織姫山から名草巨石

【年月日】

1997年2月12日
【同行者】 単独
【タイム】

織姫神社(11:05)−両崖山(11:47)−剣が峰(1:07-1:10)−
浄因寺分岐(1:26)−ふれあい道出合(2:06-2:24)−馬打峠(2:33)
−藤坂峠(3:48)−湯ノ沢歩道分岐(4:16)−釣り堀前(4:30)

【地形図】 足利北部、番場

名草弁天
 名草弁天入口の釣り堀前に自動車をデポし、自転車で市内に向かう。
 気圧の谷が通過したばかりなので、北西風が吹いているはずなのに、なぜか南の強風が吹いていた。自転車にとって、向かい風はつらい。変速器を落としてやっと前進。下りなのに、汗が出た。

 市内に入ったが、登山口がわからないので、織姫神社の鳥居近くのじゃまにならないところに自転車をとめ、石段から歩き始めた。
 神社はあまりにも新しかったし、先が長いので、今日は通過。裏手の駐車場から公園内の小径を登る。
 自動車の音が少しずつ遠ざかり、落ちつけるところまで登ってからセーターを脱ぎ、改めて身支度。

 両崖山城跡や古墳など、おもしろそうな史跡がたくさんあるのだが、先のことを考えるとゆっくりしていられない。ここは、市内の史跡めぐりとあわせて、いつかゆっくり歩いてみたい。
 展望のよい露岩のピークもあるが、見慣れた山があまり見えないし、疲れも少ないので、先を急いだ。

 神習教の偉い神職の記念碑というか、墓標が林立するのを見ると、両崖山。
 神習教とは何だろう。

 『日本歴史大辞典』(河出書房新社)によると、この宗教は、明治初年に創始された教派神道で、「神は造化・気化・体化により天地を創造・主宰する本源で本祠大神と称し、その大道を宣揚して国教を天下に明らかにし、形式や理論ではなく人倫を正し、みそぎ・物忌・鎮魂などの神事修行で神人相通ずる真契を悟って安心すべし」と、説くそうだ。

 唐沢山に拠った藤原秀郷の子孫が根じろにした両崖山で、明治ごろには、神習教の神職が日夜修行に励んでいたのだろう。

 天然記念物タブノキの繁る境内の中央には、御岳神社が鎮座し、わきには天満宮と祭神の知れぬお宮があり、背後に比較的新しげな大黒様の像と、日本武尊と彫られた昭和三年造立の石碑とがあった。
 これらの石像物や祠は、明治末の神社合祀の影響があるやも知れず、神習教と直接の関係はなさそうだ。

 ひといき入れて、北に向かうかに見える道を行くと、めざす大岩山がどんどん離れていく。快調に下っていったので、そのことに気づくのが遅れ、20分ほどのロス。
 あごを出しながら両崖山に登り返すと、心の中で、「ぼんやりしてるからルートミスしちゃったじゃないか。先も長いのにこんなムダ。いったいどうしてくれるのさ」という声と、「今のは次に来るときの下見なのだ。だからムダではないのだ」という声とがけんかをはじめた。

 それを無視して歩いていくと、274メートルの三角点。足利・太田方面と低山の展望がよい。
 この時期の低山は、明るい緑のアカマツ林、深緑のヒノキ林、赤茶色のスギ林、なんともいえないグレーの雑木林が、パッチワークのようでおもしろい。

 少し下るとほんの少しの車道歩き。ジグザグの急登で剣ヶ峯(大岩山)の頂上に立つと、ベンチがおかれていて、これまた展望のよいところだった。ここで一服。
 石尊山までは平坦な道。樹間より見える赤城山は雲の中だが、袈裟丸と錫は見えていた。
 石尊山を過ぎると、浄因寺への分岐となる峠状の場所。ハイキングコースは、ここから浄因寺に下るようになっていたが、今日はここが中間地点と思っていたから、あやしげな踏みあとを頼りに尾根を直進。
 ここが今日のコースの核心部だ。

 しばらく尾根を行くと、あやしげな踏みあとは二又となる。これは、左の急降下を選ぶのが正解。このあたり、地形図とコンパスとを参照しながら慎重に行った。ヒノキの植林の縁を急降下すると笹ヤブ。尾根が二つに分かれるが、ここは左が主稜。

 背丈を没するササの中を下っていくと、地図上の行道峠。峠道は廃道化しており、通行は困難だろう。さらにササの中を行くと、また踏みあとが分かれる。今度は右が正解。

 さらに少し下ると、月谷に至るという小さな私製の道標があってほっとするところだ。
 あるかなきかの踏みあとをゆるく登って行くと、浄因寺からの「関東ふれあいの道」に出た。ヤブ道を40分。破線路をトレースできてうれしかった。はやもう2時。遅い大休止をここでとった。

 わずかな日だまりでうどんをすすっていたら、銃声が二発、三発。「関東ふれあいの道」には「動植物を大切にしましょう」という立て札が立っているから、ここを歩いてればまず撃たれないはずだと思うのだが、ちょっと確信がない。

 ここには巨石群まで7.2キロとある。今日の目的地はまだずいぶん遠い。
 急降下すると馬打峠で、車道をわたる。あたりはゴミの不法投棄で、惨憺たるありさまだ。これは何とかならないものなのだろうか。

 ゆるやかに登っていくと、突然ヤマガラのさえずり。姿は見えないが、ツーツーピーと一回だけ鳴いて、あとは恥ずかしくなったか、黙ってしまった。今年はじめて聞いた小鳥のさえずりだ。

 足利城ゴルフ場を右に見ると、えらく急に感じる登り。息を切らせて登り着いたのは小祠のあるピークで、ザックをおろしてへたり込む。気持ちのよい疲れだ。

 左前方には、肩に反射板のようなもののある丸いピーク。あれが赤雪山かな?
 左手に見えるのは、石尊山・深高山の尾根。仙人ヶ岳はどれだか、わからない。

 また急降下して藤坂峠。

 ここからしばらくは平坦だが、最後の426メートルピークまでの登りはつらい。あの山を巻いてくれりゃいいがと思いながら歩いていくと、ふれあい道はまっ正直に尾根を直登。最後の登りだと思うから我慢ができる。

 これを越えると、松田町方面(湯ノ沢歩道)との分岐。ここのベンチで息をととのえると、自動車をおいた鳥居の前までのんびり下るだけだった。