱ヶ岳駐車場(10:00)−菱ヶ岳(12:06-12:27)−五頭山三角点(13:57)
−避難小屋(14:26)−長助清水(14:51)−菱ヶ岳駐車場(15:35)

【地形図】 出湯 ルート地図

 御神楽岳に行った時の記録を見ると、「自宅を出たのは午前3時だったが、登山口に着いたのは9時頃」とあるが、今回は、5時前に自宅を出て登山口10時前だった。
 もちろん途中休憩を挟んではいるが、下越の山ということになると、そのくらいの移動時間は覚悟しなければならないようだ。

ヒメシャガ(大きな写真)
ヒメシャガ(大きな写真)

 それでも登山口10時なら、この季節であれば、危なくなる時刻でもない。
 広い駐車場にはたくさんの自動車がすでにとまっていたが、ゆっくり支度をして、山にとりついた。

 とはいえ、登山口の標高は200メートルほどだから、ピークまでの標高差は800メートル近い。
 気温も高く、体力の消耗が予想されたので、意識的にゆっくり行った。

 ジグザグに尾根を登って行くのだが、早春の風情はすでになく、雰囲気としては真夏の暑さだった。
 アマドコロやヒメシャガ、チゴユリなどが咲き残っていた。

アマドコロ(大きな写真)
イワカガミ(大きな写真)

 村杉温泉への廃道が分岐するやや手前から傾斜がゆるみ、ときおり下りを交えた平坦な道となる。
 山没霊供養塔という碑の立つ屈曲点を過ぎても、道はゆるやかに高度を上げていく。
 このあたりから中腹にかけて、若ブナ林の中で、ヒメシャガがよく咲いていた。

イワカガミ(大きな写真)
イワカガミ(大きな写真)

 登山口付近ではヤブサメの声が聞こえたが、エゾハルゼミの鳴き声に混じって、ヒガラ・キビタキ・ツツドリ・コルリなどのさえずりも目立ってきた。
 南側に廃林道が近づくが、すぐに見えなくなった。

 ちょっとした展望地に登り着くが、まわりを尾根で囲まれているので遠望がきくわけではない。
 少し下ったところが杉端という地点で、夏道と冬道の分岐点になっている。
 冬道は尾根を直登し、夏道はここから尾根の南を笹清水までトラバースして尾根に急登する。
 この日は夏道を行った。

ショウジョウバカマ(大きな写真)
オオサワハコベ(大きな写真)

 笹清水は流水で、融雪期であるせいか、よく流れていた。
 やや急登するがすぐにまた、平坦な道に戻る。

 ここまで厳しい登りが全くなかったのだが、次の急登は早くも、菱ヶ岳直下である。
 賑やかに登っておられた団体さんを抜かせてもらって、菱ヶ岳に着く。

 数名のハイカーが憩っており、腰を下ろす場所はあいていたが、陽射しが強い日だったので、日陰のスペースはふさがっていた。
 じつに、日陰が恋しいほど暑い日だった。

イワウチワ(大きな写真)
イワウチワ(大きな写真)

 飲まず食わず休まず登ってきたので、ここで大休止。
 ザックをいくらか軽くして、ジュウイチ・センダイムシクイ・ウグイスなどを聞きながら、五頭山主峰へ向かう。

 菱ヶ岳のピークには小さなアブが飛び回っており、かなりうるさかったのだが、主稜線の登山道には、見たことがないほどたくさんの雪虫が飛んでいて、下手をすると呼吸の際に吸い込んでしまうのではないかと思うほどだった。

 基本的に若ブナの尾根だが、ときおり展望が開ける。
 菅名岳や下田の山も見えるが、霞がかかっていて、ぱっとしない。
 南側に見えている山の山座同定もする気にならず、目はどうしても北側の冠雪した飯豊連峰に向いてしまう。

 飯豊は、ため息をつかずにいられない、ぼう大な山脈なのだった。

チゴユリ(大きな写真)
飯豊連峰遠望(大きな写真)

 五頭山へは、距離はそこそこ長いが、登り下りが少なく歩程ははかどる。

 尾根上のタムシバはまだ見ることができたし、足元にはイワカガミやイワウチワ・ミヤマカタバミ・オオサワハコベなどが咲いていた。
 雪は、登山道わきにいくらか残っている程度で、尾根上にはほとんどなかった。

 1リットルのペットボトルを飲み尽くしたので、下山路が出合う三叉路手前の龍神清水で水を補給。
 ここも流水だが、ちょっとした小滝に十分流れていた。

飯豊とタムシバ大きな写真)
タムシバ(大きな写真)

 三叉路から主峰を往復したのち、下山にかかる。

 展望のよい最初のピークからは、歩いてきた菱ヶ岳の尾根がよく見える。
 基本的にブナ林だが、いつか皆伐されたらしく、育っているのはほぼ全て若ブナだから、山の姿は痩せている。

奇ブナ大きな写真)
一ノ岳から菱ヶ岳(大きな写真)

 主峰周辺には特に、細い幹をたくさん伸ばした貧弱なブナが多く見られた。
 中には上のように捻くれた奇ブナもあったが、これなどはどうして、こんな姿になってしまったのだろう。

ホオノキの花大きな写真)
宝珠温泉あかまつ荘(大きな写真)

 避難小屋を過ぎると、どこまでも下りが続いて、きついところだ。
 長助清水は湧き水で、この日見た三ヶ所の中では最も美味しい水だった。

 下山してからどんぐりの森というキャンプ場の中で少し道に迷った。
 沢沿いでは、ホオノキが大きな花を咲かせていた。

 ひどく汗をかいたので登山口近くの村杉温泉の共同浴場に寄ったが、駐車スペースがふさがっていたのであきらめ、宝珠温泉あかまつ荘で汗を流した。