日山から見た姿がすっきりしていたので麓山に登りたくなった。
南戸沢小学校を過ぎ、麓山がかなり近く見えるところに鳥居があった。
手前の広いところに自動車を停め、工事をしていた人に山頂まで登れるかどうか確かめて登りだした。
登山道はスギ林の中の広い尾根道である。
ひと登りで電波施設の建つ米石山という小ピーク。
米石山からは植林がカラマツに変わり、登山道に雪がちらほら。
コンクリートの鳥居をくぐると、石切り場あと。
踏みあとにしたがって、カコウ岩を切ったあとを登っていくと、すべりやすい山頂直下の急登。
麓山の山頂は丈の低いササとツツジ類とゴヨウマツとまちがえそうな低いアカマツが生える草原で、見晴らしはすこぶるよい。
雰囲気的には森林限界の上にでも出たような様相だ。
乾燥した北西風が冬じゅうずっと吹きつけるという気象条件が、このような植生を作りあげたものなのだろうか。
ここにも「羽山神社」という額のかかった大きな鳥居と記念碑が建てられており、碑には地租改正当時官地に編入されたが明治三十年ごろ住民の要求により返還され、その後も境論があったという麓山の近代史が彫りこまれていた。
田沢側はほとんど牧場化しているが、三角点のあたりには大小の石が散乱しており、まことに風情のよい山頂だ。
阿武隈は太陽光線の角度の関係で、午前は西に向かっての展望がよく、午後になると東に向かっての展望がよい。
阿武隈の西の端にあるこの麓山は吾妻や安達太良を見るには午前に、阿武隈を見るのなら午後に登るべきだ。
さっき登った日山はカメラのアングルに入りきらないほどの根張りの大きさだ。
北側にある一団の山は口太山、木幡山あたりだろう。
浪江方面にも山頂の傷ついた山が見える。
鎌倉岳はこのあたりには珍しく山の形が個性的なのでよくわかる。
移ヶ岳は大きくて立派だが、地形図で見ると山じゅう車道だらけでちょっと登る気になれない。
太陽がずいぶん傾いたので今夜の宿の要田温泉へ急いだ。