1日目
富士見高原ゴルフ場の駐車場に自動車をとめ、登山口を探した。
すぐに小さな道標に従って、北へ登っていく車道をしばらく行くと、登山口が見つかった。
道沿いには、キバナノヤマオダマキやカイジンドウなどがそこここに咲いていた。
カラマツ林を緩やかに登っていくと、林道を渡る。
まだ山道らしくはならないが、タガソデソウやヤマハタザオなど、小さな花が咲いていた。
再び林道に出てしばらく行くと、不動清水に着く。
広場の下にはトイレが設置されていて、クリンソウが咲いており、モミの大木の根元から勢いよく水が出ていた。
ここから本格的な登りとなる。
しばらくはカラマツ林で、次第にコメツガやシラビソなどの針葉樹林になる。
林床の明るいところには、イチヤクソウ・ササバギンラン・ヒメムヨウランなどが咲いていた。
ササバギンランがたくさん咲いている様子は、なかなか見応えがあった。
傾斜が出てきても何度か林道を渡る。
足元にはシロバナノヘビイチゴが多くなり、上部では、マイヅルソウやキバナノコマノツメが多い。
雨に濡れたレンゲツツジの花も、鮮やかだ。
単独幕営山行は久しぶりだが、いつもの業務山行より、荷は軽いような気がする。
朝からほとんど何も食べないで登ってきたので、腹が減ったが、西岳まで頑張った。
森林限界が近いづくと、コケモモの花がほころびているのが目に入る。
西岳の山頂には三々五々ハイカーが憩っていたが、混雑しているというほどではなかった。
南側が広く開けているのだが、ガスのため展望はなし。
編笠山と青年小屋は見えていた。
しばし休んで、青年小屋への尾根道を行く。
ミヤマハンショウズルが咲き、コイワカガミ・ミツバオウレンも多い。
やせ尾根でないので、針葉樹林は苔むしていて、いい感じである。
鞍部付近から二万五千図とは、ルートがかなり異なっているが、地図の破線路より、登り下りが少ない。
尾根上からトラバースになってしばらくで、乙女の水。
梅雨どきのせいか、ずいぶん豪快に吹き出していた。
4年ぶりの青年小屋へは、お昼前に着くことができた。
かなり広く整地したところにテントを張ったが、この時間にはまだ、比較的すいていた。
小屋前では、クロユリがちょうど盛りと咲いていた。
米研ぎと水汲み(1.5L)をすませたのち、権現岳を往復する時間もあったが、天候が今ひとつなので、しばらく昼寝して過ごした。
近くのテントで宴会が始まり、いささか騒々しくなったが、昼間の宴会であれば文句を言う筋合いでない。
むしろ、明るい間にエネルギーを使い果たして、夕方には沈没してくれれば、いうことなしだと思った。
小雨がぱらつく時間もあったが、本降りにはならなかった。
雨予報だったので、ツェルトでなくテントにして正解だった。
このところ、ツェルトで寝ていたので、テントがずいぶん広く感じた。
日のもっとも長い季節なのだが、いつものならいで、夕方になる前に食事の準備をした。
今回持ってきた炊事用具は、トランギア・メスティンの1人用とチタンのフライパンだった。
メスティンは、蓋と本体の切断部分のバリさえ気にしなければ、使い勝手は悪くない。
いくらか気を使えば、焦がすことなくご飯が炊ける。
ラーメンも、一人分であれば、これで作ることができる。
夕食
| テントの中
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キッコーマンの「うちのごはん」シリーズは、「山で使えそうだ」と思って買ってあったので、今回は、鶏肉のペミカンと、「鶏竜田の甘辛香味だれ」を持ってきた。 この粉末をふりかけてフライパンで焼けば、「鶏竜田」ができるというやつだが、肉がフライパンにこびり付くだけで、竜田揚げにはならなかった。
ちなみに、別のメーカーの「焼くだけで唐揚げができる粉」というのも、一度使ってみたことがあるが、同様に粉がこびりついて、使えない。
「鶏竜田の甘辛香味だれ」は、粉を捨てて、肉だけ焦げないように油で焼き、たれをかけて食べた方がいいと思う。
前日に、缶酎ハイを2本買ってあったのだが、持ってくるのを忘れた。
しかしここは、小屋のテント場なので、「真澄ワンカップ」を買うことができたから、問題なし。
これで、あとは眠るだけ状態となったが、遅くなって到着した3人ほどの社会人パーティの宴会が、夕方から、テントのすぐ横で始まった。
明るいうちであれば、甘受すべきとも思うが、この人びとのクダラナイおしゃべりは、深夜9時半過ぎまで続いた。
暗くなった直後に、昼間に騒いでいた人びとが目を覚まし、再び飲み始めたようなので、いささか絶望的になったが、こちらは比較的早く、寝に就いてくれた。
青年小屋のテント場はかなり広いのだが、日が落ちるころにはかなり埋まっていた。
それほど人気の高い山ではないので、おそらく、登山人口が増えているのだろう。
青年小屋から編笠山への道は、小屋前から中腹まで、目印を見ながら岩塊上を行く。
ラジオは、翌日の好天を伝えていたので、ご来光も期待されたが、ヘッドランプでの岩塊歩きは安全でない。
そこで、明るくなってから行動を開始しようと思って、3時半過ぎに動き始めた。
2日目
空は快晴でなく、高く曇っていたが、まずまず好天で、紅く染まりゆく空に、ギボシの双耳峰や権現岳のシルエットが美しかった。
富士山も、前日よりはよく見えていた。
ここから見ると、富士山頂稜部の左側がやや傾いて見える。
ハイマツ帯に入れば、ピークはまもなくだ。
やはり岩塊帯の編笠山は2度目だが、前回来たときには何も見えないガスの中だった。
今回は、雲海の上に奥秩父・大菩薩・富士山・南アルプス・中央アルプス・御嶽山・乗鞍岳・北アルプス全山が見渡せた。
八ヶ岳は、権現岳に隠されて、蓼科山と阿弥陀岳・赤岳しか見えなかった。
この展望は、すばらしかった。
編笠山の南面も岩塊の斜面である。
下りなので、正面の南アルプスを見ながら、慎重に下る。
森林限界に入るところで、名残の景色を見ながら少し休んだ。
最初はいくらか急だが、針葉樹林帯を下っていけば、なだらかになる。
「信濃境荘年会」による道標が要所に立てられているが、その会の人びととおぼしき一団が登山道整備のために登ってくるのにすれ違った。
ツマトリソウやマイヅルソウの地味な花より、イカリソウやササバギンラン・イチヤクソウなどが多くなると、エゾハルゼミの大合唱の中を下るようになる。
針葉樹林から若いミズナラやカラマツ林に変わってくると、不動清水に至る林道に出る。
あとは道標に従って、ゴルフ場の駐車場まで歩くだけだった。
下山すると、まだ9時前なのに、南アルプスには、雲がかかり始めていた。
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