ヒメサユリの尾根
−粟ヶ岳−

【年月日】

2010年6月20日
【同行者】 単独
【タイム】

第二貯水池(8:25)−砥沢ヒュッテ(10:20-10:28)−権ノ神山分岐(11:04)
−粟ヶ岳(11:20-11:26)−第二貯水池(13:21)

【地形図】 粟ヶ岳 ルート地図

ツルアリドオシ(大きな写真)
ヤマツツジ

 粟ヶ岳を初めて望んだのは、16年前の、春の守門岳からだと思う。
 大白川から残雪たっぷりの尾根を登りつめて山頂に至ったら、北側に立派な山が見え、あれが粟ヶ岳だと思った。
 その後、山行リストには入っていたが、登る機会は得られず、意を決して出かけた2007年7月にも、同行者がバテたために、途中で引き返すはめになった。
 高山ではないが、粟ヶ岳は手強い山なのである。

 梅雨前線は本州南岸に停滞して、本来ならばもっとすっきり晴れそうなものだが、関越トンネルを抜けても、雲がたれこめていた。
 三条や加茂市からも、山は全く見えず、展望は期待できそうになかったが、天気予報は、午前中いっぱいは降らないだろうと言っていたので、躊躇なく登山口に向かった。

 水源地の駐車場から少し先の第二貯水池まで行ってみると、駐車スペースがあいていたので、こちらに自動車をとめて、登山の準備。
 粟ヶ岳を含め、この山塊に山ヒルがいるのは承知していた。
 3年前に来たときに、権ノ神山に登ろうとした人が、無数の山ヒルに吸血されて血だらけになったという話をしていたからだ。

 そこで、ズボンの裾にヤマビルファイターをスプレーし、さらにロングスパッツをつけてその上にもヤマビルファイターをかけた。
 ヤブの中に入るなどすれば間違いなく吸血されるが、登山道にはヒルはさほど出てこないというから、これでとりあえずは安心と考えた。

ヤマボウシ(大きな写真)
ミドリヒョウモン(大きな写真)

 金城山もそうだったが、標高が低くても、越後の山は、登りがきつい。
 登山口の標高が低い上、急傾斜の尾根をまっすぐ登っていくコースが多いからだと思う。

 ここもまた、貯水池を渡ると、すぐに支尾根にとりつき、高度をぐんぐん上げていく。
 足元に咲いているのはツルアリドオシ。小さな白花だから、多くの登山者はこの花に気づきもしない。

 最初の休憩適地は、岳山寺の分岐。
 ベンチがあって、数人のハイカーが休んでいた。
 岳山寺コースは刈払いされておらず、ちょっと行きたくない感じだった。

ダイミョウセセリが多い(大きな写真)
ブナは少ない

 この前来た時もそうだったが、ダイミョウセセリがたくさん飛び回っていた。
 コース下部では、キマダラヒカゲやミドリヒョウモンがよく飛んでいた。
 尾根上では、ヤマツツジが盛りを超えたところだったが、上部では見ごろの株もあった。

 コースは全般にやせ尾根が多く、潅木がほとんどで、ブナもほとんど見なかった。
 展望がないので、大栃平のベンチでも休まず通過。

 ヤマボウシがいくつか、鮮やかに咲いていたが、樹の花としては、ウラジロヨウラクやサラサドウダンなど、ツツジの仲間が多かった。

 ところで、この日は風がほとんどなく、ひどく蒸し暑かった。
 流れる汗がひどくて、タオルがあっという間にずぶ濡れになって、かなり不快だった。
 数ヶ所のハシゴ場・鎖場を交えた急登をひたすら我慢して登っていると、鎖場の手前でようやく、数輪のヒメサユリに出会うことができた。

 水場の分岐では、水の状況を見てみたかったが、山ヒルがいそうなので、パス。
 さらに登って、砥沢ヒュッテ前で、一息入れた。

 ひどく暑いので、小屋の中に入りはしなかったが、外からのぞくと中は小奇麗に整理された、いい小屋だった。
 休んでいたときに一瞬、ガスが切れて、北峰と中央峰が見えた。

ウラジロヨウラク(大きな写真)
サラサドウダンツツジ(大きな写真)

 小屋からしばらくは緩傾斜のやせ尾根だが、すぐに急登になる。
 尾根の北側はおおむね、急崖で、ガレたところも多いが、ヒメサユリはほとんど北側に咲いていた。
 昨年も守門岳でヒメサユリを見たが、ここの方が遥かに花数が多く、当にヒメサユリロードといった感じだから、北峰への急登も、さほど気にならない。

 北峰には、七頭という道標があって、権ノ神山との分岐になっている。
 権ノ神山への道も、見たところ、しっかり刈られているのだが、もし途中からヤブになると恐ろしいので、立ち入る気にはならなかった。

 北峰からは緩傾斜の尾根道となる。
 天気がよくてそよ風でも吹いていれば、気分のいいところだろう。
 展望はないが、ヒメサユリの群落はそこここにあるし、ツマトリソウ・マイヅルソウ・オオバキスミレなども咲いているので、まずは快適だ。

ヒメサユリ(大きな写真)
ヒメサユリ(大きな写真)

 登り始めから3時間近くかかってようやく、粟ヶ岳の山頂。
 五百川コースからもハイカーが登ってくる。
 まわりにさえぎるものは何もないが、ガスのため、展望は残念ながら皆無。
 守門岳や御神楽岳などを望んでみたかった。

 午後から天気は下り坂とのことだったので、山頂に長居はせず、すぐに下山にかかった。

ツマトリソウ(大きな写真)
オオバキスミレ(大きな写真)

 帰りはのんびり写真でも撮りながらと思ったが、天気も山ヒルも気になるので、登山口まで休まず下った。

 身体が汗だくになったので、山ヒルの点検も兼ねて、登山口近くの"加茂 美人の湯"に行った。
 たぶん大丈夫だと思っていたのだが、かかとに一ヶ所、不審な出血が見られた。
 痛みがなく、出血がなかなか止まらないので、山ヒルのしわざだ。
 下山後、サンダルにはきかえて、岳山寺コースをのぞきに行ったときにやられたものと思われる。
 最後に油断して、馬鹿を見た。

 加茂市まで戻ってから、加茂山公園を散策した。
 爺杉を見に行ったのだが、どれが爺杉かわからなかったものの、杉の大木が林立する青海神社境内は、一見の価値があった。