霧と残雪
- 小雨の赤岳 -

【年月日】

2007年6月9〜10日
【同行者】 おおぜい
【タイム】

6/9 西武秩父(5:33)=(6:16)東飯能(6:30)=(7:12)八王子(7:29)
   =(Sあずさ)=(9:07)茅野(9:30)=諏訪バス=(10:07)美濃戸口
   美濃戸口(10:30)−美濃戸(11:20-11:30)−引返し地点(12:12)
   −美濃戸(12:35)−引返し地点(12:57-13:05)−行者小屋(14:45)
6/10 行者小屋(4:00)−赤岳石室(4:58-5:05)−赤岳(6:35-6:50)−
   行者小屋(7:00-7:35)−美濃戸(9:12-9:25)−美濃戸口(10:00)
   美濃戸口(10:25)=諏訪バス=(10:58)茅野(11:35)=
   (Sあずさ)=(13:05)八王子(13:07)=(13:44)東飯能(14:06)
   =西武秩父(14:57)

【地形図】 八ヶ岳西部、蓼科

路傍に咲くクサボケ

ホテイラン

1日目

 18年前と同様、美濃戸口から歩き始め。
 寒気の影響とかで、天候は今ひとつ。
 今にも降り出しそうだが、かろうじてもっているという感じ。

 美濃戸への林道にはクサボケ、イカリソウ、アイズシモツケ、ズミなど春から初夏にかけての花が咲く。
 やはり夏とはずいぶん違った雰囲気だ。

 周囲はカラマツ林。
 芽吹きの季節は終わり、新緑が美しい。

 レンゲツツジやベニバナイチヤクソウはようやく咲き始めたところ。
 これらが咲くと、このあたりも本格的な初夏になるのだろう。

 ウグイス鳴く美濃戸で小休止。
 路傍にはシロバナノヘビイチゴがたくさん咲いていた。
 雪シロが多少入った渓は、力強く流れており、毛鉤を振ってみたくなる。

 行者小屋へは、2基の堰堤を越え、南沢をからんで登っていく。
 咲いているのはキバナノコマノツメや白花エンレイソウ、クリンユキフデくらいで、ツバメオモトやズダヤクシュはようやくつぼみ、ヤグルマソウやギボウシ、トリウシショウマなども芽を出したばかりだった。
 ミヤマカタバミは多かったが、天気が天気だけにすべて花を閉じていた。

 シラビソとコメツガが混じり、一面に苔むした森は、たいへん風情がよい。
 沢沿いの枯れ木にエノキタケなども出ていた。

エノキタケが出ていた

ベニバナイチヤクソウ

 同行者の一人が美濃戸に忘れ物をしたのに気づいたのが、ダケカンバの密生したガレ場手前。
 パーティには先行してもらい、一緒にとりに戻ったので、約1時間のタイムロス。

 その先は、ほぼシラビソばかりの森。
 このような森を終日、逍遥していられたら幸福だろう。

 ミソサザイ、オオルリなどがとてもにぎやかだ。
 流れがいくらか細くなると多少、傾斜が出てくる。

 渓流がだたっ広いガレ沢に変わると、左岸沿いの山道を行く。
 道には氷化した雪があり、やや歩きづらい。
 小雨が降ってきたので、合羽をはおって少し急けばすぐに行者小屋に着いた。

 本格的な降りになる前に設営をすませ、小屋のデッキを借りて夕食の準備。
 このメンバー全員で炊事をするのは2度目だが、若い人の成長は著しく、驚くほどに手際がよくて頼もしい限りだ。

 夕方には激しく降ってきたので、早々にテントに入った。
 あまり芳しくない天気予報を聞いて眠ろうとしたが、隣のテントの社会人パーティの宴がにぎやかで少々閉口した。
 しかし早朝からの行動の疲れもあり、フライをたたく雨音を聞きながら、ほどなく眠ってしまった。

アイズシモツケ

レンゲツツジほころぶ


2日目

 雨は夜半にやんだが、思ったより寒い夜だった。
 朝の炊事がもたつくとその日の行動に支障をきたしかねないのだが、この朝もたいへんスムーズに動くことができた。

 炊事がおおかた終わった後、隣のテントにいた男性がわがパーティの若者に「まだ寝ている人がいるのだから無言で行動せよ」と叱責した。
 一般的な話として、朝晩のテント場では静粛にすべきである。
 また、無意識のうちに周囲の登山者に対する配慮の欠ける行動がありがちなのも確かなので、当然のことながらじゅうぶん心して行動するべきだ。
 そして、こちらに配慮に欠けた行動があったことも、認めなければならない。

 しかし、文句をつけてきた人が前夜ずいぶん騒がしくしていたパーティのメンバーだったのも事実だ。
 そして、早立ちを一般的原則とするテント場で朝3時半に行動を開始しているのは、特異なことではない。
 どちらにしてもほめられたことではないが、夜に騒ぐほうが罪は重い。

 彼の指摘は一般論としては正しいのだが、前夜の自分たちの騒ぎを棚に上げて偉そうにいう資格はないだろう。
 いずれにせよ、今後は襟を正していきたいものだ。

 濃いガスに包まれてはいたものの、雨は小止みだったので、赤岳に向かうこととし、4時に出発。
 最初はシラビソの若い樹林帯。
 ここにも凍った残雪があり、転倒に注意しなければならない。

 小雨が降ったりやんだりの天候だったが、メボソムシクイとルリビタキはずっとさえずっていた。
 傾斜が出てくると鎖やはしごを交えた登りになるが、案じたほどのことはなく、全員が順調に登高していった。

 登り始めて約1時間で主稜の上。
 すぐ先が赤岳石室だが「天望荘」と名前が変わっていた。

 赤岳へは鎖のかかった岩稜をしばし急登する。
 要所に鎖があるのでここの登りも問題なく、すぐに赤岳山頂。

 ここの絶景を見せてやりたかったが、ガスのため展望は皆無。
 記念写真だけ撮って早々に文三郎道を下る。

 岩がちながら夏道が出ているので、下りもほとんど問題なし。
 この日はツクモグサが見られるかと一抹の期待もあったのだが、全く見あたらなかった。

 どんどん高度を下げていくとあたりが明るくなって来、金網階段が続くあたりから行者小屋がはっきりと視認できた。
 下部樹林帯では腐れ雪だったが、さほど苦労することもなくテント場に戻った。

 撤収も最も早いテントで5分と、手際がまことによくなった。
 帰りはもと来た道をのんびり下るだけだったが、予定していたよりもずいぶん早く美濃戸口に着いた。