快晴の春山
−那須連峰と三斗小屋温泉−

【年月日】

1995年4月4〜5日
【同行者】 極楽蜻蛉と友人
【タイム】

4/4 山麓駅(6:30)−峰の茶屋(8:00)−朝日岳敗退
  −茶臼岳(10:21-10:40)−峰の茶屋(11:06)−避難小屋
(1145:-12:50)−三斗小屋温泉(1:50)
4/5  三斗小屋温泉(7:30)−峰の茶屋(9:06)−南月山
  (10:15-10:33)−牛首(11:08)−山頂駅(11:45)

【地形図】 那須岳

朝日岳

三斗小屋温泉

 那須ロープウェー乗り場に着いたのは6時半。
 天気は快晴、目の前に冠雪した那須連峰が大展開して、文句なしの春山日和だ。

 雪はやわらかいが、登りはじめてからアイゼンをつけるのはやっかいだということで、はじめからアイゼンをはいて出発。

 ハンノキとダケカンバの若木の中を少し歩いただけで汗が出てくる。
 久びさの山登りだけに、足が重い。

 消えかかったトレースにしたがって登っていくと朝日岳のガレ場が正面に見えてきて、なかなかの迫力だった。

 茶臼岳の北面をゆるくトラバースするあたりまでくると、雪はクラストしており、アイゼンが快適にきくので気持ちがよい。
 峰の茶屋にはもちろん茶屋などなく、こわれた建物の残骸とケルンと石塔があるだけだった。

 朝日岳、茶臼岳、隠居倉、大倉尾根といった那須連峰の主要部が一望できるいい休み場だ。
 石塔には「昭和二年十一月吉日 牛守護大日尊 発起人 根本勘作 高根澤峯次郎」とある。
 ここは以前から交通の要所だったのだろう。

 峰の茶屋からは朝日岳をめざした。
 夏道は急傾斜の雪の斜面になっていたので、剣が峰を直登し、尾根伝いに行った。

 朝日岳の登りにかかると雪はかなりクラストしていて快適そうだったが、鎖場で鎖と夏道が完全に消えていたので、残念ながらそれ以上の登行は断念せざるをえなくなった。

 やむなく峰の茶屋まで戻り、しばらく休んで今度は茶臼岳に向かった。
 噴煙を吐き出している西側頂稜を右手に見ながらトラバース気味に登っていくと、ロープウェーからの道と合流。

 あとは、亜硫酸ガスが吹き出す岩稜を三角点までゆるく登るだけだった。
 茶臼岳からも三本槍岳などの大展望が得られ、なかでも美しく冠雪した男鹿山塊は魅力的だった。

 山頂には石祠が置かれていて、エビのシッポがついていた。
 しばらく展望を楽しんで三たび峰の茶屋に戻り、三斗小屋温泉へ。
 避難小屋わきの、雪の上で大休止した。

 稜線と違って風が全くなく、典型的な移動性高気圧の日射しが降り注いでおり、友人が持ってきたうまい日本酒を飲ませてもらうと、まったく極楽気分になれた。
 アイゼンはここで脱いだ。

 小尾根から下って沢状のところを過ぎると、平坦なところを行くだけ。
 延命水で水を補給し、ダケカンバ林の中、隠居倉からの尾根を左から回りこむと、なかば雪に埋もれた煙草屋旅館に着いた。

 煙草屋は旅館というだけあって客室がある。すごい。
 風呂に入り、ビールを飲むと昨夜以来の疲れがどっと出て、そのまましばらく眠ってしまった。

 温泉は炭酸カルシウム鉄泉ということだが、泉温が高くてよく暖まった。
 夕方になると旅館の息子がお膳を部屋に持ってきてくれた。
 食材などはヘリコプターで荷上げするというからいろいろと大変なのだろうけれど、家族三人でよくもてなしてくれた。

 暗くなると発電機を起動するのでちゃんと電気もついた。すごい。
 ぐっすりと眠った翌朝、三度めの風呂に入っているとタイコの音が聞こえてき、朝食だといわれた。

牛首から茶臼岳

南月山

 朝6時半から食事にしてくれるのもうれしい。
 天気もよさそうなので、この日は南月山に登ることにした。

 煙草屋を出たのは7時半、この日も快晴で、宿の玄関先からかなたに見える流石山が真っ白に輝いていた。
 前日よりさらに暖かく、延命水でフリースを脱いでちょうどいいくらいだった。

 峰の茶屋からは茶臼岳の西面をトラバース。
 かなりの急斜面なのでアイゼンをフルに使う。

 ふたたび稜線に出たところが牛首で、尾根上の十字路となっている。
 ここから南月山まではピストンすることになるので、不要の荷をここに置いて南へ向かった。

 日の出平まではやせ尾根の登り。
 ここから南月山にかけてはクマの足跡がずっとついていたので、それをたどりながら広い尾根を登った。

 登りつめた南月山も展望のすぐれたピークで、茶臼岳、三本槍岳、流石山、大倉山、三倉山などの那須連峰の雄峰が勢揃い。

 ここにも石祠と石塔があった。
 石塔には「南月山神社」と大書してあり、「神社奉納 昭和五年十月五日 那須硫黄鑛山」「発起人 富永平七 佐藤安義 青柳萬三 佐藤源太郎」「賛助 小平源次郎」などと彫りこんであった。

 ここの祠はずいぶん新しい時代に作られたものだ。
 那須の硫黄と戦争との関係などについて興味をそそられた。

 牛首でザックを背負い、ロープウェーの山頂駅へ。
 自動車を山麓駅前に停めておいたのは正解だった。