整備された広い遊歩道を行く。
ほぼスギ林。
地形図を見るとごく普通の低山だが、ちょっと驚くほど堅固に作られた山城なのだった。
これに匹敵するのは関東で言えば、滝山城とか津久井城クラスか。
随所にある堀切を越えて登りつめた本曲輪は公園として整備されており、関ヶ原古戦場のほぼ全体を見下ろす位置にある。
曲輪の中央には池があるのだが、これは人工の池なんだろうか。
それにしても、どうして干上がらずに水が溜まっているのだろう。
曲輪全体が土塁に囲まれており、最後の防御性もしっかりしていた。
ここて小休止。
合戦当日のことを考えると、どうもいい感じがしない。
まして、ここに陣取った小早川秀秋の霊魂と対話するのは、気が重かった。
山頂のテーブルにキマダラヒカゲが一頭。
おれがベンチに座ると、こっちをじっと凝視した。
やっぱり、秀秋だ。
(おれ) ひであき !
(蝶) ・・・
(おれ) ・・・
(蝶) おぬしも、おれの悪口を言いに来たのか ? ここを訪れて、おれのことを裏切り者だとか、見下げ果てた男だとか言わないやつは一人もいない・・。
(おれ) ・・・
(蝶) 狂い死んでから、コチラの世界に来たおれは、大谷刑部どのにも、石田治部どのにも、手をついてあやまった。刑部どのも治部どのも、「是非もない」と申されて、お許しくだされた。
(おれ) ・・・
(蝶) ここ関ヶ原の、どの説明看板にも、おれの裏切りで西軍は総崩れになったと書いてある。おれはいつまで、人でなしの扱いを受けねばならんのか。教えてくれ。
(おれ) ・・・
(蝶) 苦しい。つらい。助けてくれ。
(おれ) ・・・
小早川秀秋。1602年没。享年21歳。