悪臭と騒音の山
−大滝根山−

 【年月日】  1996年12月26日
 【パーティ】 2人
 【タイム】  登山口(12:11)−大滝根山(1:24)−山頂下(1:40-1:55)−登山口(2:46)
 【地形図】 上大越

糠馬喰山付近か
ら見た大滝根山

 東北道の須賀川インターをおりると早くも「あぶくま洞」の看板がある。
 大滝根山に行くには、あぶくま洞をめざしていけばいい。

 それにしても、この看板、至るところに建っていて、あぶくま洞もずいぶん元手がかかっているなと思われた。

 滝根町にはいると、前方の山にむごい傷跡。
 それがあぶくま洞だった。
 ちょっとした遊園地になっているようだが、観光客の姿はなかった。

 それを越えて、仙台平のキャンプ地の手前の林道を右に少し下ると、大滝根山登山道入口という立て札が目に入った。

 登山者の車はなし。古い山らしい石造物もなし。
 わびしい登山口だ。

 最初はスギ林、ついでカラマツ林となる。
 足もとの細流は見たところなかなかきれいだった。

 ちょっとの登りで尾根の上。
 アカマツが多くなり、ヤマザクラ、クリ、ミズナラ、ウリハダカエデなどの雑木林となる。
 見るものに乏しいから、あたりに散らばったツルウメモドキの実のカケラなどに、目をひかれる。

 三十分ほどで私製の道標のたつ三叉路。
 この道標はよく意味のわからないことが書いてあるので、しばし当惑する。
 でも、めざす大滝根山は真ん前だから、迷うことはない。

 右手の尾根にとりつくと、なかなかの急登。
 上の方には、ハシゴや鎖場もあるが、そんなものはなくても、ぜんぜん危険ではない。

 鎖のある露岩からは、蓬田岳、高柴山、片曽根山、移ヶ岳、常葉鎌倉岳、日山などが西から北にかけての山々が望まれた。
 雲は多いが、雨や雪の心配はない。

 傾斜がゆるむと、大越口への分岐。
 そんな登山口があるなら、せっかく積んできた自転車を使えばよかった。

 そのさきは、送電線にそって、広く木が刈られているので、南側の展望がよい。すぐ前は羽山、それに重なっているのは矢大臣山だろう。
 東側の牧場地の山は万太郎山、あとはわからない。

 頂稜に多いアセビがびっしりとつぼみをつけていた。
 来春にはデラックスな満艦飾となるだろう。

 そのすぐ先が山頂で、鉄条網で囲まれた自衛隊の施設。

 おりしも、手前の建物から轟音とともに、黒い排気ガスがもうもうと排出されており、神社のある山頂一帯には、騒音と悪臭が充満していた。

 怒りを感じる。

 早々に退散し、少し下ったササヤブの中で大休止。
 尾根では風速十メートルは超えると思われる強風が吹いていたが、ヤブの中はずいぶんましだった。

 しかし、ゆっくりしたい場所ではなかったので、食事をすませたあとは、もと来た道を一気に下山した。

 この日の宿は小野町、小町温泉。
 ひろた屋旅館は、風呂も部屋も食事ももてなしもいうことなし。
 ちなみに一泊二食で8500円。

 会津の酒、清川生酒を二合飲んだら、八時前には熟睡できた。