会津の霧来沢から御神楽岳をめざしたのは21年前だった。
その時には、ちょっと時間切れで、本名御神楽までしか行けず、それ以来ずっと、宿題を背負ったような感じが残っていた。
フリーな日がとれたので、時期的には今ひとつだが、ここで宿題を果たそうと思い、早起きをして出かけてみた。
自宅を出たのは午前3時だったが、登山口に着いたのは9時頃と、えらく時間がかかった。
御神楽岳は、それほど遠い山なのである。
登山口には自動車が3台とバイクが1台とまっており、先客の皆さんはとっくに出かけたあとだった。
登山道はしばらくの間、セト沢に沿って登っていく。
周囲はブナを中心とする二次林で、傾斜は緩いが、沢沿いなのに蒸し暑い日だった。
傾斜が出てくると、ブナやトチの大木も出てくるが驚くほど大きな木は見当たらなかった。
樹林帯の中なので、花はほとんどなく、黙々と登るしかないのだが、体じゅうから汗が吹き出して、軽い頭痛がするほどだった。
ブナ林
| スギ奇木
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沢から離れるとさらに急な登りとなり、我慢して登っているとちょうど中間点の水場に着いた。
ほとんど尾根の上というべき場所にしっかりした水流のあるこの水場は貴重だ。
季節にもよるが、この日のコンディションでは、この水場がなければとても登れなかったと思う。
細流を渡ると、この日の正念場となる急登にかかる。
ほぼ一本調子の登りなのだが、ちょっと和むところもある。
大森山への尾根と合流する地点はやや展望が開けて、ミヤマママコナの花なども見えるようになった。
意外な目の保養になったのは、この急登の途中で見た、杉の巨木だった。
1本は、途中から幹が折れたばかりのようで、折れた幹にはまだ、葉がついていた。
もう1本は、目の位置あたりで幹が2本に分かれていた。
これらの杉を見たのは尾根の上なので、杉が自生しそうな場所ではなかった。
かと言って、植えられたとしても数百年以前のことになる。
植えられたとすれば、中世末か遅くとも近世のはじめである。
この山塊は会津と越後の境界なのだが、御神楽岳という山名からしても、また前衛峰の雨乞峰という山名も、山岳宗教に関係する気配を醸している。
巨木を見ると、頂稜までもう少しだ。
ホツツジやノリウツギの咲く尾根に出た時には、ほっとした。
丸い雨乞峰の向こうに意外に鋭い御神楽岳が見えるが、もうさほど遠くはない。
雨乞峰に立つと、ヤセ尾根の蝉ヶ平コースを合わせる。
一枚岩の山体がものすごい。
少し下って急登したところが、御神楽岳三角点だった。
晴れてはいるが、雲も多く、粟ヶ岳など近くの山はよく見えたが、遠望はきかなかった。
ともかく、これ以上登らずにすむというだけでほっとした。
これほど疲れたのは久しぶりだった。
食欲もないが、なにか食べないといけないと思い、パンをひとつ食べて下山にかかる。
ここまでひたすら登ってきたので、帰りは花や樹木の写真を撮りながら、のんびり行った。
途中、黒い雲が広がり、いくらか雨がぱらついたが、すぐにやんだ。
下りは至極快調で、いい時間に下山できたが、帰りのドライブが長くなるので、あまり道草ができなかったのは残念だった。
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