奈良部山から丸岩岳

【年月日】

1997年3月2日
【同行者】 単独
【タイム】

東川林道入口(9:56)−170号鉄塔(10:16)−奈良部山(1:00)−
丸岩岳(2:07)−自転車デポ地点(3:50)

【地形図】 沢入、番場

奈良部山の尾根にて
奈良部山から野峰を望む

 飛駒を抜け、黒沢集落のはずれから彦間川本流に沿う林道をしばらく行ったところに自転車をデポし、東川林道との分岐点まで戻って、奈良部山をめざした。

 出発点には、「祝摂政宮御成婚 東川道路改修紀念碑 大正十三年二月 左根本山道」と、ずいぶん情報量の多い石碑。地形図に出ているのはこの碑だ。
 あたりには、ゴミの投棄が目立つ。営林署の看板に「ゴミを捨てるな 井上昌子」の落書き。

 しばらく林道を行くと、頭上を送電線が渡る。ここから鉄塔への巡視路に入り、小沢沿いに登る。水を補給し、沢から離れるあたりで、道をロスト。やむなくヒノキの植わった急斜面をひとしきりあえぎ登った。

 ふたたび巡視路に出会い、しばらく行ったところが百七十号鉄塔で、南側が開けていて好展望。

 目の前に野峰の双耳峰がどっしり。その肩に、鳴神山が頭だけのぞかせていた。
 冬型のはずなのに、風もなく、春がすみがかかっているいい天気。ここで小休止。

 その先で、落ち葉を踏む音に立ち止まると、ストックを持ったハイカーだった。
 そこでしばらく立ち話をしたが、その人がこのコースを考える際にアドバイスをいただいたNさんとは、帰宅後ニフティをのぞくまで、夢にも思わなかった。

 Nさんと別れて、か細い踏みあとを行くと、三方に岩をまとった小ピーク。これの通過にずいぶん手こずった。奈良部山の尾根には露岩が多く、踏みあとや鹿道をうまく拾わないと、かなり消耗させられる。

 奈良部山への登りはけっこう長く感じるが、しばしのがまんで山頂。
 展望はないが、樹林越しに丸岩岳、十二山、根本山などが見えた。氷室の向こうの雪をかぶった山は横根山あたりだ。東につんととがっているのは、岳ノ山か。
 暖かな日だまりで大休止。

 奈良部山から丸岩岳へは踏みあともはっきりした感じのよいところ。ミズナラにシラカンバがまじって、安蘇らしい風情。ヒガラが何羽も遊んでいた。
 左に丸岩の林道が近づいてくると、ミヤコザサの下生えにシラカンバやダケカンバが美しい。

 林道と登山道が交叉しないように祈りながら歩いた。
 道脇の石宮に拝礼し、ゆるく登りつめると丸岩岳だった。

 去年来たときには、手製の山名プレートがたくさんつるしてあったが、だれかが撤去したものらしく、何もない山頂。
 吹きだまった雪のため、腰をおろすところもないので、野峰方面に少し行き、のり面を飛び降りて林道へ。

 彦間川源流への破線路は、林道工事によって完全に破壊され、痕跡もとどめていない。仕方がないので、ここは自分の読図を信じることとし、伐採時の遺物をかき分けて谷に飛び込んだ。

 案の定、谷底にも道形はなく、この破線路は廃道化しつつあることがわかった。
 しかし、しばらく下っていくと、「足尾−飛駒」という道標や、樹齢数百年と思われる巨杉があらわれ、道形もはっきりしてきた。

 スギの植林地まで来ると、「八丁目 野州足利新中町 沢屋藤吉」とか「十一丁目 野州足利新中町 金屋十兵衛」などという古い丁目石が見られるようになった。
 ハンターにやられたらしい、タカのような鳥の死体を見てしばらくで、「陀羅誌県営林」への分岐。

 腐り果てた赤い自動車が捨ててある林道あとで川をのぞくと、小イワナが走るのが見えた。

 林道もしだいにはっきりしてきたが、丸岩岳から自転車デポ地点まで、約2時間と、けっこう時間がかかった。