イワウチワの尾根
−越後白山−

【年月日】

2011年5月21日
【同行者】 単独
【タイム】

駐車場(8:54)−山頂避難小屋(11:07-11:12)−白山(11:15)
−天狗の腰掛け(11:53)−慈光寺(13:04)−駐車場(13:20)

【地形図】 越後白山 ルート地図

慈光寺の杉並木1(大きな写真)
慈光寺の杉並木2(大きな写真)

 燕三条インターを降りると、ほとんどの田んぼで田植えが終わっていたので、ちょっと焦る気持ちもあった。
 まだ、畝刈りさえ、すませていなかったからだが、秩父の田植え期には、まだ早い。

 慈光寺の駐車場に着いたとたんに、雨が降ってきた。
 予報にはなかった雨なので、本降りになるとは思えなかったが、ヒルが出そうで、いい気はしない。

 トイレのある駐車場で支度をして、合羽を着て歩き始める。
 たち並ぶ巨杉が、圧倒的だ。

 慈光寺の参道なのだが、登山者の中には、お寺の前まで自動車で乗りつける人もいる。
 舗装もされてない道なので、自動車の通行は遠慮したほうがよい。

三十三観音
鳴滝不動堂

 六地蔵や三十三観音など、由緒ありげな石造物を見ながら慈光寺へ。
 沢べりでは、シャガが花盛りだった。

 慈光寺の由緒は慈光寺サイトに詳しい。
 壮大な伽藍を持つ立派な禅寺なのだが、武州の慈光寺と同じく、かつては密教系の寺院だったらしい。
 地図で調べると、村松市街地に日枝神社もそろっている。

慈光寺本堂
ガマズミの花

 お寺の先からは林道になる。
 ここですれ違った山菜採りの人が、今日は山ヒルが多いというので、ちょっと穏やかでなくなってきた。
 だが、雨もやんだし、道は乾いていたので、なるべく濡れたところを歩かないよう気をつけて登ることにした。

 一合目の札があるところが尾根のとりつきで、いきなり急登である。
 越後平野周縁の山は、登山口の標高がとても低いせいか、とにかく急登なのだが、尾根登りで高度を稼ぐことはできる。

 足元に気をつけて登る。
 周囲は雪国特有のヤフ雑木。
 ガマズミの花が満開だった。

ムラサキヤシオ(大きな写真)
イワカガミ(大きな写真)

 展望もなく、急な登りだが、ユキツバキ・オオカメノキ・タムシバなどに混じって、ムラサキヤシオの濃ピンクが鮮やかだ。
 ブナ壮年林を過ぎると、白いイカリソウをあちこちに見るが、花は終わりかけだ。

 ちょっと傷んだイワウチワを数輪見ると、イワカガミの群生地となる。
 越後の山だからオオイワカガミだ。

 まるでお祭りのように賑やかなこの花を見ると、越後の山に来た実感がある。
 濃ピンク・淡ピンクから白に近いものまで、オオイワカガミには、花色のバリエーションが多い。

 高度を上げていくと、イワカガミは蕾の状態になり、イワウチワの群生が多くなる。
 イワウチワの淡ピンクは、得も言われぬ上品さだ。

ユキツバキ
ショウジョウバカマ

 八合目あたりから、残雪があらわれた。
 雪解けあとには、ショウジョウバカマやナガハシスミレが乱れ咲く。
 ここまで来れば、ヒルはおるまいと安心する。

 ひと頑張りで、白山避難小屋前の広場。
 曇ってはいるが、粟ヶ岳は見えていた。
 そういえば、粟ヶ岳に登った去年も、展望皆無だった。

 小屋の中では、数人のハイカーがくつろいでいた。
 二階建てて、かなり広い。
 休みなく登ってきたので、ここで小休止。

タムシバ1
マンサク(大きな写真)

 小屋を出るとすぐに、残雪に覆われた鯖池で、そこはもう、山頂の一角なのだった。
 薄いもやがかかった向こうに、新潟平野が望まれた。

 帰りは、田村線を下る。
 雪に覆われて登山道の見えない尾根をしばらく東に歩く。

 マンサクがまだ、咲いたばかりでみずみずしい。
 下降点からは一気の急下降となる。

イワウチワ1(大きな写真)
イワウチワ2(大きな写真)

 尾根線に比べて、こちらのコースの方が残雪が多く、イワウチワも多かったが、イワカガミは全く見なかった。
 イワウチワの中には、ずいぶんピンクの濃い個体もいくつかあった。

壮年ブナの林
若ブナの林

天狗の腰掛け1(大きな写真)
天狗の腰掛け2(大きな写真)

 転げそうな急坂を下って行くと、若ブナ林に巨木がそびえており、「天狗の腰掛」という表示板がおいてあった。
 秋田で言う、「あがりこ」ブナの樹形をしている。
 雪上で伐採され、その後萌芽した幹が巨大化したものだという。
 とすると、伐採されたのが既に何百年か以前ということになる。

 奇木といえば奇木だが、とても迫力あるブナだった。

タムシバ2(大きな写真)
オオバクロモジ

 その先しばらくは傾斜がゆるみ、登下降しながら高度を下げる。
 残雪は相変わらず多く、雪解けあとにはミヤマカタバミやキクザキイチゲが咲き残っていた。

ミヤマカタバミ
キクザキイチゲ

 五合目から植林された杉やアカマツが混じるようになり、再び急な下りになると一気に慈光寺の一角に立つ、天狗堂の裏に下り着いた。
 「慈戒大力生神祇」と染め抜かれた幟旗がたくさん立っており、拝殿には、「天狗祀殿」と彫られた刻字が掲げられていた。
 幔幕には天狗の使う団扇の絵が書いてあり、鳥居にも天狗の面がくっつけてあった。

天狗堂
庭園化された渓流

 慈光寺では、この天狗は僧だったとしているが、これは、密教系寺院だった頃の名残ではなかろうか。
 本堂を参拝し、さらに鳴滝不動にお参りする。
 不動信仰もまた、密教の特徴である。

 下山後になってからずいぶん晴れてきて、気温も急上昇してきた。