鴇ノ巣集落先を南に入る林道は、道が荒れていて、走りづらかったので、少し行って広いところに車を止め、林道を歩くことにした。
二万五千図「東館」の図幅には、ほかにも「トキノス」という集落名がある。
かつてはこのあたりにも、トキがたくさん生息していたのだろうか。
林道のわきには、アカマツの幼樹がたくさん生えていて、時季はずれながら、ヌメリイグチがいくつか出ていた。
足下には、リンドウやセンブリの花。
路傍にからんだ蔓には、スズメウリやアオツヅラフジの実。
アオツヅラフジの青黒い実は、とても鮮やかだ。
カラハナソウの穂果は、すでに茶色くなってしまっていた。
同行者が見つけた、ツクバネの実も珍しい。
羽子板の羽根にそっくりな上、半寄生植物というのだから、まったくミステリアスだ。
ツルリンドウ
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晩秋の里山の魅力も、まことに捨てがたい。
平成2年現地調査とある地形図「袋田」のテリトリーに入ると、地図に載っていないT字路に出る。
今まで歩いてきた林道とはちがい、りっぱな舗装道路だった。
これは、山下集落から大(おおぬかり)集落に抜ける林道のようだ。
この林道を少し左に行くと、鳥居があって、熊野神社に至るという小さな道標。
これが、佳老山の表参道らしい。
しかし、この道、通る人もいないらしく、ひどく荒れていて、ササのかぶったところも多い。
小さな沢に沿った道が続くが、両脇はスギ林で、見るものも少ない。
水が涸れたところから、小尾根にとりつき、少しの急登で、山頂直下。
ようやく雑木林だが、きのこは、少し古くなりかけたクリタケが見つかった程度。
尾根上は、冷たい北風が吹いていて、冬の到来を感じさせた。
強い風が吹くたびに熊野神社の社殿が、音をたてた。
ここは寒かったので、山頂から少し南に行った日だまりで大休止。
落ち葉の上で腰を下ろし、くつろいだ。
帰りは、路傍のリンドウを愛でながら、尾根の南を越えている福住林道を下った。